♡ブッチャーズ♡

春野 一輝

第1話 私たちブッチャーズ♡

 路地裏に追い詰められた女性がいた。

 その女性に対して拳銃を取り出す男が一人。

「へっへっへ、有り金と、お前さん自身もいただこうか!」

 女性は自分のバックを背に回し、首を振りながら助けを求める。

「誰か! 誰かぁあー!!」

 路地裏から見える長方形に切り取られた空に響く声。

 一瞬、女性は助けが来ないことを覚悟した。

 しかし。


「「ぷーくすくす」」

 幼女のような笑い声が、路地裏に響き渡る。


「誰だ! 俺を笑うやつは!」

 男が女性から拳銃を離し、声がする空に拳銃を向けた。

「やだ、童貞クン。ボクたちの事、しらないの?」

 ストレートロング髪の黒い影から、幼げな声がした。

「巷で有名な悪ガキをやっつける美しき天使達♡」

 くるくるのロング髪にカールを決めた黒い影からおとなびた声がする。

 二人は瞬時に路地裏に降り立つ。


「「私たち、ブッチャーズ♡」」

 カールの方は一凛のバラを口に嚙む狐耳の美女、ボクと言った方は、ボロボロのくまさんをなでる狸耳の美女だった。

「情熱のバラ。赤い狐、ミコン!」

 巫女風のアコーディオンスカートをなびかせ、狐耳の方が言う。

「氷の女王。青い狸、ポコン」

 同じく、巫女服風のアコーディオンスカートのごみを払って、狸耳の方が言った。

 二人はそれぞれの狸とキツネの尻尾をゆらしながら、優雅に見参した。


「知らねえな! お前たちのような悪女は!」

 その言葉に、シンと二人は静まり返り、怒った声で言い合う。

「ねえ、お姉さま? そこのクソガキを、私たちで退治しましょう?」

 狐耳の美女は噛んでいたバラを手に取り、ローズウィップに変身させる。

「そうね。お姉さま。悪い子にはお仕置きしないと」

 狸耳の美女は、くまさん人形の腹のチャックが開き、中からバズーカーが出てくる。

「キミもボクのお人形にしてあげる!」

 葉っぱ型のお札をバズーカーに装填。

 バズーカーが噴射され、煙を立てながら男に命中した。

「くまさんになぁれ♡」


「ぐぁあああああああああ!!!!」

 ぼぼんっと音がして、くまの着ぐるみ姿へ男が変身する。


「バラの洗礼よ♡!」

 バラの花びらを飛ばし、くるくると螺旋を描きながら鞭が男を拘束する。

「さあ、今のうちに逃げて頂戴?」

 二人の姿を見て、固まっていた女が走り出す。

「あ、ありがとう! ブッチャーズ!」

 その姿を見届けると、さらにミコンは、拘束を強くした。

「ぐぇええ!!」

 男が悲鳴を上げる。


 ポコンが葉っぱ型のお札を一個取り出して、棍棒に変身させる。

「なんで、俺なんかを構ってるんだ!」

 バラの鞭に拘束され、動けないまま震え声で男が抵抗の声を上げた。

「あのね。童貞クン。私たち、旅行中なの? そんな中、不快なあなたを見ちゃったのよね」

 ミコンが悪い顔をして、舌なめずりした。

「ボク達に見つかったのが、キミのおしまいの始まり♡」

 ポコンは棍棒を振りかぶると、振り下ろす。

「悪い子! 悪い子! 悪い子!」

 滅多打ちにされるくまさんの着ぐるみ、もとい悪い男。


「「それじゃあ、死ね!!!!」」


 ミコンがベーゴマのようにくるくると男を回転させて、拘束を解いた。

 回転して飛んできた男へ、おもいっきりポコンが、棍棒で殴りつける。

 勢いよく男は突き当りの壁にぶつかってぺちゃんこになって、ずり落ちた。

「ぐぁ……」

 鼻血を飛ばして、男は倒れ伏す。


 ポコンが傍に駆け寄ってボロボロになった男のくまさん着ぐるみへキスをする。

「ふふ。こうなると、かわいいね。ぎゅむ……」

 くまさんは何も言わない。気絶している。むなしい顔のように見える。

 遠くからパトカーの音が響く。

「ポコン、そろそろ退散しましょう?」

「そうだね。ミコン」

 シュンッと、音を立てて二匹は狸と狐に変身する。

 そして、空へと飛び立つ。


 現場には、何個もの葉っぱが残されていた。

 若い警官たちが男を拘束し、パトカーにぶち込んだ。

 その光景を見て、一人の警視がつぶやいた。

「また、ブッチャーズが救ってくれたのか」

 若い警官の一人が、警視に聞く。

「ブッチャーズ、それは一体?」 

 警視が真剣なまなざしで若い警官の方を見た。

「俺たち日本のヒーローだ」

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