AM:一人時間

荒川 蒼

第1話

仕事と家事と子育てに追われていると、自分だけの時間がほしい、とよく思う。

一人になれる時間が、どこかに落ちていないか探すようになるのだ。


一人の時間があれば、

あれをして、

これをして、

行きたかった場所にも行って、

たぶん有意義なことをするはずだ。

と思っている。



ある日曜日、珍しく妻と子どもだけで出かけることになった。

午前の半日、完全に一人の時間ができた。



とりあえず、いつも家族で行くショッピングモールに向かった。目的は、特にない。

洋服は特に欲しくないし、靴も古いがまだ履ける。ただただ、モールの中をうろうろ歩く。


たまにはカフェでゆっくりコーヒーでも飲もうかと思ったのだが、少し混んでいたのでやめた。

結局、自販機で缶コーヒーを買って、トイレ横のベンチに腰をかけた。


そういえば。

と思って、前から子どもが欲しがっていたおもちゃを探してみる。

あてもなく何軒か探す。

結局見つからないまま、気づけば一時間ほど経っていた。


いつもは隣に居る子どもの声はなく、

自分の足音と脳内だけが聞こえる。

ふと、数十年歳を取ったような気がした。



さて、妻と子どもが帰る前にと思い、モール内のスーパーで昼ごはんのおかずを買う。

そして、半日の一人時間が終わった。



妻と子どもを駅まで迎えにいく。


「一人の時間、楽しかった?」

と妻に聞かれる。

「そうだね、ゆっくりできたよ」

と私は答える。


嘘ではない。

でも、何をしたのかと聞かれると、うまく答えられない。


一人の時間は欲しい。

でも、いざ一人になると、

結局いつもと同じ行動をしている。


特別なことは何も起きない。

気づけば、自分以外のことを考えている。


それでも、多分また、一人の時間がほしい。と私は言う。

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AM:一人時間 荒川 蒼 @arakawa_ao

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