第23話 王の招聘と至高の理
白亜の都に、これまでで最も豪華な装飾を施された騎士団の隊列が姿を現した。 それは旧公爵家のような略奪者ではなく、王国の紋章を正式に掲げた国王直属の近衛騎士団であった。 アレンは領主邸の執務室で、執事が淹れた特別な茶を嗜みながら、その様子を静かに見守っていた。 今回の茶葉は、精霊の住まう高地の新芽を、雷龍の吐息で瞬時に乾燥させたもので、一口啜るだけで身体中の魔力回路が至高の純度へと書き換えられる感覚があった。
「アレン様、国王陛下からの親書を携えた特使が到着いたしました。内容は、旧公爵家の完全な取り潰しと、アレン様への公爵位の授与、ならびに王都の魔導インフラ再構築の全面的な依頼でございます。陛下は、アレン様が産み出した理なしには、もはや王国の存続は不可能であると悟られたようです」
執事が恭しく告げると、アレンは不敵な笑みを浮かべた。 かつて自分を無能と断じ、追放を黙認した王家が、今や自らの地位を維持するためにアレンの慈悲を乞うている。 これほど爽快な展開が他にあるだろうか。 アレンは特使を客間に待たせたまま、まずは日課となっている都の視察へと向かった。
広場には、祝祭の余韻を残しつつも、さらなる活気に満ちた日常が広がっていた。 露店通りからは、ファンタジーの極致とも言える芳醇な香りが立ち上っている。 今日の目玉は、深海でしか獲れない水晶大蟹を、灼熱鳥の炎で一気に蒸し上げた特製料理だ。 添えられたソースには、氷晶花の雫とマンドラゴラの根を黄金比で配合した、アレン監修の至高の調味料が使われていた。
「領主様、見てください。今日は地竜のレバーを特製のハーブでから揚げにしてみました。外はカリッと、中はとろけるような食感ですよ。デザートには、太陽麦の生地で包んだ真珠苺のクリームパイも焼き上がっています」
露店商が誇らしげに差し出す皿を、アレンは優雅に受け取り、その完璧な調和を堪能した。 冒険者たちは、新人訓練やダンジョン探索依頼の報告を終え、併設された診療所で癒やされた身体を休ませながら、屋台で買った熱々のシチューや骨付き肉を囲んで笑い合っていた。 酒場では、肉持ち込みで調理を依頼した大物猟師たちが、地底湖で冷やした至高のミードを酌み交わし、公爵家の没落を肴に祝杯を挙げている。
宿屋の窓からは、昨夜の夜食に虹色豚のステーキを楽しんだ移住者たちが、朝食に出された雲クジラのベーコンエッグの美味しさに震える姿が見える。 この至高の日常こそが、アレンが創造魔法で書き換えた世界の新しい常識であった。 アレンは次に商業ギルドを訪れ、王都の魔導具やインフラを管理するための、新しい特許管理の草案をギルド長に手渡した。
「王都を救うのは構わないが、条件は厳しいぞ。全ての魔導具の権利管理は我が商業ギルドが握る。王族といえども、私の許可なく物流管理の一端に触れることは許さない。それが嫌なら、彼らには再び魔力の枯渇した暗黒の日常を過ごしてもらうだけだ」
アレンの冷徹な言葉に、ギルド長は深く首を垂れた。 午後に領主邸へ戻ったアレンは、ようやく国王の特使と対峙した。 特使は、かつてアレンが王都にいた頃には傲慢な態度を隠さなかった高位貴族であったが、今はその面影もなく、絨毯に額を擦り付けるようにして平伏していた。
「アレン閣下、どうか、どうか王都の民をお救いください。旧公爵の悪行は全て白日の下に晒されました。陛下も心から後悔されており、閣下を王国の至高の守護者として迎える準備を進めておられます。どうか、あの至高の技術を、再び王国のために」
「王国のため、か。私が追放された時、その言葉はどこにあった。だが、安心しろ。私は公爵のような無能ではない。救う価値のある民がいる限り、私は私の理を広げる。ただし、王家は今後、私の創造する物流と技術の監視下に入る。それが救済の対価だ」
アレンの宣言に、特使は震えながらも、希望を見出したように涙を流して感謝した。 わくわくするような爽快な支配が、今ここに確立された。 武器屋や防具屋には、王都から運び込まれた無価値な鉄屑が次々と運び込まれ、それらはアレンの創造魔法によって瞬時になぞられ、至高の輝きを持つ新時代の装備へと再定義されていく。
雑貨屋の棚には、鑑定を終えたばかりの最高級回復ポーションが並び、その輝きはもはや一つの領地の枠を超え、王国全土を照らす希望となっていた。 夕暮れ時、アレンは料理人が腕を振るった、地竜のヒレ肉のステーキと、世界樹の若芽を添えた温野菜の晩餐を楽しんだ。 デザートには、メイドが用意した冷たい天国鳥の卵プリンと、蜜漬けの黄金りんごが供された。
「嫉妬と策略の時代は終わった。これからは、私の創造する至高の理が、全てを統べる」
アレンは静かに紅茶を飲み干すと、窓から見える魔法灯の海を眺めた。 辺境から始まった逆転劇は、今や一つの文明として完成し、世界を至高の日常へと導く伝説の第一章を書き終えたのである。 アレンは、明日から始まる王都の再定義に向け、静かな高揚感と共に穏やかな眠りについた。
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