ハッピー・カニバリズム・スローライフ

アカアオ

壊れる世界の中心で私は貴方に語りかけるの


 「健二さん。私の事を覚えていますか?」


 世界が悲鳴を上げている。

 コンクリートは割れて土になった。

 街を覆う電波は消えてスマホはガラクタになった。


 街の人は悲鳴をあげて錯乱していた。

 まぁ当然だよね。

 

 急に『当たり前だったもの』が変わっちゃったんだもの。


 因みにこの異変を起こしたのは私だ。

 私が神様になる時の副作用見ないなものらしくて、わざとじゃなの。


 一応、ごめんなさい。


 「君は……」

 「健二さん、貴方は私に居場所をくれた人なんです」


 周囲の悲鳴を無視して私は目の前の男性に語りかける。


 「健二さん。『百玉ひゃくぎょく様』については覚えていますか?」


 「ひゃくぎょく?」


 「貴方が熱心に信仰していた神様なんですよ。貴方は百玉様に捧げる供物を調理する役割に誇りを持ってたんです」


 捌キノ健二さん。

 私にとって一番大事な人。

 私にとって一番必要な人。


 「健二さん、私は古島ふるしまミミミって言います。聞き覚えはないですか?」


 「すまない。全くピンと来ない」


 「……」


 ごめんなさい。

 本当にごめんなさい。


 あの時、私がちゃんとしていれば貴方の記憶が無くなることはなかったんです。


 村の仇である天使に記憶を壊される事は無かったんです。


 「健二さん。貴方は私にとっての恩人です。人を食べる事でしかアイデンティティを保てない私のために、貴方はいくつもの料理を作ってくれました」


 だから、次こそは選択を間違えません。


 天使に消された健二さんの記憶を呼び起こして、前みたいにみんなでのんびりと暮らす『私たちの日常』を取り戻すんです。


 そのためなら、手段は問いません。

 たとえ私が人間じゃ無くなっても良い。


 私が次の『百玉様』になる事で貴方の記憶が戻るなら、私は喜んで人間を捨てましょう。


 「健二さん、よく見てて。そして、全部思い出して」


 私の髪の毛がブワッと伸びる。

 伸びた髪の毛の隙間から、赤黒い球体が顔を出す。


 「ッ……頭が」


 その球体はしわだらけ。

 まるで劣化した人の脳みたい。


 「その……姿……俺は……」


 バキバキと鳴る体。

 際限なく伸びる髪。

 実った果実のように増えていく玉。


 「そうだ……俺は捌キノ家のー」


 百玉様に近づいていく私を見て、健二さんは頭を抱えた。


 そう。

 そのまま頑張って下さい。

 そうして思い出して。


 私と出会ったあの日の事を。

 そこから始まった、幸せな人食い生活を。





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