少男化の世界で僕は
すみしら
第0話 プロローグ
目が覚めたとき僕は白い天井を見上げていた。病院のような場所。しかし消毒液の匂いも機械音もなく、静かでむしろどこか高級ホテルのような落ち着きがあった。
「目が覚めたんですね…」
優しい声が耳元に届く。
顔を横に向けると驚くほど美しい女性がいた。長い黒髪に端正な顔立ち。まるで完璧にデザインされた彫刻のような美しさだった。
「え…ここは…? あなたは…?」
声が震える。何も思い出せない。自分の名前すらも。
「あなたは“特別指定男性”として保護されています。記憶障害は一時的な反応と報告されていますが…すぐに順応できるよう、私たちがサポートします」
女性は落ち着いた微笑みを浮かべながら、ベッド脇の椅子に座った。その仕草すら品がある。僕は混乱しながらも彼女の言葉を追いかけた。
「特別指定…? え…どういう意味ですか…?」
彼女は少し目を伏せてから、静かに語り始めた。
「この世界では、男性の人口は急激に減少しています。今や女性の出生率が99.3%、男性は全人口の0.7%未満…国際的に見ても、男性は種の維持に不可欠な“国民的財産”とされています。ですから、あなたは国家の重要資源として保護されているのです」
僕は言葉を失った。
だが彼女の口調に誇張も冗談もなく、真実だけがあった。
「その代わり…男性は“提供義務”を課されています。あなたの精子は国家の繁殖計画において極めて重要な意味を持っています。私たち女性には、あなたから“適切な方法で”搾取を行う義務があるのです」
「搾取…?」
「はい。…包み隠さず説明する義務がありますので、正確にお伝えします」
彼女は一瞬だけ恥じらいを見せるも、すぐに背筋を正して続けた。
「最も効果的な方法は、『首4の字膣固め』と呼ばれる技術です。
これは、妊娠率と受精効率を最大化するために制定された医学的な行為です。一人の女性があなたの首に“首4の字固め”を施し、あなたをリラックスと拘束状態に導き、もう一人の女性があなたの陰茎を自らの膣で受け入れ、自然な収縮と刺激によって精液を確実に搾り取るのです」
僕の心拍が一気に跳ね上がった。
「それは…あの…それって…」
「性交とは異なります。これは“医療行為”です。そして対象男性の快楽中枢を適切に刺激し、射精を誘発するため精子の質と量が安定し、なおかつ妊娠率が向上することが証明されています」
彼女はスッと立ち上がり、部屋のタブレットを操作してモニターに一つの資料を映した。
「昨年度のデータでは、この方法により受精率は15.6%、妊娠率は11.2%上昇しました。これによりわが国は深刻な人口減少を一時的に食い止めることに成功し、国連からもモデルケースとして高く評価されました」
僕はモニターのデータを眺めながら、現実感のない状況に呆然とした。
「そして……あなたには、今日このあと最初の“提供”が予定されています」
「えっ?」
「後ほど担当者が参りますので、どうか安心して身を任せてください。すべて国家の方針に基づきあなたの健康と安全、そして快適さを最優先に考えられたプロセスです」
彼女の口元にどこか柔らかい色気が宿ったように見えた。
「これから多くの女性が…あなたの遺伝子に触れられることを、光栄に思っています」
ドクン、と胸が高鳴る音が聞こえた気がした。
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