ネジレン

@y0ii

カエルの道

「ジョディ、そろそろ行かないと。学校、遅れちゃうわよ……」


「今日は何して遊ぶ?」


「昨日勝ったチームがおやつもらえるの、知ってるよね?」


「君は負けたチームでしょ……」


友達の声が、少しずつ遠ざかっていく。


「ジョディ。ママは畑に行かなきゃいけないの。弟の面倒、ちゃんと見ててね?」


「……」


「お兄ちゃん、私、退屈なの……」


「じゃあ今日は、保安官ごっこしようか?」


「保安官ごっこ……いいね!」


保安官ごっこと言っても、名前が立派なだけで、ただの町歩きだ。


「私はかっこいい保安官~。村の平和を守ります~」


幼いメイは、毎日同じ道を歩いているのに、いつも楽しそうだった。


「カエルの道だよ! お兄ちゃん、こっち行こう!」


その道は、いつも泥水が溜まっている。


ところどころにある石を踏まなければ、靴も足も、すぐにびしょ濡れになる。


石をポコポコと跳ねながら進まなければならないその様子が、カエルみたいだから。


それが、メイがこの道につけた名前だった。


カエルの道を抜けた先に広がっていたのは、とても広い野原だった。


この野原では、訓練中のセイシャたちを見ることができる。


セイシャ。


それは文字通り、神に選ばれた存在たちだ。


彼らは体から、青……いや、灰色がかった何かを放っている。


的が一つ、また一つと砕けるたびに、その光はさらに大きくなっていった。


それだけではない。


セイシャたちの体には、赤い糸が巻きついている。


不思議なことに、その糸は母にも、メイにも、友人たちにも、そして――私の体にも巻かれていた。


だが、特にセイシャたちの体には、圧倒的に多くの糸が絡みついている。


「お兄ちゃん、また一人で変なもの見てるの?」


そう。


奇妙なことに、それは私にしか見えないらしい。


私は、友達とは目が違う。


赤い瞳に、不可解な模様が浮かんでいる。


両親も、メイも、私とは違う目をしている。


――いや、違うのは私のほうだ。


母は、私の目を見るたびに、決まって知らない誰かの話をする。


三羅……だったか。名前は、よく分からない。


――クァクァガン。


光が閃き、激しい風が吹き荒れた。


目を開けると、野原の中央に、巨大な穴が空いていた。


「助けてくれ! 誰か、早く!」


一人のセイシャが必死に叫び、腕の中には、別のセイシャが倒れている。


「お兄ちゃん、行こう!」


「行かないで、メイ。危険だ」


「助けを求めてるんだよ。私たち、保安官でしょ?」


メイは私の手を振りほどき、セイシャのもとへ駆け出した。


「メイ、一緒に――!」


――ドキドキドキドキドキドキ。


倒れたセイシャの心臓は、異常なほど激しく鼓動していた。


「ガキども、出てこい!」


『はっ』


倒れたセイシャの体には、あまりにも多くの赤い糸が絡みついていた。


誰かに命じられたわけでもない。


今まで、そんなことをしたこともない。


――ただ、そうすべきだと思った。


「ガキども、出てこいってんだ!」


私は、赤い糸をひと掴み掴み、


そのまま口の中へ放り込んだ。

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2026年1月18日 19:00
2026年1月19日 19:00
2026年1月24日 19:00

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