おばちゃんの異世界転移人生

いぬぬっこ

第1話 ケイオティック誕生日

 杉山麗美(すぎやまれみ)。本日、三十歳の誕生日を迎える、おばちゃんです。

 イベント事は大切にするタイプだから、バースデーケーキとして、有名店のチョコレートのホールケーキ買ってきて、今まさに食べようとしているとこです。

 まあ、ホールケーキ買ったけど、オタクで独り身なんで、食べるのは私一人なんですけどね。

 え? 一人で食べ切るには量が多い?

 ええやんか! 誰に迷惑かけるわけでもないし、こちとら年に一度のホールケーキを一人でドカ食いできる日を超楽しみにしとるねん!!

 って、また一人ボケツッコミしてしもうた!

…………はあ、歳やね。


「ほな、いただきまーす」

 切り分けたチョコレートケーキのピースをそのままかぶりつこうとした瞬間、

ガチン

「は? ケーキ、消えたんやけど! 高かったんやけど、あのケーキ!! 食べる前に消えてしもた!!! って、ここ、どこなん!? なんで私、森の中におるんのや??」

 部屋着のままなんやけどなー、靴とか履いてないし、何も持ってないのに、なんや食べようとした動作のまま、地べたに座っておるもんなー

「私、不審者やねん、どう見ても! てか、え? この状態でどないせーちゅうねん!!」

 と言うかこれ、昨今のネット小説にある異世界転移とかいうやつ? なんで、今まさに、超楽しみにしていたケーキにかぶりつこうとした、このタイミング?? 最悪でしかないねんけど!!!


 グルルル。

 え? 何? この唸り声って、狼やん! あ、これ、私、死んだ? ええー、こんな死に方ってある!? 最悪通り越して、最大凶悪やわ!!!

「こっち、くんなや!! この駄犬が!!!」

が、そんなのお構いなしに、茂みから現れた狼が、こちらに飛びかかってくる。


 あ、これ、終わった……、

「……フン」

 突如、銀の閃光が走ったと思ったら、スパーっと、狼の首が胴体から離れて、血飛沫をあげて地面に転がった。

「…………大丈夫か?」

 心配そうに、血の滴る剣を持った美丈夫が尋ねてくる。

 助けてくれたのは嬉しいけど、なんでこの人、顔が真っ赤なん? 茹蛸みたいやわー。

「あんちゃんのおかげさまで大丈夫やわ。おおきになー」

「…………そうか」

 なんや、しどろもどろでかったるいなあ。狼から助けてもらったのは、ありがたいんやけども。まっ、この人いい人そうだし、聞いてみるか、

「あんちゃん、いい人そうやから聞くんやけど、私、身寄りがなくて何も持ってないんよ。なんか市役所的なとこない?」

 異世界人でも対応してくれるかはわからんけど、まずは行政に頼るのが筋ってもんやろ。

「………………俺と結婚して下さい。この剣に誓って、あなたを生涯幸せにすると違います」

……っは! 唐突すぎて、ちょっと思考放棄してもうたわー(棒)

 急すぎん!? え? 私、市役所的なとこないか聞いただけなんやけど?? 

 あ、子犬が捨てられた様な目でこっち見とる。超真っ赤な顔で。すごい良い美丈夫が。……これは、これは……、断れへんやないの!!!

 狼から命助けてもらった恩もあるし、どうせ日本にいたら恋愛も結婚も縁がなかったオタクの独り身だし!!! この際、やったろうじゃないの!!!

「ええよ! 結婚しよ! えっと、あんちゃんの名前は?」

「!!! ありがとう、…………本当にありがとう」

 涙ぐんで感極まってる美丈夫は、それだけでも絵になった。

「俺はエドウィン。エドと呼んでくれ」

「私は、ええっと……レミ。レミや! これからよろしゅうたのむわ、エド!」


杉山麗美。改めて、レミ。本日、三十歳の誕生日を迎えて、バースデーケーキを食べ損ない、異世界に転移し、狼に襲われ、助けてくれた恩人のエドウィン、改めて、エドの求婚を受けた、おばちゃんです。


 ん? ツッコンでいいかそろそろ

 確かに私はイベント事、好きやけども、好きやけどもな、神様…………

 これは流石に、盛りだくさんすぎや!!!

 この、あほんだらあ!!!!!!


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