第4話 風竜との接触
迷宮の霧はますます濃く、視界はほとんど消えた。
リアンは短剣を握り、足元の感覚だけで一歩ずつ進む。
風の渦が通路を揺らし、壁は微かに光を帯びる。
迷宮全体が、まるで生きているかのように息づいていた。
「準備はいい?」
セリナが軽やかに舞い、風を巻き起こす。
「風竜はもうすぐよ。封印はまだ弱いけれど、
その力を感じるだけで迷宮は変わるわ」
リアンは深く息を吸い、覚悟を決めた。
「……わかった。行く」
通路の霧が突然裂け、巨大な空間が現れた。
中央には、風のように揺れる巨大な影。
それが――封印された風竜だった。
竜の体は半透明で、風の渦と同化している。
だがその瞳は鮮やかな青で、リアンをじっと見据えていた。
見るだけで胸が締め付けられるような圧倒的な存在感。
「これは……」
リアンは言葉を失った。
セリナも緊張の色を帯び、風を竜の周囲に集める。
「攻撃はしないで。まずは意思を通じるのよ」
風竜の目が微かに光り、部屋中の風が渦を巻く。
リアンは心を落ち着け、自分の思いを竜に送るように
静かに声を出さずに呼びかけた。
――俺は迷宮の謎を解きたい。
――この土地と精霊界の秘密を知りたい。
風竜は長い沈黙の後、体を一度大きく揺らした。
そして風の渦が静まり、竜の瞳に柔らかい光が宿る。
リアンは理解した。竜は試していたのだ。
心に邪念がある者には、この迷宮は通じない。
「素晴らしい……あなたの心は清らかだ」
セリナの声が風に混ざる。
「風竜が目覚めつつある。これから迷宮の真実が
少しずつ見えてくるわ」
リアンは息を整え、竜の周囲を歩く。
壁には古代の文字や、風竜の力によって刻まれた模様が
微かに浮かび上がっていた。
それはこの迷宮が、風竜と人間界を繋ぐ「門」の役割を持つ
という証のように見えた。
「迷宮はただの試練ではない。精霊界の知識を守るための場所」
セリナが囁く。
「風竜は封印されているけれど、迷宮を通して
人間の中でふさわしい者を選んでいるの」
リアンは短剣を握り直し、心の中で誓う。
「俺は、この迷宮の秘密を守るために進む。
風竜を信じて、最後まで諦めない」
その瞬間、風竜が低くうなり、巨大な翼で微かに風を巻き上げた。
霧の壁は光を帯び、迷宮の内部が微かに変化する。
通路が開き、新たな挑戦が待っていることを告げるように。
「さあ、リアン。次はさらに深い試練よ」
セリナが手を差し伸べる。
リアンは頷き、精霊の導きに従い、迷宮の奥へと歩みを進めた。
霧深き迷宮の奥には、まだ見ぬ秘密と危険が待つ。
だが、冒険者としての彼の心は、恐れよりも興奮に満ちていた。
風竜との接触は、リアンにとって新たな力と勇気の証だった。
そして迷宮の真の謎――人間界と精霊界を繋ぐ秘密――
それに向けた旅が、今、静かに動き出したのだった。
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