夢日記(2026年)
昼と夜と宇宙の外と
1月17日
1/17 午前8時前頃
正面…より、ちょっと上を見る
今いるこの地面よりも、少し高いところに、『奴』がいた
僕は問う
「お前の総資産、いくらぐらいなんだ?」
まだ中学生程度の容姿(本当に中学生なのだが)をした奴が答える
「五千億円ぐらいかな」
少し煽り気味に、「はっ」と笑った
「それが悪事をおかして手に入れたお金か」
奴が不服そうに口をすぼめる
「悪事とは失礼な。俺は人のためになるようなことをしているんだ。」
確かに、奴の言い分は事実だ。その方法が少し褒められたものではないとしても、そこまで大きな問題ではないだろう。自分がこんなに奴を追っている理由も、そこまで大きくなかった。自分は、なんのために奴を追い詰めようとしているのだろうか。普通に考えれば、悪いことよりも、良いことの方が大きいではないか。自分が、奴の方が正しいを思わせないように、表情を取り繕った。
ふと、右手を見る。錆びた鉄製の柵がその手には握られていた。経年劣化で簡単に取れてしまったのだろう。数歩分、右に移動すれば、そこには川がある。少し言い方が悪かった。たぶん川ではない。三メートルぐらい下に、水が流れているだけなのだ。勢いこそあるものの、水面から地面までがとにかく浅い。なぜか無性に、持っている柵を川(仮)に投げ入れてやりたい気分になった。
「別に、その柵を俺に投げつけてくれもいいんだぞ」
嗚呼、苛つく。奴が自分は悪いことをしていると自覚していて、その上で戒めに投げつけられてもいい、本気でそう思っている顔だ。まるでメロスが、セリヌンティウスに「私を思いっきり殴れ」と言ったときのような、そんな顔だ。やけに具体的な説明になってしまったが、そういう感じなのだ。そんなこと微塵も考えていなかったのに、勝手に都合のいいように解釈されたことが腹立たしかった。まて、逆に、今ここで川に柵を投げ入れれば、奴も困惑するのではないのだろうか。そしたら少しだけ気分が良くなりそうだ。
思い立ったが吉、僕はその柵を右にある川に投げ入れた。つもりだった。投げる方向を誤って、奴に向かって柵が飛んでいってしまったのだ。傍から見れば、奴の煽りに反応してしまったように見えるだろう。柵が奴の顔面にあたる。僕は奴を消そうとした、だが、怪我をさせるつもりはなかったんだ。僕は反射的に、後ろに飛び降りていた。さっき奴に向かって投げた柵が、右前に飛んできた。柵がまた自分に向かって投げられないように、少し方向転換をして柵を拾う。後ろを振り返ると、奴も、身長の半分ほどの高さの段差を飛び降りていた。柵を投げる。奴に直撃しないように投げたとはいえ、また大きく方向が狂ってしまい、川に架けられていた石橋の上にぶつけてしまう。石橋を柵で叩いてから渡ろうとしたわけではない!と誰かに向かって話したが、誰に向かって話したのかは分からない。奴が方向転換するよりも先に全速力で走り、柵をもう一度拾い上げた。念の為、石橋を渡って奴と距離を取る。
奴の顔面と右腕からは、血が出ていた。どれだけの痛みが、奴の中を駆け巡っているのだろうか。想像もしたくなかった。その痛みを感じまいと、逃げ出した自分がどうしようもなく雑魚に思えた。けどなんだ。楽しい。
「なんか、楽しいな」
そうなのか。奴も、今の本心は僕と同じなのか。その表情は、和気あいあいとしていた。この場において和気あいあいという表現は正しいのかどうか別として。本気で逃げようとしているときも、心は恐怖じゃなくて楽しさを示していたのだ。
「そうだな。楽しいな。」
その後、奴は顔面と右腕の骨が大きく折れていたことが発覚。病院で何ヶ月も治療を受けたらしい。その説は本当に申し訳なかった。僕と一緒に奴を消そうとしていたあの人も、今では奴と一番仲のいい友達だ。ちなみに僕は、あんまり奴と会っていない。でも、会った時は会った時で、仲良く色んなところに行っている。
夢日記(2026年) 昼と夜と宇宙の外と @s_n_tai
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