樹木の手

千猫怪談

第一話 【噂】

血を吸う『樹木子じゅぼっこ』の怪


県内のY山には、「樹木子」という妖怪が住まうと古くから噂されている。


樹木子とは、かつて古戦場や処刑場の跡地に根を張った樹木が、地中に染み込んだ血を長年吸い続けた結果、妖怪化したものとされている。

幹は異様に膨らみ、枝は管のようにねじれ、まるで呼吸をしているかのようにゆらめく。

人が近づくと、その枝が生き物のように伸び、獲物に巻きついて血を吸うと言われている。


吸われた者の遺体には外傷がなく、ただ皮膚が白く乾ききっているのが特徴で、地元では「樹木子に喰われた」として恐れられてきた。

そのため、樹木子の立つ場所は季節を問わず青々とした葉を茂らせており、他の木が枯れても、その木だけは異様に瑞々しい姿を保っているという。

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