この手は誰の手か、終ぞ知らぬ
白藍彗
第1話 伸ばされた手をとらなかったことを後悔した
「選んで。フィーロ」
「俺か、こいつのどちらの手を取る?」
あの冬の日、差し出された二人の手を、私はとることができなかった。
王国ヴェイルの姫であるフィーロには、双子の幼馴染がいる。
金髪で騎士見習いのイオと銀髪で魔法使いのセオ。
顔立ちも背丈もそっくりなのに、性格は正反対の二人だ。
明るく活発なイオと冷静で生真面目なセオ。
生まれた時からずっと一緒だった。
一人娘で兄弟もいないフィーロにとって二人は、大好きな兄弟のような存在。
だから17歳の誕生日。二人からのプレゼントである沢山の淡い光の珠で飾られた樅の樹の下で告げられた言葉に、フィーロはすぐに返すことができなかった。
「僕は」
「俺は」
「フィーロが好き」
双子の表情が冗談の類でないことは長い付き合いでわかる。
自分も二人のことが大好きだ。でもそこに恋愛という感情があるのかわからなくなる。それにどちらか片方を選ぶのかもすぐにはできない。
結局、伸ばそうとした手はすぐに自分の胸に戻してしまった。
直後、騎士団長の城全体に聞こえるような大音声が響き渡った。宴の用意ができたと自分を呼ぶ声。その声が合図となったかのように、三人だけの張り詰めた何かが有耶無耶に霧散していく。
そのことに内心安堵している自分がいた。
「……戻りましょうか。姫様」
いつもの生真面目な表情で手を差し出した銀髪の彼の手を今度は取ることができた。
金髪の彼は少しむくれていたが、少し先に歩いて城内へ戻っていく。
その後に開かれた自身の、王女フィーロの誕生の宴では自分も二人も何事も無く過ぎていった。
二人の手を取ることが出来なかった。でもまだ時間はある。
これから先も変わらぬ日常が続いていくのだと、王女フィーロはそう思っていたからだ。
数週間後の、あの春の日までは。
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