黄色い水仙の栞と、手を取らなかった私

風波野ナオ

始章 手のひらに刺さった思い出の栞


「……ッ!」


 手のひらに紙の角が刺さって、少し切れてしまった。

 黄色い水仙の栞。


 ほどこされた押し花は、三年前と少しも変わらない。

 心に刺さった思い出も、変わっていない。



 神戸異人館街のみはらし台。

 港町を見渡す小さな展望スポット。


 彼と来るはずだった場所に、私は一人で立っていた。


 切れた手から血がにじんでいる。

 春の日差しにかざしても、手はとても冷たかった。


 わかってる。

 あの日、彼の手を取らなかったから。




(第一章「拾う手と渡す手」に続く)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る