第5話 愛のかたち

アルト様の匂いで起きた私が待っていたのは焦りだった。

ベッドは汚れていた。アルト様は生きている。しかし、ネックレスとアルト様がいない。

私は裸足で食堂へ行き、行き先を聞き出した。

アルト様が向かった先はアッシュフォード村かもしれないということがわかった。

そこは私の故郷だった。私の魔法石の事を調べに行ったのかもしれない。私は村に向かった。



村が近づくに連れて道中、視界が赤くなり呪いが私を飲み込んだ。


「ユーリ、お前、呪いに負けんなよ!」


アルト様の声が聞こえ、自分の意思で目を開けると私を包み込んでいた呪いが離れていく。

視界が戻るとボロボロのアルト様が倒れていた。

私は震える手で抱きしめた。


「もう、戻れないのにっ。好きになってごめんなさい。愛してしまって……ごめんなさい」


「ユー、リ」


アルト様は生きていた。私は噛み締めるように声を殺して泣いた。



彼は私が泣き止むまで優しくずっと側にいてくれた。

私は落ち着きを取り戻すと怪我をしたアルト様の傷を大体治療し、魔物避けの結界を施し野宿することを決めた。

アルト様は魔法石を返してくれた。錆びたチェーンは変わらないのに魔法石も黒いままなのに何かが違う。


「その魔法石、お前のことすごく助けたがってたよ」


私は魔法石を優しく抱きしめた。ため息が聞こえ、顔を上げればアルト様が辛そうな顔をしていた。


「何回も戻るなんて、お前は馬鹿だよ」


「私は自分の死より、貴方を失う方が怖かったです」


アルト様は呪いのことを聞いてきた。どんな魔物だったのかと。私は友との出会いから話をした。


「そのヘルハウンド、番がいたんです。離れ離れになってしまってとても悲しそうでした。……おかしいですよね。魔物に対して情が湧くなんて」


アルト様はそんなことない、と言ってくれた。そして、呪いの解き方知っているかと聞かれた。

私は貴方を殺す以外知らない。

アルト様は笑っていた。


「お前、調べろよ。解き方、もう1つあるんだよ」


そう言って私に近づけと言ってきた。唇が触れてしまいそうだった。離れようとすると逃がさないように腕を肩に回された、引き寄せられた。


唇にアルト様の柔らかい唇を久しぶりに感じた。視界が赤くなっていく。

しかし、視界は戻っていく。


「ユーリ、愛してる」


夜が明けたのか太陽の光がアルト様を包み込んでいた。美しかった。

腰に弾けるような痛みが走る。まるで友のしっぽで叩かれたような痛みだった。


《悪かった》


頭の中に友の声が響く。手の中にあった魔法石も砂のように崩れていった。やっと終わった。

私はアルト様の腕の中で泣いた。




馬が私たちを乗せて走っていた。

アルト様は私が支えながら前に乗ってもらった。離れたくない、という気持ちが大きかったがアルト様の怪我を考慮したのもあった。

やはり、私の回復魔法では骨折までは治せないようだった。

アルト様が怒られるかもな、と言った。

きっとすごく怒られるだろう。もしかしたら重い罰も考えられる。

だけど、心は晴れやかだ。


「副団長でなくなっても貴方の側にいます」


「何言ってるんだ。お前は一生オレの側にいるんだろ?副団長は辞めさせない、絶対に」


私の手をアルト様が握る。

それだけで嬉しかった。私はアルト様の頭にキスを落とした。


アルト様の耳は赤くなっていた。


「だけど、オレが団長首になったらごめんな」


「そしたらアッシュフォード村に一緒に帰りましょう」


「……そうだな」


アルト様は小さく笑った。

私は初めて未来の話ができた。それもアルト様がいる未来だ。嬉しかった。


初めて私の本当の願いが叶った瞬間だった。

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