天使
香
天使
天使が来たの。
うちのベランダに落っこちてきて、綺麗な服の裾が、少しだけ汚れちゃっていたの。
その子は、にっこり笑って私が窓を開けるのを待っていてね。どうしたらいいのか分からなくて、警察に電話でもしようと思ったんだけど、その子、あまりにもかわいくって、結局窓を開けちゃったの。
鍵なんかひとつも掛けてなかったから、その子だって手を使えば窓を開けることくらい簡単にできたのに。やっぱり、人間ってのは天の下僕なのよね。
それでも、花を絶望させるほどに綺麗な笑顔を浮かべて、抱きしめてくれるなら、下僕だってなんだって構わないわ。
この子は物好きで、花やプレゼントには見向きもせずに、私が腕を広げてくるのをただ待っているの。もういい歳の大人だけれど、ハグは好き。
でも、でもね、あの子とハグをしたあと、絶対にどこかが痛むの。指先から心臓まで抜け目なく、じわじわとこっちに来る。
それで、あの子はどんどん奇麗になる。
今朝は何を食べたっけ。あれ、私、こんなに白髪が多かったっけ?
そういえば、子どものころお母さんに言われたわ。神さまはひとりしかいないから、皆に優しくしてくださるけど、天使はたくさんいるから、そうはしないって。
私とは適合しなかった、誰かの愛らしい天使。
私を吸収してもっともっと奇麗になる。嫉妬で脳が燃え盛る。私もあの子を見たいのに。
私の天使は何処にいるの?ああ、でも今更、この悪魔には敵わない。
だいすきよ、死んでもあなたのことだけが。
天使 香 @kaoru003311
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