9 で、どうやって連れ戻すの? え? わからない?

「それで、モイラ。どうやって、その子を連れ戻すの?」

 そうだ、私の母親は普通に出来た事なのかもしれないが、私は大神官とやらの力を発揮できない。

 私の高い戦闘能力は、その大神官の力の一部を引き出している為の様な事を親方様は言われていたが。


「はい。リリィ様。大変申し上げにくい事なのですが、それは私もにわかりません」

「え? わかんないの?」

「大神官のお力を使っての事なので。具体的にどうやってなどは、私達神官にはわからないのです」

 とモイラ。


 ちょっと、困ったことになったな。


「それでは、連れてこれないじゃん」

「そうですね。困りました」

 とモイラは平然とした顔で言う。

 私は、モイラと初めて出会った、あの時の感情を思い出していた。


「プレアは、どのようにして転移していたのだ?」

 親方様が、モイラに尋ねた。


「はい、リーゲンダ様。いつもプレア様は、行く先をイメージして転移しておりました」

「では、行ったことのある場所なら転移できたのだな?」

「はい。恐らくは」

「でも、””という所は、場所じゃないでしょ?」

 私が突っ込む。

「はい。この世界での場所では無いかと思います」

「う――ん」

 私は、頭を抱える。


「プレアは、転移の力を使って閉じ込めたのだな?」

 親方様が尋ねられる

「はい、リーゲンダ様。その通りでございます。転移の力を使っておりました」

「……」

 親方様は、しばし沈黙された。

 そして、私にこう言った。

「リリィよ。まずは、転移の力を習得せよ」

「え? ですが、私は、大神官の力など普通に使えません」

 そうだ。

 親方様も、それは知っているはずだ。

「リリィよ。私は、お前の母より使役の力を授かっているの知っているな。それを使い、過去何度か限定的にだが、結界を作り、それで人外達と戦った。話したことは無かったかな?」

「はい。記憶のある限りでは」

「え? 人外とか言うのと戦ったことあるの?」

 言辞げんじが驚く。

 周りも、少し騒めいていた。

 まあ、驚かれても、私も知らんことだし。

「らしい。です」

 と答える私。


「使役の力を使い、転移の力を使えるようにする他あるまい」

 親方様が言う。

「ですかね?」

 と私。

 転移なんて、どうやってするんだろう。


「あ!」

「え? どうしたの? フェイス殿下」

 驚く言辞げんじ

言辞げんじは、転移の力でこちらに来たんだったよね?」

「そ、そうですね。殿下」

「場所や時どころか、次元も飛び越えて」

「……。ああ、そういうことですか」

 言辞げんじが、何か納得している。


「ん? 言辞げんじ、どういうこと?」

 私は尋ねた。

「””は、正確には場所じゃ無くて、転移前の場所と場所の間じゃないかって事だよ」

「?」

 何を言っているのかよくわからない。

 全然わからないよ。


「ま、要するに、転移の力をリリィちゃんが習得しないと始まらないという事だよ」

 とフェイスが言う。


「はぁ。そうですか」

 簡単に習得って言うけれども。


「リーゲンダ殿、人外との戦いの時は、どのようにリリィさんの力を引き出したのですか?」

 フェイスが、親方様に尋ねた。

「ふむ。使役の力で人に強制すると、寝ているような状態になる」

「それは、催眠状態さいみんじょうたいという事ですね?」

 言辞げんじが補足するように言う。

「さ、催眠状態?」

 また、知らん言葉だ。

「うむ。その催眠状態さいみんじょうたいとやらにして、私が命令を与える。それで、リリィに結界の力を発揮させた」

「では、具体的な指示と言うのは、……」

「ない」

「なるほどぉ」

 と、言辞げんじ


「え? わかるように言ってよ。実行するのは私なのよ」

 三人だけで、何を納得しているの?

 

「御免、御免。親方様に使役の力で催眠状態さいみんじょうたいにして、と命じれば、リリィは転移できるかもしれない。こういう事だよ」

 へぇ。そうなのか?

 え? そんなんでいけるんだ?


「でも、どこに転移するの? 私、眠っているようなものなんでしょ?」

「あ、そうか」

 そうかじゃなくて。

 行ったきり帰ってこれなかったらどうするの?


「そこは、短い距離で移動させるように指示を出そう」

 親方様が仰った。

「あ、そうですね。仰る通りです」

 言辞げんじが納得した。


「どうやら方針が決まったようだな」

 リンド皇国の皇帝が、まとめに入られた。

「では、リーゲンダ殿。その転移の力の訓練とやらをお願いしたい。そして、リリィ殿。その力を得た後、を連れてまいれ」

「はい。陛下」

 と、親方様。

「畏まりました。陛下」

 私も続いて答える。

「モイラ殿も、これで宜しいか?」

「はい、陛下。これで、私の使命も果たせそうです。感謝いたします」


 やれやれ。

 我が母上も、もうちょっとやり方なりなんなりを残して置いてくれても良かったのに。


 と、こぼしてもしかたがない愚痴を、私はひとり思ってモイラの方を見た。

 

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