第1話 貴方という道標
「ユーリ、お前はやっぱり剣の才能があるな!」
「アルト様にそういって頂けて私はすごく嬉しいですよ」
15歳になった私は幼い頃に出会ったアルト様を追いかけてシューベルト騎士団に入隊した。
訓練場でアルト様と剣を交える。
火花が散り、高音の音が耳に響く。
彼は私の光だ。
友に祖母、両方亡くして悲しみの中にいた時、彼はずっと傍らにいてくれた。そして、騎士団に来い、と道標までくれたのだ。
20歳になると彼は必然的にシューベルト家次男として団長を引き継ぐことが決定している。それまでに私は強くならなくてはならなかった。
「アルト様は魔法もお上手ですね」
彼はとてつもない才能を持っていた。剣を持ち立ち向かってくるのに魔法まで繰り出してくる。王都の学園に行った方がいいのでは、と過去に聞いた事あるが、彼は兄が学園に通っているからと行かなかった。家庭教師を呼んで勉学を励み、独学で魔法を学んでいった。
訓練を終え、怪我したアルト様のキズを回復魔法で治療する。
「回復魔法いいなぁ」
アルト様は羨ましそうに回復魔法を見つめていた。
私は戦場で怪我したアルト様を治したいがためにこの魔法を覚えた。
「貴方のために覚えましたから」
「じゃぁさ、オレが団長になったら絶対に副団長になれよ!そしたらずっと側にいられるぞ!」
ああ、彼はまた私に道標をくれる、
「分かりました。必ず、貴方の横に立ってみせます!」
アルト様は20歳に成られた。
「本日からシューベルト領騎士団、団長に 就任したアルト・シューベルトだ。まだオレは未熟者だ。間違えることもあるかもしれない。ただ、オレはお前たちを死なせない!よろしく頼む!」
私はまだアルト様の横にいない。
まだ下から貴方を見上げるだけのまま。
ーー 悔しい。
彼の横で楽しそうに会話をする副団長が。早く私がそこへ行きたい。
私は死に物狂いに魔物を倒した。来る日も来る日も魔物を倒した。
「副団長が負傷したぞ!」
ゴブリンを仕留め終わった後、耳に入り込んできた声に私は歓喜した。副団長の席が空くかもしれない、と。
「おい、大丈夫か!」
アルト様が悲しそうに苦しそうに駆け寄る。副団長はどうやら片足を失った様だ。
「……すまない」
瞳に涙を溜めて膝を付いて副団長に謝っていた。
私ならそんな顔させない。
目の前のゴブリンを薙ぎ払う。
血しぶきが付いた。
「アルト様、待ってて下さい」
そして副団長が怪我で退任した。
私が副団長になった。アルト様から打診があった、と聞かされた。
部屋をノックする。副団長として服を身にまとい初めてこの部屋を訪れる。中から「どうぞ」と声が聞こえた。
中に入ると満面な笑みをしたアルト様がいた。
「遅いぞ、待ってたんだからな」
「お待たせしてすみません」
やっと貴方のお傍に来られた。
握手を交わすと右の腰あたりがズキンっと痛みが走った。
「……?どうした、ユーリ?」
「あ、いや、何でもないです。それより、私から1つお願いがあるのですが」
「なんだ、言ってみろ」
「その、アルト様の身の回りの世話をしたいです。お傍にずっといたいんです」
腰の痛みが酷くなる。
この痛みはなんだ?
私は初めて感じる痛みに謎を持ちながら、ずっと思っていた夢を願いでた。
「なんだよ、それ。なんか面白いからやってもらおうかな。じゃぁ、明日からオレの身の回りの世話、頼んだぞ!朝弱いから起こしにきて」
「はい、もちろんです」
ズキズキと何かに侵食されるような痛みが強くなる。
部屋に帰り、姿見を確認する。
「なんだ、これはっ」
あの日、友から刻まれた魔法陣が赤く血の滲んだようになっていた。まるで刃物で刻まれたような印に変わっていた。そしてそこから黒いモヤが身体中を巡っているようだった。
手でモヤを取ろうにも空を切るだけだった。
私の体に何が起こっている?
せっかく、アルト様の横に立てたというのに。
しかし、腰の痛みはいつの間にか消えていた。だからこそ、この刻まれた印を忘れていた。
そして3年という年月が経ったある日、私は思い知らされる。
友が私に何を刻んだのかをーーー。
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