手の込んだ残り物

エリー.ファー

手の込んだ残り物

 あなたの住んでいた家に。

 まだ、世界が残っていました。

 正確には地球です。

 そう、あなたの手作りの地球です。

 つまるところは、レプリカですけれど。

 でも、そういうものでしょう。

 星なんて。

 そこに生命があって、文化があって。

 だから、何ってことでしょう。

 所詮は、奇跡の集合体だけれど、そこに価値を見出すかどうかは、個人に任されているわけで。

 ねぇ。

 だから、捨ててしまおうかと思っています。

 もしかしたら、誰かが勝手に捨ててしまうかもしれないけれど。

 どうすればいいのやら。

 昨日、お隣さんが、お手製のハーブティーを持って来てくれたので飲みました。最高のお味でした。香りは上等を突き抜けて、天国です。でも、それだけじゃ物足りなくて、少しだけ砂糖を入れました。

 とても良い時間でした。

 外に出したテーブルに並べられた、ティーカップもビスケットもクッキーもクラッカーも椅子もティースプーンもティーポットも。

 もしかしたら。

 全て幻だったかも。

 だって、そうでしょう。

 私が気付いていないだけで、この世界も、あなたが作り出したお手製の地球の中なのかもしれないわけで。

 その内、この意思も全て消えて、誰に確認されることもなく、寂しさも忘れて霧散していく。

 それが死ぬってこと。

 それが生きたってこと。

 それが何かがあったってこと。

 それが何もかもあったってこと。

 星は、記憶装置で、視認性の低い感情の受け皿なのかもしれない。

 ねぇ。

 もしかしたら。

 あなたがいなくなった理由は、全てそこに集約されているってこと。

 ねぇ。

 本当は、ここは星ではなくて、テーブルなの。

 いや。

 そんなまさかね。

 家の中に落ちていた言葉の端々の影響を受け過ぎて、妄想と現実の違いが分からなくなってしまったかも。

 ごめんなさい。

 でも。

 壊れてしまえばいいって、強く願う時がある。

 それは、決まってこんな日。

 そういう時は、頭を覆いたくなるし、海は平面から零れ落ちるような感覚になるし、すべては仕組まれてる感じがするの。

 でも、違うの。

 本当は、もっと複雑で、私だけじゃなくて、あなたにも理解できるようなレベルじゃなくて。

 だから。

 まだ星は終わっていない。

 全てが理解できたら、星は消えてなくなる。

 そういう呪いだから。

 あぁ。

 こういう考えが生まれちゃう所が、一番良くないのかも。

 だって、ほら。

 結局、こんな思想と付き合っている内は、世間から変な人扱いされるだけだから。

 ねぇ。

 何度も聞いて申し訳ないんだけれど。

 あの地球。

 どうするの。

 あなたが癌になって、余命宣告を受けて。

 あと五年しか生きられないって言われて。

 それから二人で泣いて。

 もう。

 三百と十八年経ったでしょう。

 ねぇ。

 だから、もう疲れちゃって。

 そろそろ、あなたが生きているとしても部屋の片づけをしなくちゃいけなくなったから。

 だから、あの星を、あの地球を、どうすればいいかしら。

 ねぇ、教えて。

 黙ってないで。

 どうか、教えて。

 神様に祈っても、言葉すら落ちてこないの。

 天啓なんて嘘。

 そんなものはどこにもない。

 もうすぐ三百と十九年になる。

 私の生きている星も人生もとっくに終わって。


 もうひとまわり。

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