日記2 ほんの少しの一歩

「はい、どうぞ」


俺は瑠璃(るり)の前にパンケーキを置いた。瑠璃とはこの泣き虫の名前で、パンケーキはちゃんと机においてあるぞ。


「うわぁ…おいしそう! 食べていい!?」


「どうぞって言ったろ。」


「ありがとう! いただきます!!」


瑠璃がパンケーキを食べた。まあ、食べる前に、もう反応は分かるがな。


「おいし〜! りんくんの作るパンケーキはおいし〜よ〜!!」


「それは良かった。ちゃんと食ってくれよ。」


こいつは食が細いからな。こういうものでガッツリカロリーを取ってもらわないと、まじで骨だけになる。


「おいし〜…ふゎぁ…しあわしぇ…」


噛み締めてるな。さっき歩いて疲れたのもあって、余計に美味く感じるんだろうな。野菜も摂らせたいが…それは次の飯でいいか。


「…りんくんは食べないの?」


「俺か? 別に大丈夫だ。お前と違って、俺はちゃんと先に食べてる。もう十分食べてきたんだよ。」


「…でも、おいしいよ?」


…これは、食べてほしい流れか。たまにこいつの優しさが出るときがある。でも、ちゃんと休憩できてる証拠なんだよな。


「…わかった、一口くれ。」


「うん! じゃあ、口開けて!」


「はい、開けたぞ」


恥ずかしくはない。これぐらいよくやるからな。


「んっ…おぉ、案外美味く作れてるな。」


「そぉ、おいしいの〜。」


「ありだな、次からもこれぐらい美味く作れるようにするよ。」


「やった〜! ありがとう!」


笑顔のこいつも悪くないな。寝起きなんか、大体不機嫌な顔で起きてくるしな。外を出るときなんかも、泣き喚いて迷子の子供みたいになってるし。家の外でも観れたらいいんだがな…。


「…りんくん、どぉしたの?」


「ん? いや、考え事だ。」


「…だよね。目が真っすぐ向きっぱなしだったからね。そうだよね……」


…なんで今の状況で気まずくなるんだ? 俺なんかしたかな?


「…何か言いたいことでもあるのか?」


「へっ!? いや…別にそんなんじゃないけど…あのね…いや、やっぱいいや……。」


「…俺が嫌いなのははっきりしないことだと、瑠璃は知ってるよな? それなのに、その態度をするのはどういうことだ?」


怒っちゃった。きつく言い過ぎたし…ダメだな、俺。でも、さすがに気になる。悪いふうには思えなかったから、なぜその態度をしたのかだけでも知っておきたい。


「え…あの……えっと…私…わたしぃ………」


あっ…まずい。


「わたしぃ……おこらせたいわけじゃなくてぇ〜〜〜!!!」


やば…泣いちゃった。


「ご…ごめん、俺が悪かった。なんで言わなかったか気になってさ。だから、ごめん!」


やばい…相当ダメージ入ってるかも。なんかしないと…。


「瑠璃! 怒ってないから! ほら、俺の顔を見てくれ。笑ってるだろ? な!?」


「うわぁ〜〜…あれ、本当だ。りんくん笑ってる……?」


あ…危ない、まだそのラインでよかったぁ。


「瑠璃、ごめん。何が言いたかったのかが気になってさ。俺、無理やり聞こうとして…本当にごめん。」


「ちが…ちがうの! 私も…自信持って言えなかったから…あの…その…私が悪いから、あやまらないで!!」


「…じゃあ、何が言いたかったのか聞かせてくれるか?」


「う…うん、言う。ちゃんと言うよ。」


なんとか収まったか…それにしても、本当になにを言いたかったんだろうな。


「私…私ね、りんくんみたいにお料理を上手に作りたいなって…その…思って…でも! りんくんは忙しそうだから…その…だめかと思って……。」


「…え?」


え? いや、え? あの瑠璃が? 料理を? は??


「…やっぱり…ダメ…だよね。私…そういうの、ダメダメだからね……。」


「まあ…そうだな。多分無理だな。」


「うっ…い…痛い、言葉がぁ……」


「でも、やってみるのは良いんじゃないか? いくらでも付き合うぞ。」


「あっ…ありがとう!!」


笑ってる…まあ、とことん付き合うか。

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