明日(あす)への歌
うさぎさん⭐︎
明日への歌
1
私はリーズン。ノスタルジア博士に造っていただいたロボットです。 私の夢は歌手になることです。博士が私に与えてくださった、とても大切な夢なんです。
♪♪♪
ノスタルジア博士の家系は、代々科学研発所に勤めている人ばかり。エリートなんです。博士も勿論そうです。私は、微力ながら、博士のへ<娘>として、身の周りのお世話をさせていただいたり、お疲れになった博士の体や心を癒し、博士が快適な生活を送れるよう、サポートさせていただいています。 私の年齢設定は、十五歳。平均的な結婚年齢が上がっているといわれる現在、三十一歳の博士に、十五歳の娘というのは、普通なら、ほとんど考えられないことでしょうか。
……博士はいつもどこか寂しそうな顔をしておいでです。でも、私が歌うと、博士はとても嬉しそうにしてくださいます。博士の目はいつだって優しいんです。私は博士が大好きです。それに、博士は歌がとてもお上手なんです。えぇ。私など足元にも及ばないくらいに──。博士は私の目標です。いつか、私も、博士みたいに歌えるようになりたい……。
博士と一緒に海辺の街にやってきました。
今日は、オーディションの日です。
「落ち着いて、リィ。いつもどおりに歌えば、きっと合格できるよ。君はとても歌が上手なんだ。自信を持って。きっと、歌手になれる」
私は、ロボットのくせに、人前に出ると、なぜか──、歌えなくなるんです。
「はい、博士……」
でも、私はやはり、たくさんの人を前にして、固まってしまいました。たくさんの人の目が怖い。懸命に歌う他の方々の姿が痛い。
──違う、チガウチガウ。これは違うの!なにかよくわからないけど違うんですっ!
「ごめんなさい、博士……」
もう何度口にした言葉なのでしょうか。 眼鏡の奥の、青緑の瞳を細めて、博士は私の肩に、優しく、手を置いてくださいました。 博士の砂色の髪が、音を立てるようにして風に流れています。スーツにネクタイ。博士の服装にはいつも、乱れたところがありません。
「気にすることはないよ。また、がんばればいいんだ」
博士はいつだってそういってくださいます……。
「そうだ、リィ。オーディション会場の売店でね、これを買ってみたんだ」
博士はそういって、下げていらした鞄から、何かを取り出しました。小さな紙袋に入っていたそれは、白い貝殻のペンダントでした。
「君の、アクアマリン色の瞳とよく合うと思うんだ」
「博士。ありがとうございます」
私はそれを首に下げてみました。博士が嬉しそうに微笑んでくださいます。
私は海を見つめています。砂浜に膝を立てて、ロングスカートを抱えて座り込んで。せっかく街に来たので、博士はお友だちに会いに行かれました。私のことも誘ってくださいましたが、私はその誘いを断ってしまいました。博士はむやみなことでは怒りません。優しくこういってくださいました。
「また海かい? 君は本当に海が好きだね。でも、君のボディは水に弱いから、気をつけるんだよ」
海は不思議です。すぐ近くにあるのに、決して私には触れることのできない世界━━。 魚たちは何を知っているのでしょう? 鴎(かもめ)たちは、何を思い、舞うのでしょうか…….。 海は歌っています。繰り返し繰り返し。寄せては返す波の歌。何を、訴えているのでしょう━━。
この海の向こう。そこには、大陸があるそうです。そこでは、たくさんの人々が、日々を生きているそうです。それは、一体、どんなところ━━? この小さな島国と、何が違うの? 空は? 海は? 風は? 星は? 鳥は? 動物は? 人は? 木々は? ━━そして、歌は? どう、違うのでしょうか……? 私は辺りを見回しました。どこまでも続く、透き通った海。砂浜は、陽光に弾けるようにきらめいています。潮風が、私の亜麻色の長い髪と踊っていました。
よかった。誰もいないようです。私は大きく息を吸い込むようにして、歌い始めました。
蹴飛ばしてしまった あの石は
黄金だったのではないだろうか
こぼれていった あの砂は
もう戻らないのだろうか
━━だめです。うまく歌えません………! 私はどうしてこんなに歌がへたなんだろう。 どうしたら、いいんだろう……。 風と波が、慰めるようにメロディーを奏でています。鳴も励ますように鳴いています。 私はもう一度、歌い始めました。
輝いていた あの時は
幻だったのではないか
すべて 夢だったのではないか
拍手が響きました。振り返ると、その人は、私の目の前で笑っていたのです。
「とてもすてきだったよ。君、歌手か何か?」
その人は、細く背の高い体に、少年のような顔。一度目にしたら忘れられないような、輝く海色の瞳を持っていました。年の頃は、二十一、二歳といったところでしょうか。
私は慌てました。博士以外の人に歌を聴かれることに、私は抵抗を感じるのです。 彼はそんな私に構わずに、私の横に腰を下ろしました。
「わ、私は、そんなんじゃ…...。私はただの、ロボットです」
「ロボット? へぇ、君みたいによくできたロボットは初めて見たな。まるで人間と変わらない」
............。そうでしょうか?確かに博士は天才です。私の外見は人間によく似ています。でも、私は歌手になるという夢すら果たせない。博士を喜ばせてあげられない。こんな中途半端な私よりも、一般に普及している、他の━━介護ロボットやレスキューロボット、パーソナルロボットなどの方が、遥かに優れていると思います。 「今の、<失われた黄金>だよね。結構古い歌だけどさ。好きなの?」
「は、博士がよく口ずさんでいる歌なんです」
「博士?」
「私を造ってくださった、ノスタルジア博士です」
「ふーん」
彼は空を見上げました。浜風に柔らかな茶の髪が揺れ動きます。彼の羽織った、白いヨットパーカーもはためいています。鴎たちが気持ちよさそうに飛んで行きます。 彼のその瞳は、どこか遠くを見据えています。確かな意志が感じられます。 彼は頬杖をつくと、楽しそうに海を見つめました。ああ。なんてすてきに笑うのでしょう━━。
彼の低く甘い歌声が、私の胸を振るわせました。
さぁ、行こう。あの海の向こうへ!
誰も知らない未来を求めに行こう。
風と海と眩しい太陽。
すべてが祝福している。
掴めないものなんて、何もないから。
少し照れたように、彼は笑いました。
「オレの好きな歌。<海の向こうの明日(あした)>っての。君みたいに、綺麗には歌えないけど」
私は何も言えませんでした。そういった彼が眩しすぎて。彼の歌は━━彼の歌う姿は、なんて美しいのでしょう。楽しそうなのでしよう。自に満ちているのでしょう。 ━━私とは、全然、違う……! 私は不思議な気持ちを感じていました。持て余していました。これは何?焦り? 不安? 憧れ? それとももっと暗い、マイナスの感情なのでしょうか━━。頭がショートしそうです。両手をいつのまにか、きつく握っていました。
今の歌はなに? この人は誰? そんなに、その歌が好きなの━━? 私? 私の好きな歌。<失われた黄金>? ━━違う。それはたぶん博士の好きな歌だ。
「君は大陸には行ったことがある?」
「……。いえ、私はこの島の外に出たことはありません」
「そうなのか。オレも、ないんだ。だからなのか、すごく憧れてるんだよ。この海を越えた場所。知らない世界。未知の人々。考えるだけで、眠れないほど、わくわくするんだ。そう思わない?」 この海の向こう━━? 海の向こうの国。そこはどんなところ? ……それは、私も思っていたことだ。
「この海は、この空は、繋がってるんだ。誰かへ。どこかへ。明日(あした)へ。━━勿論、この島だって、オレは大好きさ。この島にだって、知らないことや、すてきなことはたくさんある。それはわかってるんだ。でも━━オレは行ってみたいんだ。この海を漕ぎ出して、大陸まで。向こう側まで。どこまででも」
この島が好き?この島にあるのは、私にとっては、歌と、博士━━。
博士はとても優しいです。大好きです。歌は、私の夢です。博士がプログラムしてくれた、授けてくださった夢、ユメ、ユメ━━。
「君の夢はなに?」
彼が訊きました。私の夢。そんなの、決まっています。だけど、私は瞬間、その項目を検索できませんでした。何かのエラーでしょうか。忘れてしまったのです。その単語を。……長い時間をかけ、やっとこう言いました。
「…………<歌手>……それが、私の、夢」
そう━━そうだわ。歌手よ。こんな大事なこと忘れるなんてどうかしてるわ。
「へぇ、やっぱりそうなんだ? オレの夢はね。船乗りになること。なりたいんだ。そして、この海の向こうへ行ってみたいんだ。君はどうして歌手になりたいの?」
━━━━。
「はは、夢に理由なんかいらないか。君はきっと歌が好きなんだろうね? オレがこの海を好きなみたいに」
「…………私、私の夢は<歌手>になること。でも、それは博士がプログラムしたこと……。私の夢って……」
私って…………ナ ニ……?
「君、どうかした? 気分でも悪いの?」
私は笑いました。笑えたはずです。
「平気です。私は機械ですよ? そんなにヤワではありません。大丈夫」
でも、博士にメンテナンスしてもらうべきなのでしょうか……?
「ごめん、変な話につきあわせちゃって。つまんなかっただろう?」 「いいえ」私は訊きました。訊かなきゃいけない気がしました。
「名前、なんていうんですか?」
「え? オレ? ━━リバティ」
リバティ。
私はその名を頭の中にセープしました。絶対に消えないよう、プロテクトをかけて━━。
2
それから。私は博士と共に、博士の家へ戻りました。
博士はお仕事が忙しいながらも、仕事の後や休日に、私の歌の稽古をしてくださいます。博士の家は、この島の端。小さな村の一軒家です。ここから研究所までは距離があります。ですから、博土は研究所に泊まり込むことも多いのです。そしてそのまま、何日も帰られないこともあります。それでも博士は、緑のおいしいこの場所がお好きなのです。私はいつもここで博士の帰りを待っています。それが博士のお望みなのです。博士がいなくとも、私は歌の練習をかかしません。だって、そうすれば、博士は喜んでくださいます。少しでもうまくなって、今度のオーディションでは歌えるようにならなきゃ。 洗濯をし、掃除を終え、歌の自主練習をして、帰りの遅い博士のために、すぐに温めて食べられる物を作ります。栄養バランスを考えた物です。博士はお風呂がお好きなので、お風呂の用意もします。 博士は独身です。でも、この時代、この国などにおいて、それは珍しいことではありません。博士にはお仕事があります。他のことをする暇もないほどに。そんな博土の唯一の慰めが、歌、なのです。 博士のお帰りまでには、まだ少し時間がかかります。 どうしましょう? ━━歌、歌の練習をしなきゃ......。
私はこんなにちっぼけすぎて
はぁ...…。だめです、気分が乗りません。実はここのところ、こんなことが多いのです。
私は一体どうしたのでしょう……?
ドアを開けると、星空が広がっていました。
私は、家の外に出てみました。
星明かりが目に滲(し)みて、私でも、人間のように泣けそうな気がしました。
私はこんなにちっぽけすぎて
明日(あした)さえ見えません
━━リバティ。 あの日から、私はずっと、その各前をリピートしています。
輝く瞳を持った あの人のように
羽ばたくことはできないのでしょうか
━━リバティ。
リバティ。
彼は……、どうしてあんなふうに夢を語れるのでしょう。どうして、歌を好きだと、言い切れるのですか……?
「リィ。どうしたんだい、こんなところで」
「……博士」
「帰りが早くなってね。それにしても、今の歌はよかったね。<見えない明日(あした)>か。リィに合ってるかもね。今度はその歌をデータ化して送ってみよう。きっと審査に通るだろう。
後は、人前で歌えるようになれれば、問題はないんだけどな……」
「すみません」
「気にすることはない。きっと、できるよ。リィなら大丈夫。きっと夢を叶えられる。君は僕の自慢の娘だからね」
大丈夫。できる。━━博士はいつも、そうおっしゃいます……。
私はもう一度、きらめく星の海を見上げました。
━━ リバティ。あなたなら、この歌をどんなふうに歌いますか……?
3
また、オーディションのために、街にやってきました。オーディションの開催は明日です。博上はホテルでくつろがれています。でも、私は━━また、この海に来ています。 そう。リバティと出逢ったあの海です。
━━リバティ。リバティ。どこにいるの? 私、あなたに逢いたいの。教えて欲しいの。この胸を塞(ふさ)ぐ思いはなに? 私はどうすればいいの? どうしたら、あなたみたいになれるの━━⁈ リバティの姿を、私は見つけられませんでした。 彼はもう、あの海の向こうへ行ってしまったのでしょうか……?
目が、目が、たくさんの目が、私を見ています。オーディション。審査委員に、他の歌手志願の方々。公開審査を見に来た、観察たち。━━なんとかここまでぎ着けたものの、やっぱり、私、だめです。
博士、私━━。怖い。
リバティ。助けて。私、できない。なれない。あなたみたいになれない。博士が望むように、なれない!
目、目、目━━。 問いかけてきます。
見透かされてしまいます。
<どうしておまえはそこにいるんだ>
<平気な顔して>
<おまえは違うだろう。他の志願者たちと>
<彼らは本当に純粋で>
<一生懸命で>
<歌が好きで>
< なのにおまえはその中に混じって>
<さもそれが夢みたいな振りして>
<みんなを騙(だま)して>
<どうしてそこにいるんだ>
くどうしてそこにいるんだ>
「あ…………あ……」
ち、違う、私、歌わなきゃ、博士のために、歌わなきゃ。
<本当にそれがおまえの夢なのか>
━━ウタワナキャ。
『リィならきっとできるよ』
……ワタシハ……
『オレの好きな歌』
ウタ、ウ…………
『オレの夢はね。船乗りになること』
『君の夢は』
『なに?』
4
ワタシハ コワレタ。
壊れてしまった。与えられた使命(ゆめ)も果たせないなんて。
ううん。最初から壊れていたのかもしれない。 「リィ⁈」 博士の声を振り切って、私は会場を飛び出した。
「リィ⁈ どうしたんだ、リィ⁈」
波音が耳を打つ。限りない海が、目の前に立ちはだかっている。
━━リバティ。リバティ。どこにいるの⁈ どうして、いないのっ⁈ 私、あなたになりたいよぉ。
『行きたいんだ』
『海の向こうへ行きたいんだ』
私も行きたい。行きたいんだ……!
「リィ⁈」
博士が、私を羽交い締めにする。
「放して‼︎ 放してよっ‼︎ 海へ行きたいの‼︎ 海の向 こうへ行きたいの‼︎」
「リィ⁈ やめるんだ‼︎ 君は水に弱いんだ‼︎ 壊れて しまうよっ⁈」
「━━もう、壊れてるっ‼︎!」
「リィ……」
「博士はどうして、私に夢なんて与えたの⁈ どうして…….っ⁈ 私ってナニ⁈ 夢ってなんなの⁈ 私、もう、歌えない━━‼︎」
「リィ……うわっ⁈」
私は無理やり博士を突き飛ばし、海へ駆け出した。
いいんだ、壊れたって。もう、壊れてるんだから。彼になるんだ。彼に会いに行くんだ。それがだめなら、海の中で眠ろう。永遠に壊れてしまおう。それでも、最後に私は海に入れる。海の中を見ることができるんだから━━‼︎! 鴎が、私の視界をよぎった。
彼に見えた。
海に入る寸前、私はその白い鳥を追って振り返った。
博士がいた。
私の足は止まった。 博士は、私に突き飛ばされたせいで、砂浜に倒れて、肩にけがをしていた。
「リィ、リィ、だめだ……‼︎」
『リィ。君ならできるよ』 『気にしなくていいよ』
『君は僕の自慢の娘だからね』
━━博士はいつでも優しかったのに。
「博士、博士、ごめんなさい……っ‼︎」
私は博士のもとへ駆け戻った。
「博士、博士……っ‼︎」
「リィ、リィ、気にしなくていいんだよ。大したことない」
「すぐ、手当しなきゃ...…‼︎ ごめんなさい、ごめんなさい、私……、博士にけがさせるなんて……、ロボット失格だ……」
「気にしないで、リィ。君が無事なら、僕はそれでいいんだ」
博士の血は、赤くて、怖くて……。私はしていたスカーフを外して、止血をしました。
スカーフの下には、あの、博士に頂いた貝殻のペンダントが隠れていました。
「リィ、僕のほうこそ、ごめん……。君の気持ちを考えられなくて。考えようとしなくて。━━いや、僕は本当は気づいていたのかもしれない。見ない振りをしてたんだろうね……」
博士は大きく息を吐き出しました。
「……それは、僕が叶えられなかった夢なんだ」
鴎が頭上で鳴いています。風が、私たちを包んでいます。
私はただ、博士を見つめていました。
「僕の家は、みんな、研究所勤めだし……。それを断って、他の道を選ぶ気もなかったし。僕には歌の才能がなかったし……。なにより、根性がなかった」
「そんなことありません。博士の歌は、とても綺麗です。私、博士の歌が━━大好きなんです」
そうだ。私は歌が好きだ。寂しいけどとても温かな、博士の歌が、大好きだったんだ。だから私も博士みたいになりたくて……。
「ありがとう。僕もリィの歌が大好きだよ。 ━━人間は……いや、僕は勝手だね。叶えられなかった夢を、君に押しつけるなんてね…....。
いいよ。そのプログラムは消去する。君は自由にお生き」
5
汽苗が鳴り響きます。
リバティは、船乗り見習い━━というより、雑用係という形ですが、今日、自分の力で、夢を叶えて、大陸へと旅立っていきます。
「おめでとう。リバティ」
「ありがとう。リーズン」
私たちは、あれからあの海で再会しました。そして、私たちほとても親しくなりました。
「楽しみだなぁ。大陸って、どんなところなのかな。着いたら、ハガキ出すからな」 「うん。楽しみにしてる」 「リーズンもいつか大陸へ来ないか? 別に、船乗りじゃなくて、乗客としてでいいんだからさ」」
「うん。その時は、博士と一緒にね」
「この、ファザコン娘が⭐︎」
「へへー♪」
「……みやげ買ってくるからな」
「うん。博士のもね」
「まだ言うかコイツ!」
私たちは大きな声で笑い合います。
「━━リーズンの公演会に行けないのが、心残りだけどな」
そうです。私もついにオーディションに受かったのです。
そして、近々、公演会への出演が決まっているのです。
「大丈夫。私、がんばって、これからもっともっと公演会へ出られるようになるんだから! その時、リバティも聴きに来るといいよ」
「ああ。そうする。━━いつか、大陸へも歌いに行ったりしてな」
「この、大陸おたくが⭐︎」
「あはははは」
「━━ねぇ、リバティ。あの歌を歌って」
「あの歌?」
「私たちが初めて逢ったときに、あなたが歌ってくれた歌。私……あの歌も大好きよ」
さぁ、行こう。あの海の向こうへ!
誰も知らない未来を求めに行こう。
風と海と眩しい太陽。
すべてが祝福している。
掴めないものなんて、何もないから。
また、汽笛が鳴り響きます。 束の間のアンサンブルも、潤えてしまいました。 私たちは、しばらく見つめ合っていました。
「ねぇ、リバティ。あるよね? 大陸にも、この島にも。同じものが。変わらないものが」
「ああ。世界は繋がってるからな!」
彼の海色の瞳に、私が映っていました。
私の瞳にも、彼が映っていることでしょう。
私たちの瞳は、これから何を映していくのでしょうか。今と過去の大切な映像を記録して。明日へ未来へ、記録し続けて。
やがて、リバティが言葉を紡ぎました。
「じゃ━━、お互い、がんばろうな!」
「ええ!」
私は大きく笑い返しました。
リバティの乗った船を見送って、振り返ると、そこには博士がいらっしゃいます。いつもどおりに、日溜まりのような優しい眼差しをしておいでです。
「本当によかったのかい、リィ?」
「ええ。私が自分で選んだことです」
私たちは、腕を組んで家路につきます。なんとなく今日は、甘えてみたい気分なんです。 私の胸元で、白い貝殻のペンダントが、陽光を弾いて、きらめきます。 私たちは自然に、歌を━━大好きな歌を口ずさんでいました。
私はこんなにちっぽけすぎて
明日さえ見えません
輝く瞳を持った あの人のように
羽ばたくことはできないのでしょうか
蹴飛ばしてしまった あの石は
黄金だったのではないだろうか
こぼれていった あの砂は
もう戻らないのだろうか
輝いていた あの時は
幻だったのではないか
すべて 夢だったのではないか
明日(あす)を言じよう
たとえ今が 辛くとも
希望の歌を 歌い続けよう
心が壊れた日は 星空を見上げよう
輝きが きっと 君の心を慰めるだろう
遥かな海を眺めよう
潮騒が きっと
君の心を助ますだろう
━━違く、鴎の歌声が聴こえました。
♪♪♪
私はリーズン。ノスタルジア博士の娘です。
私の夢は、始まったばかりです。
明日(あす)への歌 うさぎさん⭐︎ @usagisantoka
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