第7話 約束の光
「あれ、ユーリさん。こんな時間にどうしたんですか?」
夜も更け、夜勤帯の団員が門の前で立っていた。
「いや、ちょっと気になってね。みんな装備を整ええ置いた方がいいよ」
「なんでてますか?こんなに静かな夜なのに」
「いいから、準備しなさい」
「は、はい!」
そろそろ来る時間だ。奴らが。
高台にいる団員が何かを見つけたようだ。
「すごい数のゴブリンです!もうすぐ近くまで来ています!」
私は魔法を打ち込む。何体かのゴブリンは吹き飛んだが向こうは大したことがなさそうだった。
「副団長、すごいな!おい、みんなを起こせ」
警報音が鳴り響く。
門に魔物が近付いた時に鳴る音だ。
アルト様が来るまでに少しは減らせるだろうか。私は剣を抜き、魔法を繰り出しながらゴブリン達を減らしていく。
「あぎゃぎゃっ!」
体を捻り、剣を振るえば周囲のゴブリンは一掃されていく。
「悪い、遅くなった!」
近くでアルト様の声が聞こえたと同時に凄まじい速さでゴブリン達が倒されていく。
私も強くなったがそれを上回る強さをアルト様は持っていた。
現にアルト様が来たことで団員達が安堵し、士気がみるみる上がっていく。
「さすがアルト様だ」
黒い髪を靡かせて、倒していく姿はいつ見ても美しかった。
朝日が昇る前に終わった。門の前はゴブリン達の死骸で溢れ返っていた。
もう見慣れた光景を尻目にアルト様の元へ行く。
アルト様は森を見ていた。きっと気付いているのかもしれない。
「アルト様、巣があるかもしれません」
彼はやはり分かっているようだった。他の団員達に一時的に休みを与え、私たちは高台に上りゴブリンの巣がある場所を確認する。
森の手前にある洞窟でゴブリンの動きが見える。しかし、どこか妙だった。前の時より統率がとれているような動きをしていた。
「今日、逃がすことなくだいぶ消せた気がするんだよなぁ。巣を潰して置かないとまた来るかもな」
「しかし、もう少し炙り出さないと大変かもしれませんね。明日も夜襲をかけて来るでしょう。出てきたところで別の部隊が洞窟に行くのはどうでしょう」
三日三晩、襲ってきた彼らはまだまだ炙り出しがいがあるくらいいる。明日はもっと来るだろう。だが、先程の違和感が捨てきれない。何かゴブリン達に変化が起きている気がした。
そして翌日の夜。遠くからぞろぞろとゴブリン達の姿が見えた。
「アレン、洞窟の中に入って危険だと感じたらすぐ出て来なさい。死んではいけないよ、絶対に」
「はい!」
別動部隊の隊長となったアレンに念を押す。何かあったらきっとアルト様が悲しむ。
「では行きなさい。気を付けろよ」
アレンの後ろ姿を見送り、弓部隊と魔法部隊に攻撃を開始させる。
私はアルト様の横に行く。彼は絶対に先頭に立ってしまうから。私はそれを助ける。貴方が死なないように。
しかし、それでも驚くようなことが起きてしまう。ゴブリンの数が減って来るとアルト様は別動部隊が心配だと1人独断で洞窟に向かってしまった。
「早く終わらせなければ!」
私の知らない所で死なないで。
ゴブリン達が私の圧に怖気付くのを感じる。
「君達が早く死なないと困るんだよ。早くアルト様のところに行かなきゃ行けないんだ」
ゴブリンを次々と倒していく。キラーラビットでアルト様を亡くしてから私は変わった。早く強く、確実に。
「あの人、やっぱやばい人だよ」
団員達の私を恐れる声が聞こえる。戦っている年数が違うのだから当たり前だと思う。
「ふぅ」
剣を強く振り払うと付着していた血が地面に飛ぶ。
ゴブリンの死骸も地面に転がっていた。
「回復魔法が使える人はポーションを持って私に付いて来て下さい」
私の呼び掛けに団員達が素早く動く。
すると、空に光が浮かび上がり弾ける。
「……あれは」
団員を連れて私は全速力で洞窟に向かって走り始める。
あれは昔、私がアルト様に教えた緊急事態の時などに使って欲しくて教えた魔法だった。
まさか覚えていてくれるとは思わなかった。アルト様が危険な状態だと分かっているのに、嬉しくて笑ってしまう。
洞窟に到着すると別動部隊の団員達が倒れていた。死んでしまったのか、と首筋に手をやる。どくん、どくん、と脈が打っていた。どうやら他の団員達も生きているようで回復魔法を使える団員達が次々と魔法をかけ始めていた。
私は奥にいるであろうアルト様に向かって走る。
話し声が聞こえた。
「アルト様!」
アレンもボロボロだったがアルト様の方が酷かった。腹部からの出血が多いようだった。しかし、見た目に反してアルト様は余裕そうな表情をしていた。私はポーションを渡しつつ、腹部に回復魔法をかけていった。
「立てますか?」
「……ああ、アレン。手を貸してくれる?」
アルト様は私の手を取らなかった。いや、それで良かったのだ。今触れられたら呪いが発動してしまうかもしれなかったから。触れられなくて本当に良かった。私は少し気を抜いてしまったのかもしれない。
周囲を見渡すとホブゴブリンがいた。前まではいなかった。統率がとれていたのも納得だった。
アルト様はアレンと話をしていた。
その瞳は埋もれた宝石を見つけたようなキラキラしていた。
じりじりと嫉妬の炎が胸を焦がす。
嫌な予感がした。
そして、その嫌な予感は当たってしまった。アレンは今回の功績で副隊長に任命されたのだった。
それともう1つ、副団長となったアレンがアルト様を起こしに来ていた。
私だけの仕事だったのに。
視界が真っ赤になってしまいそうだった。どうにかして落ち着かせてみたものの、その晩、私はアルト様の部屋に行ったようだった。
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