泣き虫世話日記

いちごみるく

日記1 小さな涙宝(るいほう)

今、俺の横で女性が泣いている。


別に知らない人ではない。恐らく、一番知っている知人と言っていいだろう。そして、俺が泣かしたわけではないことを知ってほしい。じゃあ、なぜそうしているかって? そりゃあ、こいつの言葉を聞いたら分かるだろう。


「私が悪かったんですーー!!! だから…だから、許してくださいーー!!!!」


…聞いてわかるだろ? 超絶面倒くさいやつだ。だから、俺はこいつを置いていこうと思うんだが…そしたら、恐らく…いや、絶対にこの言葉が来る。


「私をおいてかないでーーーー!!!!!」


だから、俺はこうしてそばにいる。声をかけてあげたいが、面倒くさくなるからいい。それに、置いていくのも夜だからダメだと、俺の理性がそう言っている。だって、こいつ背が低いんだぞ?


喉が細いから食事もろくにしないし、外に出たくないから部屋に居座るし…余計に食事も摂ろうとしない。どっかの誰かに襲われたら、逃げるも何も出来ないじゃないか。じゃあ、なぜ外で泣いてるかって?


俺が運動させるために連れ出したんだ。昼夜逆転しているこいつのために、わざわざ『夜に』だ。少しでも外に慣れてもらうためにとか、いろいろ考えているんだ。だから、こうしてベンチに座り泣き止むまで待っている。


「…なぁ、お前そろそろ泣き止まねぇの? 俺そろそろ飽きてきたぞ。」


思わずその言葉を漏らしてしまった。


「え…いや…私、泣きたいから泣いてるわけじゃ……」


「あぁ、知ってる。外が怖くて思わず涙が出ちゃった感じだろ。じゃなきゃあんな言葉をださん。」


「…うん、りんくんがいるから大丈夫だと思ったんだけど…やっぱり怖くて……」


「…あっそ。いや、俺がいるから大丈夫だろ。男連れの女を襲う馬鹿は、大体泥棒だ。そんな泥棒も、こんな街灯ピッカピカの明るいとこじゃ襲うわけないだろ。」


この公園は街の近くにあるから、そりゃあピカピカだ。まだ昼なんかと思うぐらいの明るさを放ってやがる。


「うん…それは知ってる……でも…やっぱり、怖いものはこわいの〜〜〜!!!」


うわ…また泣き出した。もう、いっそのこと抱えて帰るか…? こいつの家は一軒家だし、家は隣だし大丈夫だろう。


「わかった、わかったから泣きやんでくれ。無理やり外に連れ出した俺も悪かったから、もう帰ろう。」


「いいのぉ?」


「帰りたくないのか?」


「か…帰りたい! 帰りたいから置いてかないでね!!??」


「じゃあ、ついてこいよ。」


「うん…うん!」


こいつの手を繋いで帰る…これは、大体外に出たらする行動だ。嫌ではない。恐らく慣れだ。小さい時からずっとそうだからな。じゃあ、なぜこれを続けるかって? そりゃあ決まってるだろ。


俺はこいつに憧れているからだ。


性格ではないぞ。あんな性格は、誰でも嫌がる。じゃあなぜかって?

そうだな…ギャップ、かな。あいつ、ああ見えて出来るやつだ。15歳で両親を亡くし、その両親が経営していた小さな会社の社長に就任した。まあ、表に出れないから裏だけどな。そんな彼女は、2年でその才能を開花させ、今じゃ大手企業に選ばれるほどだ。ちなみにだが、俺はそこで惚れた訳では無い。そのずっと前…まだ小学生だった時だな。


「い…家、ついたぁ〜……」


あっ、足から崩れてる。まあ、そんなとこだな。家が隣なのもその名残だ。一人で暮らしてるし、たまに家事に行ったりしてる。だから、合法的に合鍵を持っているのさ。


「扉、開けたぞ。」


「んー!!!」


うわっ、すごいスピードで入っていった。今日はよほど疲れたんだな…後であいつの好きなパンケーキ作ってやるか。今日の成果は…500mってとこかな。先週よりかは50mぐらい伸びてるし、まあ十分だろう。


さて、パンケーキを作ってやるか。

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