ほーそーぶっ
鈴木まいける
第1話 どうせみんな放送部なんて知らないんだろ
【放送部】(名詞)
一般に放送を担当する部活動のこと。
人手不足である学校が多い。(個人の感想であり、実際の団体や個人に関係はありません)
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『時は202X年。脳に人工朗読機を埋め込まれた人々は放送の素晴らしさにようやく気づき、日本は大放送時代へと変化を遂げていっ』
「なんでこんなわけわからんSFなんよ。」
唐突に文句を言われ、放送部2年の佐藤の手は止まった。この声の正体は佐藤の脳内先輩Aこと先輩Aである。
「だって、おもろい文章書かなきゃ部員来ませんよ。それなら近年大流行りのSFライトノベルとかしか無いですって。」
「そりゃそうだけど。もうちょっと他になんかこう、あったでしょ。」
「じゃあ先輩が書いてくださいよ。」
「⋯⋯」
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『「放送部の先輩があまりにも沢山いるおかげで私の仕事がありませんっ!!〜大会常連校にもなっちゃってこれってモテる前兆ではぁぁ???〜(そうこう言ってるうちに部室に後輩が押し寄せて来ちゃってたぁーいへぇ)』
「題名から煩悩オンパレードすぎやしないかい……?」
今度は脳内先輩Bこと先輩Bである。いちいち脳内先輩に名前なんかつけてたらそれこそ悲しい人間だ。だからBなのだ。けっしてネーミングセンスの問題ではない。きっとそうであると佐藤は信じている。
「これがテンプレでしょ。題名長けりゃだいたいみん」
「それ以上は言うんじゃない。」
また先輩Aに止められてしまった。佐藤は心のなかでしつこいなとつぶやく。脳内先輩なのでもちろんその声もきちんと聞こえている。
「なんて?」
「……すみません。」
「だいたいなんで私が校内誌に載っける記事書くんですか。先輩方は……。あ、脳内の存在だから無理なのか。」
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『転生したら放送部だっ』
「こら」
今度は脳(以下略)Cである。
「もう無理ですよ。部員が私たった一人の放送部に校内誌で新入部員呼び込めだなんて。なんで放送部なんかに……放送部なんかに……ほうそ」
溢れ出す佐藤の怨念。机に突っ伏したその口からはおそらく呪いの言葉であろう単語がボソボソと呟かれる。どこでそんなものを覚えてきたのだろうか。
「はいストップ。深呼吸だよ佐藤ちゃん?」
この高校の放送部の部員は、2年の佐藤ただ1人である。3人いた3年の先輩は全員引退し、新入部員をただ1人で佐藤はずっとずっと部室で待っている。ずっと……ずっと……ずっと……。
「このままだと私怨霊で化けて出そうじゃん。」
「もうこの流れやめた方がいいんじゃないの?どうせこれずっと続いて読者を困らせ、飽きさせるだけよ。」
「B先輩どういうことです?読者?飽きる?流れ?へぁ?」
「忘れなさい」
そろそろ佐藤も鈴木もネタ切れだ。本題へ移ろう。
放送部とは一体何なのか?ズバリ、『放送をする部活』である。だから何だといった感じである。先生方がこういった説明をするから部員が来ないのである。
「だってなんのこっちゃわかんないんだもん。私が6年間放送やってる猛者じゃなかったら絶対放送部とか入ってませんもん。」
「佐藤、本音言い過ぎ。」
「へい…」
たとえ中学で放送部員であったとして、彼らはたいてい演劇部や軽音部に流れていくのである。機材を触ったり、演技がしたいならそれがある種正解なのだ。
「しかしながら、始めるとなかなかやめられないのが放送部なんだなぁ…。
色んな意味で。」
この「やめられない理由」も様々である。日本の放送界隈に存在する大会に没頭し、それらに青春を注ぐ者。運動会然り文化祭然り、あらゆるイベントのアナウンス要員として駆り出され、まさしく社畜のような部活動生生活を送る者。佐藤はその両方に当てはまる。悲しいかな、放送への情熱は有り余るほど持っているのに部員が一人であるがゆえ、放送というマイナー競技に対するジレンマが湧いて出てきてしまうのである。
「だってさ、大会の存在を知ったみんなの反応ってさ、だいたいが『大会とかあるんだぁ〜!どんな事するのぉぉ?』なんですよね。ほんとにマイナーもマイナー。どっかの誰かが放送部の青春漫画とか青春小説とか書いてくれんかな。だって軽音とか吹奏楽とかバレーとかバスケとか、そんなのばっかだし。」
「「「それはほんとにそうだと思う」」」
この虚しさと悲しさたるや。全国の部活動生予備軍の諸君には佐藤と鈴木まいけるの心を少しでも救っていただきたいところである。
「年2回大会あるとか説明されたってなんのこっちゃって感じですよね。」
佐藤は超絶憂鬱ポーズこと頬杖を繰り出そうとするが、上手くいかず滑り落ちる。県内屈指の進学校であるため頬杖なんて授業中についたりできないのだ。滑り落ちた佐藤の姿の哀れさたるや。
「脳内先輩の皆さんも案だしてくださいよ。」
「無理よ。あんたの脳内の先輩なんだから、あんたが思いつかない限り手も足も出ないわ。」
「脳内先輩だから手も足もないくせに。」
「……」
悲しい言い合いを脳内で繰り広げた佐藤はおもむろに学校支給のタブレットを取り出す。
「こうなったらもうチャッ◯ーにたの」
「それだけはやめなさい。」
しかしタブレットのwifiのマークにはバツ印が申し訳なさそうに表示されている。オフラインではチャッ◯ーになんか頼むことはできない。
「wifiもないとかこの部室は一体全体何なんですか!?つい2週間前まで繋がったのに。」
「無理よ。文化部部室なんてそんなもんだし、AIに聞いたところで、部員が1人の時の対処法なんてわからないわ。どうせ答えはみんなで協力してイベント開催しましょうとかなんだから。」
wifiもない、実質孤島である部室の机に1人佐藤は突っ伏す。完全下校30分前のチャイムが鳴る。こうして今日もたった1人(?)の部活動は終了した。部員は来ず、校内誌の原稿は書き上がらないが、佐藤は今日も明日も放送部の、魅力を伝えてなんとか新入部員を引きずり込もうと模索し続ける。
あとがき
鈴木まいけるも放送部だったので放送部に入りませんか半分エッセイみたいなもんです。へぇこんなに困窮した放送部も入りませんかあるのか、でもなんか楽しそうだなとちょっとでも興味を放送部に入りませんか持っていただけると嬉しいです。放送部に入りませんか。
ほーそーぶっ 鈴木まいける @kunsei_1011
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