仮面

暇つぶし高校生

第1話

3027.6月14日今日のニュースをお伝えします。

壁に映し出されるホログラムにてニュースが聞こえてくる。

今週のトレンドフェイスは鼻は高めで、目は切れ長、薄い唇となっております。みなさんよいフェイスメイクライフを。

僕はいつもの通りニュースを見終え、家を出た。

外に出ると今週のトレンドを捉えている人物が既に何人か居るようで、羨ましく思いながらもいつも通り、カフェへ出勤するのでした。

僕は出勤したらまず、トイレへ行くことにしている。今日も同じようにトイレへ向かった。

トイレでは鏡に向かい、眼球を取り外し、鼻を取り、もう一つの手には全く違う形の鼻筋が鋭く通った鼻が握られていました。

近年では日常的な光景です。

トイレから出た僕はいつも通り、キッチンへ立ち店長と挨拶をかわす。

店長の顔はすでにトレンドに則っていた。

僕はそのことについて雑談を始めた。

店長早速今週のトレンド捉えてますね。羨ましいですよ。

すると店長はこう言う

昨今トレンドを捉えてないとダサいしね、君は去年から1回も変えてないようだけど、どうしたの?お給料足りないの?増やそうか?

と僕に憐れみの言葉を投げかけて来てくださりました。

僕はそれに対し、最近ほしいよ新型ホログラムテレビがあるのでそれに向けて貯金をしているんです。周りからは異質な目で見られますが、もう1年も経つとなれますよ。

店長は口角をにやりと上げ笑いました。

新型ホログラムね、それなら確かに溜めないとね。

このような会話を続けていると、新しく1人の女性のお客様がご来店しました。

いらっしゃいませといつも通り言った後、僕は彼女を席へご案内します。

ごゆっくりどうぞと言うのと同時に僕は顔を上げると、驚く事に彼女の顔は今までで見たことがない顔をしていたのだ。

僕はあまりにも不思議な光景だったので感情を表情に出してしまいました。

すると、彼女は慣れたように冷たく、アイスコーヒー1つお願いしますと言うので、僕ははい承りましたと、キッチンへ戻りました。

キッチンへ戻るやいなや店長は僕に話しかけてきます。

あそこの席のお客様、ほんとうに見たことない感じの顔だよね?あれどこ製のパーツなんだろ、独特だよねと。

僕はそうですよねと店長に共感しました。

僕は彼女の席までアイスコーヒーを持っていき、静かにテーブルへ置きます。

そうすると彼女は細い声でありがとうございますと言いました。

僕は彼女のその見たことはないが、決して醜くはなく、麗しいその顔に少し心を惹かれてしまいました。

今日以降彼女は毎日僕の働いているカフェに赴くようになりました。

僕はそれが嬉しく、彼女を知る機会に出来ると楽しみな時間になりました。

僕はある日彼女に話しかけてみました。

いつもここ来てくれてますよね。今はお仕事って何をされているのでしょうか?

彼女は少し驚きの表情を浮かべ答えました。

日雇いで働いていて、安定した職に就けていません。

僕は彼女のその境遇に対し失望の感情は一切となく、話を続けました。

ご住まいはこの辺りですか?

彼女はどこか悲しそうな表情を浮かべた後に答えます。

ええ、このあたりに住んでいます。住んでいると言っても、あのどんがらアパートのあたりなんですけどねと。

その言葉を聞き嫌な思い出を思い返した。

実は僕も昔そこに親と暮らしていたのでそこの状況はよくわかるのだ。近年のこの進化に見合わないボロボロで隣の音は丸聞こえで、ネズミは当たり前、悪臭は付き物のような場所なのだ。

そこでの暮らしは地獄そのもので、外を歩けば借金取りの恐喝がよく耳にはいる。

お前さっさと払わねぇと「鼻」いくぞ?

この鼻いくぞという意味のわからない会話の意味はその頃親に教えてもらい、僕は顔が青ざめたのをよく覚えている。実はフェイスメイクで使用されるパーツは、人間の顔のパーツで作られているのだという。そこで借金取りは借金を返しきれない人間を拉致し、顔を売って払わせるのだ。

彼女に対し僕はこういいました。

実は僕も昔そこのあたりに住んでいたんですよ。住んでいたからこそ分かるのですが、あそこは相当危険な場所ですから、何かあったらまたここに来て気軽に相談してくださいね。

すると彼女はいつもの冷淡な言い方ではなく少し嬉しそうに

はい

と答えるのでした。その日はこの会話が最後でした。

その後日彼女はいつも通りカフェへ来てくれました。そして僕は彼女のアイスコーヒーを持っていったついでに話しかけるのです。

今度、もし都合がよい日があればここ以外にもいいカフェを知っているので一緒に行きませんか?と彼女を誘うのです。

彼女の口角が少し上がり

喜んで

と僕の誘いを受け入れてくれたのです。

その後日僕たちは少しレトロな雰囲気のカフェへ赴きました。

そこで僕と彼女は他愛もない話をし、お互いに心の距離をすこしずつ縮め合うのでした。

その中で彼女は自身の境遇について話してくれました。

私の家族は貧乏で、1日のご飯を食べることすら困難な程でした。そんな中私の母親は父親に秘密にしながらほかの男性と交際をし、家を出ていったのです。そして私たち家族に家計の限界が訪れ、父親は私を施設へ送る決断をしたのです。その際の父親の顔は今でも鮮明に思い出せます。悲しみの中に申し訳なさがありました。

私は施設を出た後仕事を探したのですが、私はお金がなく生まれてから一度もフェイスメイクをしたことがないのでトレンドでも美しくもない私の顔を見たら、私をどこの会社も受け入れてくれませんでした。私はそれでも働くしかなく、日雇いで日々仕事を探しながら生きていくしかできませんでした。

私にもっとお金がありさえすれば顔をすぐ直し、もっと良いところへ働けに行けるのに、

そう彼女が言葉を詰まらせ、瞳を潤ませるのです。

僕はただそれを見守ることしかできませんでした。

僕は彼女にその事を伝えてくれた事への感謝を伝えた後、店を出て別れました。

僕は家に帰った後彼女について考えを巡らせていました。

彼女はああ言っていたが僕は彼女の顔が全く美しくないなんて思わない、彼女の顔はとても自然であり、美しい。僕はあの顔が好きでたまらないのだ。

その後彼女の心の部分を思います。

彼女の心は清らかで、優しいのだ。今日の話のなかでも、彼女の心の美しさに惹かれる時が何度もあった。

僕は彼女の全てが好きなんだ。

こんな顔が仮面として扱われるこの世界で僕は君のすべてに今恋をしているんだと、1人夜に思い更けるのでした。

後日、僕は彼女を僕のお気に入りの場所である河川敷のベンチに誘いました。彼女は見たら分かるほど緊張している僕に何を言われるのだろうかと、楽しみにしているように見えます。

そして僕は言うのです。

あなたを愛しています。君の顔も心も仕草も、君の全てに恋をしました。僕と付き合ってくれませんか?

彼女は目に涙を溜め

はい

と僕を抱きしめるのでした。

その後僕は同棲について話を持ちかけました。

僕の家はタワーマンションや、高級ホテルのように綺羅びやかではないけども、悪くない生活は出来るんだ、だからさ、僕と一緒に暮らさないか?と彼女に伝えると、

彼女は

是非

と嬉しそうに言った後に、今日は私の家で荷物をまとめるから明日あなたのカフェに荷物を持った状態で行くね。

と彼女は照れくさそうに言いました。

僕は、分かったよ、気をつけてね。と言い2人は帰路につくのでした。

そして待ちに待った後日僕はカフェで彼女が来るのを楽しみに待っていました。

ですがおかしいのです。彼女がいつもくる夕暮れ時に来ないのです。

僕は不思議に思い、仕事が終わった後彼女の家へ行きました。

家のドアにノックをし、ドアノブを回そうとすると鍵が閉まっていないのです。

困惑が残る中彼女の家へ入ると、彼女は床に座り込み、顔をうつむけ、泣いていました。

それはそれは嗚咽するように泣いていました。

僕は急に入ってごめんね、どうしたの?と彼女に問います。

すると彼女は震える声で、私の借金はもう取り返しが付かなくなったようで、昨日の夜、借金取りの方達が来て、私を車に乗せ、私は顔を全て取られてしまったのです。もう私だと分かる片鱗はないのです。あなたが好きになってくれたあの顔はもう無いのです。そう彼女は言うと、彼女は激しく泣き出しました。

僕はそれを聞いてこの世界の残酷さを恨むと同時に、彼女に伝えたい気持ちが心に強く浮かびました。

そして僕は彼女に伝えるのです。

僕は君の顔だけを好きになったわけじゃないんだ、僕は君の全てを愛しているのさ、君の顔が無くなっても君の心、君の命はまだ燃えているじゃないか、僕は顔なんてただの1つのその人を表す仮面でしかないと思うんだ、そんな表面上の情報でしかない仮面が消えたところで僕の愛は消えないんだ、君を愛してるんだよ。

彼女はそれを聞くと静かに僕をぎゅっと抱きしめるのでした。冷たいはずのその部屋はその瞬間この世界のどこよりも温かく感じました。


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