ある女とその家族の生涯
いぬぬっこ
ある女とその家族の生涯
「貴方たち夫婦に神からの祝福を!」
司祭からの言葉と同時に、私は夫となる男性とキスをした。
それを合図に、鐘の音が響き渡る。
招待客たちの祝福の声に包まれた、結婚式。
それは、いつの時代も変わらない、結婚式の風景。
ただ一つ違う点があるとすれば、私が異世界からの転移者ということだろう。
私は日本という国に生まれ、30歳の誕生日まで変哲のないオタクとして生きていた。
そう、30歳の誕生日の日に、バースデーケーキを食べようとして、気づいたら異世界に転移していた。
おい神様、なんちゅうタイミングで転移させてくれはるねん!?
と、不満たらたらな私は速攻で今の夫に発見され、見初められ、求婚され。
もう、ええわ、この際、日本では生きていて恋愛も結婚もどうせ一生しんかったさかい、この際、やったるわ!!
と、求婚を受け、冒頭の結婚式に戻る。
で、夫との相性が良かったのか、翌年には息子を授かり、親子3人での生活が始まった。
そして、あっという間に10年の歳月が流れて、息子は10歳になった。将来の夢は騎士だと言う。
夢があるのはいいことや、叶うか叶わんかは別やけども。
と、幸せな生活満喫してたら、影の傭兵団に村を襲撃されて、村が焼け野原になってしまった。
まじかー、影の傭兵団って巷で噂になっとった、この国滅ぼそうとしている、やばい奴らやん。
こんな辺鄙な何もない村を襲うなんて、どんだけ暇な奴らなん!?
おばちゃん、悪い意味で感心したわー(笑)
まあ、息子と夫も生きとるさかい、旅でもして住む土地見つけに行こか
と言うことで、家族三人で放浪の旅に出た。
で、旅に出てみてわかったこと。
夫、ただの村の剣術師範代と思ってたら、昔はこの国の騎士団の副団長をしていたそう。
ただ、騎士団の団長は、祖先の恨みで宰相から妻子を暗殺されてしまい、この国を恨み、この国を滅ぼそうと影の傭兵団を結成し、率いるように。
それを受けて、夫は騎士団長を止められなかった責任をとって、騎士を辞め、生まれ故郷の村の剣術の師範代になったと。
え、なにそれ、そんな重い過去、10年以上、夫と夫婦やってて初耳すぎるんやけど!!?
てか、それなら、村が襲撃されたのって、夫の存在のせいだったりする!?
って、いやいや、悪いのは騎士団長と、その原因を作った宰相やん!!!
は? 何? 夫、影の傭兵団とやり合う気なの?
息子もその気なの?
ええー、息子までこんな大人のゴタゴタに巻きこむ気なんかあんた!?
……はあ、でも村を焼かれてしまったし、しゃーない。
夫が戦うのは復讐のためやなく、この国を守るためなんやろ。わかっとるわ、何年、あんたと夫婦やってきとると思っとるねん。
わかっとるよ、あんたがいかに強くて優しいか。
息子も、そんなあんたの背を見て、言わずとも騎士を目指すようになったけん。
妻として、母として、ここはいっちょひと肌ぬいでやりますか!!!
それで、私たち家族は各地を周り、同志となる仲間を集めて、影の傭兵団に対抗する、燕の傭兵団を結成し、影の傭兵団の支配地域となっていた村や都市を解放し、騎士団長が潜伏する城へ乗りこんだんやんけど。
「お前たち家族に、死の呪いを!」
騎士団長は呪詛の叫びをあげて、夫を切り裂いた。
倒れる夫と目が合う、私の糸がぷつりと切れた。
……よう、ようやってくれたなあ、われぇ!!
私がただの無力なおばちゃんと思うなよ!?
こちとら、長い異世界生活と日本の知識チートでそれなりの禁忌の魔術も使えるようになったんや!!!
私の命と引き換えに、お前も地獄行きじゃあ!!!
私は躊躇うことなく、禁忌の魔術を使い、私自身の命と引き換えに騎士団長を殺した。
…………はあ、真っ暗やわ、ここが地獄ってやつなん? 静かすぎて不気味やわ。まあ、地獄やから、不気味で当然なんやけど。
…………今まで、賑やかすぎたから1人は寂しいなあ。
寂しいなあ。
…………
…………ん? 何や気配がするわあ。 何か懐かしいって……夫やんけ!!!
えっ? あんた、どうしてここにいるん?
えっ? 夫婦なんだから死んでも一緒?
ここ、地獄でも天国でもない輪廻の輪の線の上なん。そんでもって、異世界の魂の私は異質だから輪の線上から、少し外れたとこにいると。
でもって、あんたは私と一緒がいいから、あんたも外れてきたと。
…………あんた、……どんだけ、どんだけ、馬鹿なん!?
え、馬鹿は私? 息子を置いてったから?
……それは、そうやわあ、何も言い返せんわ。
あの子、私のこと恨んどるかなあ……って、えっ!!
生きてるあの子の今、覗き見できるの!?
え、怖いんやけど。
……わかった、わかった、見る、見るさかいに。
おお、あの子、あの後、混乱をおさめて、国を救った英雄になって、夢の騎士になったんか!
立派! 立派になって!! って、鐘の音??
お、焼け野原だった村、復興してるやん!!
教会もいい感じに再建されてって、何の儀式やったんねん
えっ? 私たちの鎮魂の儀式?
「母さんと父さんに死後の祝福を」
息子の祈りと共に、私と夫の魂は白い光に包まれて、天国に旅立った。
これは、私と私の家族の生涯の物語である。
ある女とその家族の生涯 いぬぬっこ @marikoko01240415
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