水に流せない

白川 優雨 (しらかわ ゆう)

水に流せない

 バツボタンを押して、電話を切った。携帯を洗濯機の上に置こうとして、手から抜ける。乾いた低音が、遅れて部屋に残る。浴室の窓に、影がふたつ通ったのが見えて、振り返る。そのまま扉を開けた。

 シャワーの栓を回してから、服を脱ぐ。季節の乾燥が漂って、肌寒い。視線を下ろすと、ブラのホックが、ひとつ外れかかっている。少し動きを止めてから、気にせずカゴに入れた。押し込んだそれらは、皺を寄せて、沈んでいた。

 ベージュのタイルを踏んで、体を濡らす。まだ肌寒い。捻って温度をあげた。顔から浴びた水が足まで伝う。部屋はだんだんと、湯気で満たされていった。

 背伸びをしてシャワーヘッドをとる。軽く身体に38℃を浴びてから、ヘッドを下側にひっかけた。

 シャンプーを手に取ろうとして、やめた。水が流れる。じっと留まってから青い容器を見る。もう使われない、男物のシャンプー。それを手に取り、強く掴んで洗い始める。それからへたりこんだ。

 視界の端から真ん中にかけて、白い泡が通っていく。

ぽたり。

ぽたり。


 そばの浴槽から、楽しげな2人の声が 耳に残った。頭を温水に打たれながら目を瞑る。泡が入らないように、痛まないように。

 泡を残して、水が流れていく。

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水に流せない 白川 優雨 (しらかわ ゆう) @Syafukasu

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