死に戻り騎士の願い
湯川岳
プロローグ
シューズベルト領の少し離れたところに僕の村があった。
塀で守らていないのに魔物はほとんど来ないため、穏やかな毎日が続いていた。
「ごはん持ってきたよ」
真っ黒で赤い瞳を持った魔物の前に家からこっそりと持ってきた食材を置く。
薪となる木を探しに行った時に彼を見つけた。最初は怖かったけれど、とても優しかった。
空き家に連れて行き、僕だけが知っている友となった。そう思っているのは僕だけかもしれないけれど、それでも良かった。
今日もカゴいっぱいに積んだ食べ物を持っていく。
「誰にも見つからなかったよ!」
「……今日も来たのか」
「僕たち友達じゃん!」
「ああ、そうだなお前は初めての人間の友達だ」
僕達は友と言い合い、色んな話をした。
美しい毛並みに寄りかかり、夜空を共に見上げた。
時々、赤い瞳が寂しそうな顔をする時があった。
「帰りたいの?」
「もちろんだ、俺には大切な番がいる。子供もそろそろ生まれそうなんだ」
「番ってなぁに?」
「愛している相手のことだよ」
「ふーん、僕にもいつかできるかな?」
「……さぁな」
彼は鼻で笑っていた。
そんな隠し事は大人には通用する訳なかった。僕だけの秘密は僕のせいで終わりが来てしまった。
僕の隣に住む叔父さんに彼が見つかってしまった。きっと母が空き家によく行くことを心配して相談したのかもしれない。
「ユーリ、お前は離れていなさい」
「やめてよ!叔父さん!」
騎士団によって囲まれていた。
彼は僕に気づいた。
「騙したのか、お前」
「違うよ!僕は何もしていない」
「やっぱり人間は殺すべきだった」
赤い瞳が僕を睨み、背中から沢山の黒いモヤを出した。騎士団の間をすり抜けて彼は僕に噛み付いた。
腰に凄まじい焼けるような痛みが走った。
「ああああっ!痛いっ!痛いよ!」
「一生苦しむがいい。その呪いは俺からのプレゼントだ」
そう言って彼は僕の前で殺された。
血しぶきが顔にかかる。
彼は笑っていた。
僕はぼっかり穴が空いてしまった。大切な友を失ってしまった。
「いいかい、お前はきっといつかその呪いで苦しむ時が必ず来るよ。これは私からのプレゼントだよ」
「おばあちゃん、これなあに?」
「……10回。10回だけ願いを叶えてくれるよ。大事に使うんだよ。後悔しないために」
「うん、わかった」
「願いには対価が必ず必要となるよ。大きければ大きいほど、対価は大きくなるよ。気をつけて使うんだよ」
そう言って僕にネックレスを渡したおばあちゃんはその1週間後、冷たくなっていた。
たくさん、泣いた。友を失い、大好きだったおばあちゃんまで失った。
これは全部自分が招いたことだって薄らだけど分かってしまった。
そんな暗い過去を持っている僕を見つけてくれた光がいた。
ーーーアルト様だった。
「アルト様!」
僕はアルト様に向かって走り出す。
この後、また暗い道を歩き続けることになるとは知らない。
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