第2話 凶暴だった


「ユーリ!そっち行ったぞ!」


オレたちは魔物討伐に来ていた。

領土付近にゴブリンが出現したということで団員達と倒していた。

ユーリのことを知ろうにもシューベルト領はゴブリンやキラーラビットが頻繁に出る。

それを倒しに行くのに忙しくてそれどころではなかった。


「多いな!」


剣で薙ぎ払っていく。

ユーリの背後にゴブリンが迫っていた。

目の前の敵に精一杯で気付いていないようだった。


確かこの後、ユーリは背中に大怪我を負ってしまう。

ジジジ、と壊れた映像のような記憶が流れた。


「ユーリ!」


オレはユーリとゴブリンの間に割って入って倒す。

剣を下ろすと腕に攻撃を受けていたのか血が滴る。

頭痛がした。

よろめくとユーリがオレの肩を抱く。

そのままゴブリンの群れを倒して行った。


ーー 何なんだ。これは。

さっきの映像が引き金になったのか?

オレは酷くなる頭痛に目を閉じた。




「ーーアルト様、今日もいい天気ですね」


微笑むユーリがいた。


「これ、アルト様に似合うと思って」


差し出して来たのは、オレが死ぬ前に付けていた髪紐だった。

綺麗なすみれ色だった。


はっ、と目を覚ます。


「アルト様しっかりして下さいっ!」


ユーリはゴブリンと交戦していた。

背中に大怪我を負って。


「……くそっ!」


オレはリュークから離れ、ゴブリンを倒して行った。

全て倒し終わった後、隊員達がユーリの背中の止血をしていた。


「ユーリの怪我はどうだ」


回復魔法を使っている団員に尋ねると、少し傷が深い、と言っていた。


「しかし、もう少しすればポーションが後方部隊から届くと思います」


「……そうか。ユーリのこと頼んだよ」


「アルト様もお怪我を」


「オレはあとでいい、ありがとう」


オレは1人、森の中を見つめる。

この後、何かあったはずだ。


ーー穴あきの記憶は1年前に戻ってきても役に立たないな。


オレはため息をつく。

結局、ゴブリンが出現しユーリが背中を怪我してしまった。

途中で記憶が蘇ったが、あれはなんだ。

いつの記憶なんだ。





討伐から帰ったオレはユーリの部屋にいた。

ポーションを使った後、傷は治ったものの具合が悪そうだった。休もうとしないユーリに業を煮やしたオレは部下に頼んで魔法で眠らせた。

オレはユーリの綺麗なすみれ色の髪に触れる。


あの笑顔、いつのなのだろう。

笑った顔など見たことがない。


首の裏に何か黒いモヤのようなものが見えた。

そっと服を捲ってみる。


「なんだ、これ」


それは刺青のように禍々しくユーリの身体中を巡り、まるで鼓動をしているようだった。そっと首筋にあるそれを指先でれてみるとオレが触れた所は消えていく。

がっ、といきなり手首を掴まれた。と思ったと同時にオレはベッドに倒れ込んでいた。

顔を上げるとあの時と同じような禍々しい赤色の瞳をしていた。


「ユー、リ」


嫌悪でやはりオレを見下ろしていた。


ーー殺される!


身を捩りユーリから抜け出そうとしたが両手首を掴まれて動けない。

力が尋常ではなかった。

終わった、と思った。


「……お前は、オレを殺したいくらい憎んでいるのか?」


最後ぐらい教えてくれ。


ユーリは答えなかった。


「おい!本当にいい加減にしろ!」


びくとも動じなかった。人の力ではない気がした。

ユーリの顔が近付いてくる。


「何をする!やめろっ」


首筋に生暖かいものが触れる。

オレはそれが何かわかって上擦った声が出た。


「ひっ……くそっ、おい!ユーリ、ユーリ!」


腹部に蹴りを入れると呻き声が聞こえた。

ユーリが体を上げるとネックレスが首元から垂れた。


「なんだ、その色は……」


錆びたチェーンの先には、どす黒い魔法石だった。

記憶では真っさらな空のような輝く魔法石だったはず。


「ユーリ、これはーーーっ!」


ユーリの足がオレの足の間に入ってきた。

身を捩り顔を上げればにやり、と笑いオレの首筋を噛んだ。


「いっーーたっ!!」


甘噛みでもないそれはオレの首の肉を食いちぎるのでは、と思うほどに強烈な痛みが襲いかかる。

苦痛に歪んでいるとその場所から口を離し舐められる。


「……まるで獣だ」


手首を一括りにされるとシャツのボタンを引き裂かれた。

抵抗をしても動くことない手首は一括りにされる。蹴り上げても良かったがまた痛いのはたまったもんじゃなかった。

オレは諦めてユーリのされるがまま夜を共にした。

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