第3話 この国を救う方法

翌朝、城の中庭に人が集められた。


 兵士、役人、職人、農民――身分はばらばらだ。

 全員が困惑した顔で、俺とアリエルを見ている。


「……レオ殿、本当にやるのですか?」


 宰相ハロルドが小声で聞いてきた。


「やるって?」


「“一日で成果を見せる”などと……」


 俺は肩をすくめた。


「見せないと、誰も信じないだろ?」

「俺を信じてくれ」


 アリエルは緊張した面持ちで玉座の前に立ち、民に向かって声を張った。


「皆さん。本日は、アストファル王国の未来について話します」


 ざわめきが広がる。


「隣国の圧力、貧困、食糧不足……どれも事実です」


 彼女は一度、言葉を切った。


「ですが、この国には――希望があります」


 視線が、俺に集まる。


 正直、こういうのは苦手だ。

 けれど、逃げるつもりはなかった。


「まず、腹の問題からだ」


 俺は前に出る。


「この国、畑が痩せてる。耕し方も古い」


 農民たちがざわついた。


「土が死んでる。でも――生き返らせることはできる」


「魔法で、ですか?」


 宰相が問う。


「半分正解」


 俺は地面に手をついた。


「――起きろ」


 魔力を流し込む。


 大地が震え、土が盛り上がる。

 乾いた地面は黒く変わり、湯気が立ち上った。


「なっ……!」


「土属性魔法に、微量の水と風を混ぜただけだ」


 説明は簡単だ。


「栄養を循環させる。これで、作物は三倍は育つ」


 農民の一人が、震える声で言った。


「……本当、ですか?」


「試してみればいい」


 次に俺は、城壁の崩れかけた場所へ歩く。


「防衛も問題だな」


 拳を握る。


「石よ、結べ」

「クリエイト・ロック」


 城壁が音を立てて修復されていく。

 ヒビは消え、表面は滑らかになった。


「素材を新しくしたわけじゃない」


「構造を最適化しただけだ」


 兵士たちが、呆然と口を開けている。


「これで、攻城兵器が来ても簡単には壊れない」


 最後に、俺はアリエルの隣に戻った。


「金の問題は、交易で解決する」


「交易……?」


「この国の立地、悪くない」


 俺は地面に図を書いた。


「中継都市にすればいい。道を整備し、関税を下げる」


「人は、通れる場所に集まる」


 沈黙。


 やがて、一人の老人が膝をついた。


「……女王陛下」


「この少年は……奇跡です」


 次々と、民が頭を下げていく。


 アリエルは目を潤ませながら、俺を見た。


「レオ……」


「まだ始まりだ」


 俺は小さく笑った。


「俺は王じゃない。けど」


 彼女を見て、続ける。


「あなたを、王として支えることはできる」


 その言葉に、彼女の頬がわずかに赤く染まった。


 だが――。


 その日の夜。


 城の高塔で、宰相が密書を受け取っていた。


「……バルモアが、動き出しましたか」


 紙には、こう書かれていた。


――女王エリシアを奪え。少年は排除せよ。


 嵐は、もうすぐそこまで来ていた。

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