「刀鬼」は全てを切り伏せる 〜異世界に転生したが状況が詰んでいるので死ぬほど努力する〜
@dcy
地下闘技場編
第1話 目覚め
ガチャリ、と冷たい金属音が響いた。
視界が不規則に揺れる。 突如、脳内に大量の情報が濁流のように流れ込んできた。
「……っ、が……あ……っ!」
こめかみを焼鉄で押し当てられたような激痛だ。 数式、歴史、言語、そして「日本人」としての断片的な常識。 自分のものではないはずの膨大な「知識」が、無理やり脳の器を押し広げて収まっていく。
「おい、止まるな。歩け」
無機質な声と共に、腕を強く引かれた。 手首には、鈍い光を放つ手錠。 前を歩くのは、黒いスーツに白い仮面をつけた不気味な男だ。
(……わからない。ここがどこなのか。俺が、誰なのか)
ずるずると足を引きずりながら、不気味な廊下を運ばれていく。 やがて、一つの重い扉が開かれ、俺は中へと突き飛ばされた。
「ここで出番を待て。お前は『商品』だ。最低限の衣食住は保証してやる」
背後で冷たく閉ざされる鉄の門。 静寂の中、俺は荒い息を吐きながら独房を見渡した。
石造りのベッドと、洗面台。 そして――壁に掛けられた、小さな鏡。 俺は震える手で、その鏡を手に取った。
(……誰だ、これ)
鏡の中にいたのは、雪のように白い髪をした子供だった。 瞳は、深海の底を思わせる、黒みがかった青。 10歳程度に見えるその顔立ちは、ぞっとするほど整っている。
(いや――この顔は、"俺"だ)
名前は、ノア。 それだけが、この新しい肉体に刻まれた唯一の記憶だった。
「あ、新しい子が来たんだ」
不意に背後から声をかけられ、俺は肩を跳ねさせた。 振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。 黒髪に黒い瞳。俺と同じくらいの年齢に見える。
「見たところ同い年だよね! 同居人ができて嬉しいな!」
少年は、この薄暗い牢獄には似つかわしくない満面の笑顔で歩み寄ってくる。 俺は一歩身を引き、鋭い視線で彼を牽制した。
「あ! 僕の名前はレイ!! 君の名前は?」
差し出された少年の手首にも、俺と同じ無機質な手錠がはめられている。 俺はその手を見つめたまま、低く掠れた声で答えた。
「……俺はノア」
「ノア、ね! いい名前だね!」
レイは俺の無愛想な態度を気にする様子もなく、満足げに頷いた。 俺は彼から目を逸らし、部屋を囲む冷たい石壁に視線を落とす。
「……なあ、教えてくれ。ここはどこなんだ?」
俺の問いに、レイは少しだけ首を傾げた。その動作がどこか不安を誘う。
「ここはどこなんだって聞いてるんだ。あの仮面の男たちは何なんだ?」
畳みかけるように問うと、レイは一瞬だけ真顔になり――そして、またあっけらかんと笑った。
「……さあ、僕もわかんないや!まあわからない者は仕方ないし...これから仲良くしようね!!」
その顔は笑っている筈なのにどこか歪んで見えた。
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