【深淵のウーバー】「逃げ足が速すぎる」とパーティを追放されたので、ダンジョン専門の配送業を始めたら、深層のSランク冒険者にポーションを届けられるのが俺だけだった件。なぜか「最速の神」としてバズってます

kuni

第1話 「逃げ回ってばかりで役に立たないからクビ」と言われたので、秒で了承して独立した。

「おい、蓮二。お前、今日でクビな」


ダンジョンから帰還した直後のファミレス。

ドリンクバーの薄いメロンソーダを飲みながら、パーティリーダーの剛(ごう)が言った。


俺は、左腕につけたスマートウォッチに視線を落とす。

時刻は18時03分。

このあと18時30分から、予約していた新作ゲームの発売日だ。


「理由は?」


一応、聞いておく。あくまで事務的に。

剛は、テーブルをドンと叩いて、さも不満げに鼻を鳴らした。


「理由もクソもあるかよ。お前、今日のボス戦でもずっと逃げ回ってただけじゃねえか。攻撃参加ゼロ。被ダメージゼロ。汗ひとつかいてねえ」


「……まあ、そう見えるか」


「俺たちは命懸けで戦ってんだよ。お前みたいに、安全地帯でチョロチョロしてるだけの奴に払う報酬はねえ。わかったら荷物をまとめて出て行け」


なるほど。

剛たちには、そう見えていたらしい。


俺のスキルは【絶対回避】と【慣性制御】。

今日のボス戦、俺がボスのヘイト(敵意)を100%稼ぎ、四方八方から飛んでくる即死攻撃を紙一重でかわし続けていたからこそ、剛たちが安全に剣を振るえていたわけだが。


それを説明する労力を脳内で計算する。

……推定30分。

剛の理解力の低さを加味すると、プラス1時間。


「了解。抜けるよ」


俺は即答した。

説得にかかる時間(コスト)が、将来得られる利益(リターン)に見合わない。


「……は?」


剛がマヌケな顔をする。

てっきり、俺が泣きついてくるとでも思っていたのだろうか。


「ちょうど俺も、潮時だと思ってたんだ。攻撃役のお前らが、いつまで経っても俺の動き(・・・)に合わせようとしないから、効率が悪くて仕方なかったし」


「なっ、なんだと……!? この役立たずが!」


「ああ、そうだ。退職金代わりと言ってはなんだけど、倉庫で眠ってる『アレ』をもらっていいか?」


俺はスマホの画面を見せる。

以前、宝箱から出たものの、故障していて動かない旧式の魔導撮影ドローンだ。


「あ? なんだそんなガラクタ。修理費の方が高くつくぞ」


「いいよ、俺がいじるから。それをもらえるなら、今月の未払い報酬はチャラでいい」


「……ふん、物好きめ。勝手に持ってけ」


商談成立だ。

俺は席を立つと、伝票を剛の前に置いた。


「じゃあな。せいぜい頑張ってくれ」


「おい待て! 泣いて謝るなら、荷物持ちくらいには置いてやって……」


「おっと、時間だ」


俺は剛の言葉を遮り、店を出た。

自動ドアが開くと、夕暮れの街の空気が流れ込んでくる。


「ふぅ……」


深く息を吸う。

美味い。

排気ガス混じりの空気だが、ブラックな職場から解放された開放感は何物にも代えがたい。


俺はポケットからスマホを取り出し、とあるアプリを起動した。


『D-Eats(ダンジョン・イーツ)』


最近リリースされたばかりの、ダンジョン専門デリバリーサービスの登録画面だ。

危険手当がつくため、地上での配送よりも単価が異常に高い。

しかし、モンスターが徘徊するダンジョン内での配送など、命知らずしかやらないため、登録者は常に不足している。


「戦うのは効率が悪い。これからは、ただ『運ぶ』ことに専念しよう」


俺の脚力と、この回避スキルがあれば。

たとえ深層(ディープ)だろうが、ドラゴンが道を塞いでいようが、関係ない。


誰よりも速く、正確に。

俺は登録ボタンを押し、「アビス・ランナー(深淵の走り屋)」という屋号を入力した。


さあ、仕事(ビジネス)の時間だ。


【読者の皆様へのお願い】


ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします!

(次のエピソードから、いよいよ最速の配達が始まります!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る