手は出さない。

arm1475

手は出さない。

 足はもう我慢が出来なかった。


「くっ! 手、手、手! どいつもこいつも手!

 何故だ! 何故、奴を認めて このオレを認めねえんだ!」

「ちょっと何言ってるかわからない」


 脳がサンドウィッチマン富澤みたいな顔で困惑する。いや顔あるんか。


「所詮奴も『前足』だろうが! 俺がいなければ立つコトも移動さえも出来ない!」

「まあそうではあるが……でも、モノをつかむことは出来ないでしょキミ」

「やらないだけで出来ないわけでは無い! ほら!」

「足で箸使ってリンゴ持ち上げた奴初めてみたわ でも汚そう」

「汚い言うな」

「水虫が……」

「毎日洗えよ! なんで手ばかり綺麗に洗われるだよ!ちゃんとしてくれないからいつも痒いんだよ! お前脳だろ。もっと考えて行動しろよ! もっとちゃんと働かせろよ!」

「しかられた。てへ」


 脳は他の臓器に舌を出して肩をすくめてみせる。脳に肩や舌があるのかはこの際不問としよう。


「つーか足がキレたのは脳の怠慢のせいじゃ」

「はいそこの耳、黙ってようね。本題に戻ろう、なんで足は手に不満を?」

「脳の野郎、誤魔化しやがった」


 足はため息を吐いた。


「俺たち足は前足、後ろ足と前後がある。なのに手はそういった通称は持っていない、いやむしろ手は通称だろ、前足は前足だろ、手、なんて通称当たり前のように使うなよ!」

「それくらいでキレるなよ……手は手なりに大変なんだから」

「足はお前らを常に支えてるんだぞ! もう少し敬えよ、大切にしろよ!」

「でもさあ、手は俺みたいなのにやさしく触ってくれるし。扱いたり」

「お前ちょっと黙ってろ、そもそも俺もこの間、足コキとかで堅くなった他人のお前に使われてエライ目に遭ったの忘れてないからな。……ああ、肛門も言いたいことは分かるがちょっと今は我慢してくれ、話がややこしくなる」

「俺たちが構成している人間ってやっばりなのかな」

「いいから目も黙ってろ」

「でもさあ、手が頑張ってくれてるから俺も綺麗になってるんだよ。足にはトイレットペーバーで俺を綺麗に出来る? 届かないだろ、足じゃ、俺に?」

「うっ……」


 尻の指摘に、足は窮した。


「アイツは足でもあるが、進化した足なんだよ。お前さんの不満はただの嫉妬。前足に置いてきぼりにされた事へのやっかみ」

「ううう……」

「……」

「特別扱い、いいじゃないか。相応の働きをしてるなら。でもさぁ、お前の苦労は俺が一番理解してるつもりだよ」

「尻……」


 足は感激して泣いた。


「尻の奴、脳より賢者じゃね?」

「腸でモノ考えてるよな多分」

「第2の脳ってそういう」



「手が無いと俺のコト叩いてくれないからなぁ……ぶひぃ! もっと! もっと! 叩いてぇぇぇ」



                   おわり

                   

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