こんな【いっすんぼうし】はイヤだ。

レッドハーブ

こんな【いっすんぼうし】はイヤだ。

むかしむかしのおはなしです。

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。二人には子どもがいませんでした。


「子どもが欲しいですねぇ」

「よし!わしが都にいって婚活を」

「アホか!」


ある日のこと……

二人は小さい赤ん坊を拾いました。


「捨て子かな? かわいそうに……」


その赤ん坊は一寸いっすん(約3cm)くらいしかなかったので、一寸法師いっすんぼうしと名付けて育てることにしました。子どもは元気に育ちましたが、体はずっと小さいままでした。


そして月日は流れ……


一寸法師が十五歳になったある日、都へ出たいと言い出しました。


「不純な動機じゃなかろうな?」

「いえ! わたしはただ見聞けんぶんを深め、立派な人になって女の子にモテたくて」

「それが不純ていうんだよね……」


いろんな意味で心配でしたが、二人は最終的に一寸法師の気持ちを尊重しました。ばりの刀と麦わらのさやを持ち、お椀の舟に箸のかいで川を下り、都へ旅立ちました。


「よいか?美人の嫁さんをたくさん連れて帰ってくるのじゃぞ!」

「はい! いってきます!」

「ダメだ、この二人……」


一寸法師はオールをこぎ続けました。


「こ〜の船〜を こ〜いでゆけぇ〜♪

お〜のれの手で こ〜いでゆけぇ〜♪」


元気に歌っていると、なんとか都へ辿り着きました。その都で一番立派な屋敷に行き雇ってくれと頼むと、屋敷の主人は一寸法師を姫様の家来として雇うことにしました。


それから何年かたったある日のこと……。姫様のおともをしている帰り道、突然二匹の鬼が現れました。目的は姫様をさらうこと……。一寸法師は刀を抜いて立ち向かいました。


「僕が相手だ!」

「腹の足しにもならんなぁ!」


鬼は一寸法師をひょいとつまみ、一口で飲みこんでしまいました。


「う、わあぁぁぁぁ!」

「はっはっは! あとはお姫様だけ……ん? い、いたい! 腹がいたい!」


一寸法師は鬼のお腹の中で暴れまわり、たちまち鬼を降参させてしまいました。


そして、一寸法師はお腹から飛び出すと、もう一人の鬼も刀を使い、秒で降参させてしまいました。二人の鬼は、なんでも願いが叶う【打ち出の小槌こづち】という宝物を置いて逃げて行きました。


その後、一寸法師は打ち出の小槌を使って大きく立派な体になり、姫様の婿になりました。


めでたし、めでたし!

……とはなりませんでした。


一寸法師は思いました。


(待てよ?この小槌でアソコを叩けば……)


一寸法師は小槌で自分の股間を軽くたたくと、『マ』ジで『ダ』ンディーな『お』いなりさんが手に入りました。


(マダオだ! マダオになった……!)


しかもその後の研究により、念じながら小槌を振ると、それが叶うということが判明しました。


(なんつー万能アイテムだ……!)


お姫様の婿という『肩書き』……!

打ち出の小槌という『経済力』……!

そして馬並みになった『マダオ』……!


(僕はすべてを手に入れたんだぁ!)


それからというもの、一寸法師は街でいろんな女性と恋愛をしました。本人にとっては毎日がバラ色でした。


(夢が……夢がかなったぞぉ!!)


このことはお姫様の耳にも入りました。

あきれたお姫様は夜な夜な部屋へ忍び込みみ、小槌を奪い取りました。


「いっすんぼうしさん……」

「姫様!? もしかして……怒ってる?」

「あたりまえよ!」


姫様はユラ〜っと一寸法師に近づきます。


「まま、まってくれ!打ち出の小槌で2人の冷めきった愛を大きく……」

「あなたに愛情は欠片かけらも残っていません。ないものをどうやって大きくするというの?」

「あわわわわ……!」

「せっかくの小槌を民のために使わず、私利私欲のために……離婚です!」


姫様は小槌を大きく振りかぶり……


そして……


BAKKOOOOOON!!


フルスイングが見事に決まり、一寸法師は体がありのように小さくなりやがて山の向こうへ飛んでいきました。


「さようなら……

『ま』るで

『ダ』メな

『お』っと……。

略して『マダオ』」


次の日から、姫様は恋愛相談部屋を設けました。自分の身体に自信がもてない人達の相談にのることにしたのです。


「あの人が巨乳好きで……」

「オレはアレの大きさが一寸法師で……」

「安産型がいいって……」

「好きな人が貧乳派で……」

「胸板を厚くしたいんです……」

「背が低いのがコンプレックスで……」


コンプレックスを抱えた人たちの身体をちょんちょん小突いて、悩みを解消してあげました。その結果、自分に自信がついた男女が増え、恋愛に積極的になっていきました。


女性のコンプレックスを小さく……

男性の自尊心プライドを大きくしてあげました。


その結果……


都は恋愛と経済が活性化していきました。今まで以上に栄えていったのです。


しばらくして、故郷のおじいさんとおばあさんが都へ駆けつけ、スライディング土下座をしました。


「姫様、すみませんでした!」

「うちのバカ息子が!」

「もう、気にしてないですよ」


打ち出の小槌による経済の活性化、そして少子化も解決した姫様は、おじいさんとおばあさんは追い出さず、都で幸せに暮らしましたとさ。

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