歌姫の彼女と小説家の僕
滝川 海老郎
第1話 小説家の僕と歌姫の彼女
まず僕のことから話そうか。
街山サトシ、18歳、高校3年生。
どこにでもいる小説家の端くれだ。
去年、小説投稿サイトでヒットを飛ばし、年間5位まで駆け上がり、書籍化を果たした。
今はその2巻を執筆している最中というところだろうか。
ちょっと、進学先を悩んでいる。どこにでもいる、高校生。
「サトシ、はやく帰りましょう?」
「うん」
この子は駆田メグミ、18歳。クラスメイト。
彼女はVTuberというやつで、お歌が専門だ。
ゲーム配信はやったことがない。いや、この前オセロの配信とかしてたな。
まあ、とにかく、彼女は歌枠というのをメインにしている今を時めくVTuber様というわけ。
10万人の視聴者がいる、売れっ子の一角だ。
それでも上には上があるというのは格言の通りだ。
そうはいっても僕は底辺の書籍化作家。
知っている人はほとんどいない。家族や親族には知らせてあるが、決して知られているとはいいがたい。
書籍化作家といっても、ピンキリだったりする。
高校生としては、バイトとかしなくても100万単位で収入があって、ちょっとアレだけど、この前、親父が扶養家族がどうのことのと頭を悩ませていた。
メグミちゃんは、小学校のころからピアノの練習をして、歌も歌っていたらしい。
そのうちピアノを弾きながら歌いようになり、動画配信サイトに公開しているうちに、声を掛けたられてデビューをした。
ここまで若い子は実は珍しいほうらしいが、Vというのは中の人の年齢で見られないことがよくあるので、大丈夫らしい。
まあ、大人の会話とかは厳禁だが、ユーザーも薄々気が付いていて、警備兵が飛んでくるので、守られる環境ではあるらしい。
「それでね、この間、新しい歌、作ってもらったから、今度公開されるんですよ」
「すごいじゃん」
「サトシ君だって、小説家なんてやっててすごいくせに」
「僕のは、誰にも知られてないし」
「でもでも、この前、本屋さんで並んでるの見たよ?」
「ああ、僕も見た。びっくりするよな、正直」
「だよね。本当にあるんだ、って思ったもん」
そうそう、書籍化して驚くのは、近所の本屋でも自分の本が並んでたりすることだ。
そういうことが実際にあるんだなというのは頭で理解しているのと、現物を見るのでは全然違ったりする。
「今度は、歌専門のVTuberの話とか書こうかな」
「え、なにそれ、それって私のこと?」
「ああ、参考人させてもらって、それっぽい話。ラブコメでさ」
「いいねいいね。わたし、なんでもきいて、お話いっぱいしますね」
「じゃあ、男性経験は?」
「そんなこと聞かないでください、もう、メですよ」
「だろうな」
「もう、本当は分かってるくせに」
「まあな」
そりゃそうだ。彼女メグミちゃんとは幼馴染である。
彼氏がいたことなどない。
僕がいつも横にいて、一緒に登下校してるから、絶対にない。
隠れて付き合ってるとか、想像もできない。
さて、僕たちは付き合っているのだろうか。
Vtuberの歌姫は彼氏厳禁なのだろうか。正直、正確なところは分からない。
事務所から禁止とも言われていない。
もちろん、そういう姿を見せないで欲しいとかの要望はあるみたいだけど。
例えば、一緒にカラオケ行ったりしても、彼女はそれをネットに公開したりしないようにしている。
これは確定事項だ。
ちなみに、自分の歌、知り合いのVTuber友達の歌、人気の曲だったり、いろんな歌を歌ってくれる。
僕はへたっぴなので、恐縮なのだが、月に一回は「義務」化されている。
もっと一緒に歌いたいらしい。かわいいやつめ、うりうり。
================
5話6000文字の短編です。
毎日1話更新します。
カクヨムコン11短編部門参加作品です。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます