演劇脚本:試作品2026
にのまえ(旧:八木沼アイ)
「だから俺たちは地元の花火大会から出られない」
演劇原稿:「だから俺たちは地元の花火大会から出られない」
登場人物:
片桐:男 主人公 戸山と同じ大学を中退。
戸山:女 片桐の中学時代の元カノ 片桐と同じ大学。
茅野:女 夜職(大学生だと噓ついている)。明るい。
難波:男 女遊びが激しい 浪人(大学生だと噓ついている)
元木:女 柿沼の彼女、フリーター。
柿沼:男 高卒で花火職人 今回の花火打ち上げ担当、難波に復讐したい。
夏目:女 マジシャンで少しおっちょこちょい。
米倉:男 兎の着ぐるみを着た、夏目と組んでいる先生。難波に復讐したい。
あらすじ:地元の花火大会に来た片桐は、池を泳ぐ鯉に目を奪われていた。すると、学生時代の知り合いが次々と片桐の前に現れる。それぞれの思惑が交差し、事態は思わぬ方向へ舵を切っていく。
Act 0 過去
舞台、上手側に四角の立方体が置いてある。片桐、戸山、茅野、難波、元木、柿沼、夏目が大富豪をしている。シルエット、黒装束で色のついた仮面のみ、などでも良い。
明転。大音量で曲が流れている。1分ぐらい。
曲が止まったタイミングで話し始める。
夏目 あ、配る量ミスった
元木 え?
夏目 配る量、難波君のだけ多くしちゃった
難波 やっぱり? なんか多い気はしてた
夏目 ごめん
柿沼 あのさ、勝手に入って大丈夫かな?
元木 いいでしょ、気にする必要ないよー。あ、私あと三枚
夏目 えー、ちょっと早くない?
元木 大富豪だったからねー
柿沼 ジョーカー二枚持ってたしなー
夏目 つよー
難波 俺のジョーカーとか全部元木に渡したんだぞ
元木 強者はずっと強者なんだよ
難波 っち、あがってから言えよ
元木 はいはい
難波 あいつら遅くね?
元木 いや、察しろって
難波 え?
元木 …
難波 え、なにそういうこと?
元木 そういうことでしょどう考えても
夏目 え、どういうこと
下手から片桐と戸山が帰ってくる。
片桐 ごめんごめん遅くなって
戸山 あれ、茅野は?
元木 え、さっき出てったけど一緒じゃなかったの?
戸山 え、うんすれ違っちゃったかな
下手から茅野が出てくる。
茅野 ごめんごめん
戸山 あーよかった、誰かに見つかったのかと思った
茅野 …あー、下のトイレ行っててさ
片桐 あ、ほら、早く続きやろうぜ、今誰?
戸山 …
元木 あれ、次難波じゃない?
難波 出せねぇの知ってて言ってんだろ
元木 ごめんって、じゃあパスか
片桐 じゃあ俺だな、えーと、これのジェーバックしてる?
夏目 してない
片桐 おけ、あれ、夏目もパス?
夏目 戦略的にね
片桐 なるほど。えー、どうしよ
米倉が下手側の幕袖から怒りの声。
米倉 おいお前らなに残ってんだ! 早く帰れ!
全員 やっばっ!
急いで、全員がトランプを片付ける。難波はイライラしている。
夏目 あー、いいとこだったのに
茅野 あーあ、難波がやろうって言ったから
難波 は? 俺のせいかよ
片桐 まぁ、俺達もそれに乗ったわけだし同罪だろ
戸山 そうそう、片づけないと先生に没収だよ
元木 鯉に食われたりして
戸山 まさか米倉じゃあるまいし
夏目 あはは
茅野 夏目ツボリすぎ
片桐 てか、誰だよトランプ失くしたやつ
茅野 え、あるじゃんここに?
片桐 あ、そうじゃなくて、何枚か入ってないんだよ
元木 少ないってこと?
片桐 そう
戸山 まぁ、こんな大富豪ばっかこすってたら、いつかは失くすよね
片桐 そりゃそうか
難波 はぁ、なぁ柿沼
柿沼 ん?
難波 あとお前全部やっといてくれない?
柿沼 え
片桐 おい難波
難波 なんだよ。やりたがってるじゃん、なぁ!?
柿沼 う、うん
難波 ほら
片桐 言わせてるだけだろ
難波 はいはい、俺一抜けー
去る際、一人一人が、下手に置いた立方体を強く踏む。
茅野 あー、私もー、じゃあね片桐
戸山 ちょっと茅野―
茅野の後を追うように、戸山も去る。元木、柿沼、夏目が片桐を見つめる。
片桐 わかってるよ、俺も片づけるよ、ほら元木も
元木 …意気地なし(柿沼に向かって言い、片づけを手伝う)
片桐 おい
夏目 …(手伝う)
柿沼 …(うつむく)
片づけ終わる。
柿沼 …ありがとう
片桐 …よし、急いで帰るぞ
柿沼 …うん
片桐、元木、柿沼、夏目の順で去り、夏目だけ残る。
夏目が上手を方を向いて、暗転。
Act 1 花火大会
舞台、中央に四角の立方体が置いてある。
地元の花火大会、小学校の校庭を想定。老朽化が進んだ校舎で、再来年には取り壊されるという。小学校と中学校が併設されており、中学校の校庭で花火が行われ、一般人は立ち入り禁止のため、小学校の校庭に大道芸が行われたリ、屋台などが並び、多くの人でにぎわっている。そこに足を踏み入れたのは片桐。普通の私服の恰好。
明転から数秒後、片桐が上手から登場。
片桐 …(四角の立方体に座り、水槽の鯉を見つめる)
片桐の目の前には池があり、膝ぐらいの高さの水槽がある。下手から、戸山と茅野が歩いてくる。茅野は包装されたパンを持っている。二人とも格好は普通。
茅野 あ、パン余ったし鯉に餌やりやろっかなー
戸山 いや、ダメでしょ米倉じゃないんだから…あっ
片桐 え、あっ(すぐに顔を背ける)
茅野 えーなんでー…
戸山 …
茅野 あ…え、まって片桐?
片桐 …うん。茅野と戸山か
茅野 えー久しぶり何してんの、餌やり?
片桐 いや、花火見にきたんだよ
茅野 あぁ、そっか。あれ、一人?
片桐 …
茅野 あ、ごめん
戸山 なんでいんの
茅野 ちょっと戸山(食い気味に)
片桐 …だから、花火見に来たんだよ
戸山 そうじゃなくてさ
片桐 …
戸山 去年も、一昨年もいなかったじゃん。なんで今年だけ?
茅野 え、そうなの?
片桐 それは…再来年、ほら、老朽化でさ校舎取り壊されるだろ
戸山 それは知ってる
茅野 え、そうなの?
片桐 そう、んで、来年の春には工事が始まって、実質見れるの今年で最後だから
茅野 え、そうなの
片桐 あのさ無知すぎない? 何もわかってないじゃん親戚のあつまりにいる子供ぐらい話わかってないよ
戸山 えー
茅野 だって、この間帰ってきたばっかなんだから。あれ、ストーリー見てない?
片桐 この間おすすめ流れてきたからフォロー押したけど通されてないよ
茅野 え、そうなの?(ニヤニヤ)
片桐 バカにしやがって、って、え、どっか行ってたの?
戸山 茅野、東京のまぁまぁいいとこの大学にいるの
茅野 なにまぁまぁいいとこって
片桐 へぇ、あー帰省したのか
茅野 うん、片桐は?
片桐 え?
茅野 大学だよ。たしか戸山と一緒だよね? どう、調子どうなの
片桐 …まぁ、普通かな、そんな特段頭良いってわけでもないから
戸山 …
片桐 あ、てかすごくない? 東京のまぁまぁいい大学
茅野 バカにしてるでしょ
片桐 いやいや、流石学級委員長じゃん
茅野 うわなっつ、よく覚えてんね。中学のときかぁ
片桐 そうそう
戸山 あれなんだっけ、片桐さ、茅野のこと初対面で天才呼びしてたよね
片桐 うわーなんか、そんなのあったな。最初のクラスに茅野のがいて、生徒代表の挨拶やってたのだけ覚えてたから、話しかけようと思って、パッと出てきた言葉が天才だったんだよ
茅野 あれそうだっけ? でもなんで天才って言ったの?
片桐 そりゃあ、生徒代表の言葉なんてそっちの小学校で頭いいやつしか選ばれないってのを何となくわかってたから、最初に天才って言葉が浮かんだんだよ
茅野 あ、そっか。小学校違うもんね
片桐 そうそう、実家の地区が微妙なとこでさ、小学校の友達とか別の中学行っちゃって
戸山 あ、それ柿沼も言ってた
片桐 あーあいつもそうだな、俺と一緒の小学校
茅野 へぇ…(スマホを触る)あ、そうだフォロー通しとこうか
戸山 それは後ででいいよ
片桐 え、そうなの
戸山 そうだよ
片桐 そうだよじゃなくてもいいだろ
戸山 ほんとにそうなの
片桐 ほんとにってなんだよ
戸山 私たち行くとこあるから
片桐 え、行くとこ?
茅野 え、行くとこ?(ハモる)
戸山 いやあんたが見に行きたいって言ったんじゃん
茅野 そうだったっけ?
戸山 大道芸のことだよ。ほら、もう16:20だから(スマホを指さす)始まっちゃうよ
茅野 あぁそうだそうだ、あれね、マジックショーもあるんだっけ?
片桐 いまなに、そんなのもやってんの
戸山 …うん。ほら、行くよ
茅野 うーん。あそうだパン余ったし代わりにあげようか
片桐 え、何パン?
茅野 …廃棄のイチゴスペシャル
片桐 廃棄かよ。…え、地元帰ってきてコンビニでバイトしてんの?
茅野 うん、金銭感覚バグっちゃって
片桐 東京ってどんなとこなんだよ。てかほんとにパンいいの?
茅野 え、あ、いいんだ
片桐 うん、なに、断ると思った?
茅野 ダメもとだったんだけど、聞き分け良くて素晴らしい
片桐 なんだそれ
茅野 はい
片桐 ありがとー
戸山 じゃあね
片桐 うん
戸山 ほら、行くよ
話しながら、茅野と戸山は上手にはける。
Act 2 旧友
片桐 …はぁ(パンを開げてちぎって、鯉にあげようとするが自分で食べる)
上手から柿沼が登場する。
柿沼 あれ、片桐?
片桐 え、うん…うそ、柿沼?
柿沼 うん。最近顔見ないなって思ったらこんなとこに…え、あ、そっか、動物にパンやるおじさんの卵ってお前だったんだ
片桐 そんな卵はないし、一回確信すんなよ
柿沼 ごめんごめん…米倉の真似しにきたわけじゃないんだろ(片桐の隣に座る)
片桐 そういやあいつ、鯉にパンやってめっちゃ怒られてたな
柿沼 ここの水槽めっちゃでかいもんな。普通に花火大会見に来ただけ?
片桐 そうだよ
柿沼 そっか。あれ、まだ難波とか…あと、元木とは会ってない?
片桐 だから次から次へと新キャラを出すな
柿沼 新キャラって全員同じ中学だろ
片桐 しかもなんでその二人なんだよ
柿沼 …三年のとき同じクラスだったから
片桐 だっけか? 元木は隣じゃなかった?
柿沼 あ、そっか元木は隣か。…もしかして、もう会った人いる?
片桐 さっき茅野と戸山に会ったよ
柿沼 そっか、茅野帰ってきてたもんな、インスタのストーリーで見たわ
片桐 お前は通されてんのかよ
柿沼 え?
片桐 いやごめんこっちの話。柿沼は?
柿沼 えっと、俺実はさ
片桐 うん
柿沼 今日の花火、俺が打ち上げるんだよね
片桐 え、俺が? もしかして花火師になったの!?
柿沼 うん
片桐 すげー、ってことは実家継いだんだ
柿沼 そう。親父の仕事継いでさ、高校あたりから少し触らせてくれてて、んで、卒業してから、そのままって感じ
片桐 へぇ、すごいな
柿沼 まぁ、まだ見習い程度だけど、いろんなとこで上げさせてもらってる。彼女も俺も花火巡りが趣味でさ、毎回見に来てもらってんだよね
片桐 へぇ、良い彼女さんだな
柿沼 だから俺が打ち上げる花火、ちゃんと見てて
片桐 もちろん
柿沼 …片桐はさ、どうなの?
片桐 え、あー、いい感じ
柿沼 おー、大学ってどんなもん
片桐 え、あー、普通かな、だらけていいし、勉強するのだっていいし、めっちゃ自由だよ
柿沼 …いいとこだね
片桐 …そうかな
柿沼 あれ、戸山と一緒じゃなかった?
片桐 …そうだね、キャンパス違うからあんま会わないけど
柿沼 え、同じ校舎じゃないの?
片桐 …あー、大学って学部によっては勉強する場所が違うんだよ
柿沼 へぇそうなんだ。なんか賢そうに見えてきた
片桐 そんなことない、推薦で来た奴が大半を占めるんだから
柿沼 え、それはそんな悪いことなの
片桐 悪いね
柿沼 花火で言ったら
片桐 花火で言ったら? えー、花火で言ったら、うーん、火薬の量ミスるぐらいかな
柿沼 え、そんなに!?(めちゃくちゃ驚く)
片桐 あ、そんなに悪かったんだ今の例え
柿沼 …よくわかんないけどあれか
片桐 ん?
柿沼 Fランってやつか
片桐 お前言葉選べよ
柿沼 え、あ、ごめん、え、そんなに悪い言葉なのこれ?
片桐 まぁ、あんま言わないほうがいい。一応戸山も通ってんだから
柿沼 そっか、悪かった
SE:電話が鳴る
片桐 あ、電話
柿沼 聞こえてるって、お前、俺を誰だと思ってんだよ、花火職人だぞ!
片桐 関係ないだって、そのネタ古いし
柿沼 ちょっと、出てくるわ。じゃあ花火、楽しんでな
片桐 うん
柿沼は下手に去る。片桐も上手に去る。暗転。
Act 3 芸当
SE:観客のざわざわ音
四角の立方体を舞台下手奥に置く。
明転。暗転中に上手側の幕からセリフを言ってもよい。
茅野 やっぱ子供たち多いね…あ、前空いてる
戸山 お、そこ座っちゃお
茅野 あ、すいません(人の足を踏まないように)
戸山 ごめんなさいごめんなさいー(人の足を踏まないように)
茅野と戸山が上手から登場する。
茅野 結構舞台と距離近いよね
戸山 そうだね。あ、ここ座ろ
下手側に体育座り。
茅野 はぁ、お腹減った…
戸山 もう、あげなきゃよかったのに
茅野 それなー
戸山 屋台の何か買っとけばよかったのに
茅野 だって高いじゃん焼きそばとか五百円するんだよ?
戸山 あれ、あんた金銭感覚バグってんじゃないの?
茅野 あぁ、うん、最近治ってきてて、元の金銭感覚がドアの前で待ってる感じ
戸山 擬人化しないで。え、戻ってきたってこと?
茅野 そう
戸山 へぇ…
茅野 どうかした?
戸山 いや、なんか、メンヘラの元カレ思い出しちゃって
茅野 え、なになに、聞きたい!
戸山 えー
茅野 お願いお願い
戸山 …はぁ、えっと、昔、夜にね、元カレが家の目にある公園のブランコ二時間ぐらい漕いでることあって
茅野 え、恐っ、ほんとにどういうこと?
戸山 ほんとにあの時は焦った。別れた後すぐのことで、一週間ぐらい続いたんだけど
茅野 えぇ
戸山 流石にやめてほしかったから、直接言って
茅野 え、直接!? ラインとかインスタは?
戸山 全部のSNSブロックとか消されてて
茅野 あー、そういうタイプね
戸山 んで、やめてって言ったら、わかったごめんって
茅野 聞き分けはいいんだ
戸山 それでやめてもらった
茅野 いや怖すぎるんだけど
戸山 一応これ笑い話なんだけどな
茅野 やだやだ、私の元の金銭感覚は病んでませんように
戸山 バカにしてるでしょ
茅野 あはは冗談。私はそんな元カレと違って、元金銭感覚に戻すためにコンビニでバイト始めたし。ブランコしてないし
戸山 うっさ
茅野 つまり、屋台のご飯は高いってこと
戸山 つまりになってないよそれ。てか、屋台はそういうもんだって、富士山の上で売ってる水も水三百円でしょ?
茅野 例え合ってるそれ? てかこれどういうショーだっけ
戸山 なんだっけ、いろんなマジックショー
茅野 へぇ、あ、マジシャンもいるんだ
戸山 らしいね、さっきの看板に兎の着ぐるみとその助手みたいなの書いてあったよ
茅野 え? ボスが着ぐるみのイメージなくない? 人間が助手なの?
戸山 あれ違う?
茅野 ほら、大体ボスって人間じゃん。あのー、ワクワクさん的な
戸山 別にワクワクさんはボスじゃないよ
茅野 でもゴロリは助手でしょ
戸山 いやまぁ確かに、ゴロリの方がボスっぽいよね
茅野 ゴロリが理性なくなったらワクワクさんのこと余裕で嚙み殺しちゃうよ
戸山 誰もゴロリが理性失くなってワクワクさんの襲っちゃうっていう目で見てないよ
茅野 そうかなぁ
戸山 そんなバイオレンスだっけあの番組、工作番組でしょ
茅野 暴走したらワクワクさんが火縄銃作ってくれるよ。ばーんって
戸山 そんなワクワクさんは紙コップで工作しててよ
茅野 紙コップじゃ火縄銃作れないよ
戸山 どこ突っかかってんの
茅野 麻酔銃の方が強いか
戸山 それずるでしょ
茅野 ねぇゴロリって麻酔銃効くの?
戸山 なに言ってんの
茅野 ただの水平思考ゲームだよ、ハリネズミのスープ
戸山 ウミガメのスープね。さっきからいろいろと間違ってるよ
茅野 あれ、そうかな
戸山 絶対そのスープ飲みたくないし
茅野 針は入ってそうだもんね
戸山 今日初めて共感したかも
茅野 え、ひどいー。なんか今日あったかいよね
戸山 冷たいでしょ
茅野 あ、夏だからか
戸山 …
茅野 え、どうかした?
戸山 …なんでもない
茅野 なんかワクワクしてきた
戸山 もう黙って
SE:サーカスや陽気なイメージの曲
兎の着ぐるみを着た米倉とマジシャンの格好をした夏目が出てくる。立方体に乗っている。
夏目 どうもこんにちはー。マジシャンのサマーアイズです!
SE:拍手の音
戸山 え、あれ夏目ちゃんじゃない?
茅野 え、うそ! あ、だからサマーアイズね
夏目 こちらは…えーっと、ウサギの斎藤さんでーす
お辞儀をする米倉。SE:拍手の音
茅野 あれ絶対中身斎藤さんじゃん
戸山 どうするタイミーさんだったら
茅野 普通にその可能性ある
戸山 逆にここのバイト応募してんのウケる。あれかな、着ぐるみを着てもマジックできる人とか書いてあったのかな
茅野 …
戸山 …集中して見てる
夏目と米倉がマジックを三回程度披露する。ここは自由にしてもらってかまわない。お客さんに拍手をもらうような演出。
夏目 それでは、次が最後!
茅野 あー、最後かぁ
戸山 早いねぇ
夏目 いよいよ、お待ちかねラストのマジックはこれを使った…!(兎のステッカーが付いたガスバーナーを取り出す)
米倉が夏目に近づき、時計を巻けというのマイムをする
夏目 あ、そっか。時間か
茅野 時間? やっぱりタイミーさん?
戸山 ワンちゃん
夏目 すいませーん、斎藤さんはもうすぐ元の姿に戻らなきゃいけないようです
茅野 元の姿?
戸山 時間が来たんでしょ
夏目 すいませーん、また会ったら、もっとすごいのをお見せしようと思います
茅野 はーい!
戸山 これで終わりかぁ
夏目 またどこかでー
米倉、夏目の順で、上手から去る。
茅野 あ、みんな帰ってく
戸山 そりゃそうでしょ
茅野 この余韻含め好きなんだよね私
戸山 へぇ、映画のクレジット最後まで見る派?
茅野 え、逆に見ないの?
戸山 え、なんで見るの?
茅野 …
戸山 …次どこ行く?
茅野 …校舎とか
戸山 え、入って良いんだっけ?
茅野 多分ダメ
戸山 えー、やめようよ
茅野 屋上の鍵壊れてたじゃん
戸山 え、屋上で見んの
茅野 学校で花火見るって言ったら、校庭か屋上でしょ
戸山 別に教室とかからでもよくない?
茅野 打ち上げ花火なんて上から見るか、下から見るかなんだよ
戸山 別に屋上も下だよ
茅野 この場合上に近い方が上だよ
戸山 そういうことなの?
茅野 そういうこと
戸山 でも、バレたら怒られちゃうよ
茅野 だって今年最後なんでしょ
戸山 何の「だって」それ
茅野 いいから行こうよ
戸山 話聞いてた?
茅野 …
戸山 …もう、バレたら知らないからね
茅野 よっしゃ。でも先に屋台行こ
戸山 お腹すいてんのね
茅野 実はね
戸山 さっきから隠してないでしょ
夏目がやってくる。
夏目 ごめん、二人とも、あそこの小道具移動するの手伝ってくれない?
戸山 え? あ、うん、いいけど(茅野と目を合わせる)
茅野 あ、私も全然大丈夫だよ
立方体に近づく。
夏目 ありがとね。えっとじゃあ私こっち持つから、二人はそこと、そこ持って
戸山 おっけー
茅野 わかった、どこに持ってくの?
夏目 えーっとね、あそこ
茅野 まぁまぁ遠いね
夏目 案外すぐだよ、そんじゃ持つよ
立方体を持って、舞台を少し回る。
茅野 やっぱり夏目ちゃんだよね
夏目 うん。二人とも前の方にいたから一発で分かった
戸山 まさかマジシャンしてるとは
夏目 なにまさかって
戸山 いやごめん
茅野 私もマジック覚えたいな
夏目 弟子入りする?
茅野 え、夏目ちゃんの?
夏目 いいや、私じゃなくて、先生の
戸山 先生?
夏目 私にマジック教えてくれた先生がいるの
茅野 へぇ、そんな感じなんだ
夏目 私にサマーアイズって名前くれたのも、その人。まぁ、厳密には受け継いだんだけどね
戸山 落語みたいだね、私てっきり、夏目だからサマーアイズなのかなって思っちゃった
夏目 わかる。最初に聞いた時私も同じこと思って、クソダサいですって言っちゃった
茅野 え、言っちゃったの
夏目 うん、流石に安直すぎですって
戸山 そこなんだ
夏目 でも、その後先生に、その名前は代々受け継いでて、認められた人しか名乗れないんだよって聞かされたらなんかカッコイイって思えてきて
戸山 後付け設定感あるよね
茅野 夏目ちゃんが最初に納得いかない表情してたからでしょ
夏目 なんか言ったー?
戸山 いや、なんでもないー
茅野 ねぇ、どこー
夏目 あっ、ここらへんで!
舞台中央に置く。
夏目 はぁ疲れたー。二人ともごめんね、ほんとありがと助かったわー
戸山 いいよこのぐらい
茅野 そうだね、久々に会えたし。あ、そうだ、今度マジック教えてよ
夏目 先生ならうまく教えられるんだけど、帰っちゃったしなぁ
戸山 え、あの兎の人?
茅野 兎の人
夏目 あー、うん、あの人が先生
戸山 着ぐるみがボスの場合もあるんだ
夏目 え?
戸山 あごめん、こっちの話気にしないで
茅野 あ、思い出した、夏目ちゃんってゴロリに麻酔銃効くと思う
夏目 え?
戸山 ちょっとなに聞いてんの
夏目 効く
戸山 効くんだ
茅野 ごめん、変なこと聞いて
夏目 いや、いいよ。あ、そうだ、お腹減ってるっぽいね
茅野 …え
戸山 …なんでわかったの
夏目 狩人の目で兎の子と見てたからって
茅野 バレてた
夏目 先生が帰る前に、前の席の人が恐いって言ってたよ
茅野 あはは、ごめんなさい
戸山 腹減りすぎでしょ
夏目 あ、さっきのお礼に、これで美味しいもんでも食べて(指パッチンする)
茅野 え?
夏目は茅野のポケットに指をさし、下手に去る。
去った後、茅野はポケットをまさぐる。
茅野 あ…五百円玉だ
戸山 かっこよ、丁度焼きそば食べれるじゃん
茅野 戸山は?
戸山 え? あ、ある…三百円?
茅野 丁度富士山で売ってる水買えるじゃん
戸山 ここが富士山さんならね
茅野 え、ここ富士山じゃないよ
戸山 知ってるよ、だから困ってるんだよ
茅野 まぁ屋台も同じくらいだし、夏祭りって、実質富士山なんじゃない?
戸山 全然違うよ
茅負 そうかなぁ。あ、斎藤さんから電話来た
戸山 え、あの兎の人と知り合いなの?
茅野 あー、勤務先の先輩
戸山 名前一緒なんだ
茅野 ややこしいよね
戸山 勤務先って…あ、バイトか
茅野 …そうそう、ちょっと待ってて
戸山 あ、うん
上手にはける茅野。座る戸山。
Act 4 再会
上手からパンを食べながら、片桐が登場する。
片桐 あっ
戸山 …あ、片桐
片桐 え、茅野は?
戸山 あー、今バ先から電話かかってきてるらしい
片桐 そうなんだ、ワンちゃんバイト飛んできてるかもな
戸山 いや、それあるんだよね
片桐 な
戸山 …(隣に座る)
片桐 …
戸山 まだ、パン食べてたんだ
片桐 いいだろ別に、屋台の飯高いじゃん
戸山 そういうもんだって。なんかデジャヴ
片桐 え?
戸山 いや、なんでも
片桐 今、サークルでいい感じの人いるらしいじゃん
戸山 え、誰から聞いたの
片桐 鈴ちゃん
戸山 あー、飲み物で口止めしたのに
片桐 残念
戸山 …なんで?
片桐 いや、なんとなく、付き合うのかなぁって
戸山 わかんないけど、今度デート行くんだよね
片桐 へぇ、どこ行くの?
戸山 まだ決めてない
片桐 デート行く約束だけってこと?
戸山 そう
片桐 そんなやついる? 怪しくない? 夜デートだったら警戒しなよ
戸山 え…
片桐 図星かよ
戸山 まぁでもいい人そうだよ
片桐 いやいや、男なんて付き合う前はみんなそうだよ
戸山 …あと優しいし
片桐 付き合う前の男なんてそんなんいくらでも作れるって
戸山 食事行った時毎回奢ってくれるし
片桐 付き合う前の初期費用だと思ってるよ
戸山 …あとカッコいいし
片桐 恋愛フィルターだよフィルター
戸山 さっきからなに?
片桐 なんでもないけど?
戸山 …初デートで靴ズレするようなひとじゃなさそうだし
片桐 …履きなれてなかっただけだし
戸山 …少なくとも、別れた後家の前の公園のブランコ漕ぐような男じゃないから!
片桐 言うなよお前それ!
戸山 …
片桐 …あれは、ちょっと俺も、おかしかった時期だったって自覚してる
戸山 いやでも
片桐 …中学生なんてそんなもんだろ
戸山 絶対違うよ、あんなグロい中学生いないよ
片桐 いや、ごめんって
戸山 …まぁいいけど、何年前だっけホントに
片桐 六年前とかじゃない? 中二か中一の時でしょ
戸山 そうだったっけ
片桐 そうだよ
戸山 …もう関係ないでしょ、元なんだから
片桐 うわ…靴ズレより痛いんだけど…(立ち上がる)
戸山 どういうこと?
片桐 絶対そいつよくないよ、俺聞いたもん、別の大学のやつと付き合ってるって
戸山 …え?
片桐 しかも六股
戸山 六!? いや、どうせ噓でしょ
片桐 いやまじ
戸山 なにまじって
片桐 あいつはいずれ教習所で助手席に女六人乗せるぞ
戸山 意味わかんないし、なんで教習所なの
片桐 だから、戸山はそいつと付き合ったら不幸になるに決まってる
戸山 今の例えで納得するわけないでしょ。てかあんたに言われたくないんですけど
片桐 戸山は今、廃棄のパンを食おうとしてるってことだよ
戸山 は? え、売れ残りってこと? 意味わかんないんだけど
片桐 大学生カップルなんて三組に二組は浮気してんの、俺は、その三分の二なる戸山を見たくないんだよ
戸山 勝手に決めないでよ。その話と六股とか廃棄のパンがどう関係してくんの?
片桐 俺も先に口走って、なんとかけなそうとして、そのけなそうとする周辺の単語を拾ってるだけだよ! 別になんにも繋がってない、ただの、ただのオムニバス悪口だよ!
戸山 え、オムニバス悪口? 何それ?
片桐 ただ、俺は! 俺は、戸山に彼氏ができるのが嫌なんだよ
戸山 …ごめん無理
片桐 …
戸山 片桐、あの時からなんも変わってないじゃん。鈴ちゃんに片桐、大学辞めたって聞いて心配してたけどさ…
片桐 …千円で口止めしたのに
茅野が上手から登場する。
茅野 いやぁごめんごめん…って、あれ、なんかやばい空気?
戸山 ううん。そうだ茅野、水買いに行こ(立ち上がって、茅野を引っ張る)
茅野 え、ちょっと…
茅野と戸山が上手に去る。
片桐 …
Act 5 悪友
難波と元木が下手から歩いてくる。
難波 えあれ、やっぱり茅野と戸山じゃね?
元木 あ、ほんとだ、でも行っちゃった
難波 なんだよ、せっかくみんなで屋上…
片桐と目が合う。
難波 え、お前、片桐?
片桐 (頷く)…難波。それとー、…あれ
元木 元木だって。覚えてる?
片桐 あぁ元木か! え、お前ずいぶん雰囲気変わったな、もっと静かな感じかと思った
元木 そうかな?
片桐 うん、だいぶ、だって頭良かったもんな
難波 おい、狙ってんなよ?
片桐 …え、なに、二人付き合ってんの?
元木 いや、まぁ
難波 最近ずっと一緒にいるってだけ、な
元木 うん
片桐 なんだそれ
立方体の隣に難波が座る。その地べたに元木が座る。
元木 いつからいるんだっけ?
難波 えー、一か月前くらいじゃない?
片桐 めっちゃ最近じゃん、え、どこで会ったの?
難波 花火大会
片桐 花火大会? ここ…じゃないよな
難波 違うって。俺さ、毎年花火大会来てんだよ
片桐 え、うん
難波 市内全部の
片桐 市内全部の!?
難波 いけるところは全部行ってる、だって楽しみたいじゃん
片桐 いや、花火大会は年一回だからいいんだろ。え、花火に目がない人じゃん
難波 花火に目がないって、花火には目はないだろ
片桐 例えだよ例え、やりづれぇな。あれだな、花火大会の四割不良が占めてる理由がわかった気がする
元木 あんたの大学と一緒
片桐 いや不良いねぇよ
元木 推薦で占めてるじゃん
片桐 そこかよぶっとばすぞお前、いきなり鋭角から攻めてくんな
元木 不良はね、明るくて爆発するものが好きなんだよ
片桐 すげぇな、ミニ爆弾魔予備軍かよ
元木 なんかかわいい
片桐 ミニの部分だけだろ
難波 少なくともおれは不良じゃないよ
片桐 え、どこが?
難波 俺、東京の大学行ってるし
片桐 え? まじ?
難波 うん、そこそこのとこ
片桐 そこそこって、MARCHとか?
難波 うん
元木 え? ほんと?
難波 うん、現役で入ったし、まじだって
片桐 元木は?
元木 私はフリーター
片桐 あー、なんか安心するわ
元木 絶対失礼だって、どこで判断してんの?
片桐 見てくれだろ。三度の飯よりドンキって感じ
難波 三度の飯のほうが大事だろ
片桐 お前ほんとにMARCHか!? MARCHにしては会話できなさすぎだろ。…あ、てかごめん、脱線しちゃった。なんだっけ、そうだ、お前らどこで会ったの?
難波 あーその、街の方の花火大会
片桐 へぇ
難波 最初は友達と来てたんだけど、そこで偶然元木と会って、そこから会うたび話すようになって
片桐 おお、ん? 会うたび? ってことは元木も花火巡りで?
元木 そう
片桐 どこで趣味揃ってんだよ、にしても多いなここのやつら
元木 最寄りの駅も同じで、帰り道も途中まで一緒だったから、花火大会の回数が増えてく度、話す時間も多くなっててね
難波 中学の時の帰り道に寄ってたコンビニが一緒で盛り上がってな
元木 そう、んでそこに売ってる雑誌を実はお互いの親が買ってて
難波 その付録が実はお互いの実家にあって、色違いだから交換したりして
元木 途中の公園の自販機に売ってるココアが五回に一回は冷たく出てくる時とかの話して笑い合ってね
難波 それからまぁずっといる感じだ
元木 うん
片桐 ずっと致死量の青春を浴びてる気がする。まぶしすぎるって
難波 花火が鳴いたってわけだ
片桐 咲いた、だろ普通。上手く言えてねぇし
難波 …お前、茅野に振られてたな
片桐 見られてたのかよ
難波 遠くで、痴話げんかしてるバカップルがいるなって思ったらまさかお前らだったって話
元木 難波が、隠れて! とか言って屋台の後ろにしゃがんで盗み見るんだもん
片桐 …花火巡りといい、趣味が悪いな
元木 復縁無理そうなの?
片桐 え、復縁って、なんで知ってんの?
難波 え? お前、クラス全員知ってるよ。お前らが付き合ってたこと
片桐 えっ
元木 え、冗談でしょ、まさかほんとに知らないと思ってたの?
片桐 …うん
難波 あはは
元木 あはは、え、まじウケる、あははは
片桐 まぁ、もう別れてたって
難波 だから知ってるって
元木 あはは
片桐 地元怖っ…そういえばさっき、言いかけてたことあったじゃん
難波 え…?
片桐 なんか屋上がなんたら、みたいな
難波 あー。あれか
元木 屋上誘おうとしてたやつじゃない?
片桐 何それ
難波 そうだそうそう、屋上行って花火見ないかって
片桐 いや、そもそも、校舎内立ち入り禁止でしょ、鍵かかってると思うし
難波 ところが、さっきな、屋上に人影が見えたんだよ
片桐 え?
元木 多分、裏のダストボックスから、地下のゴミ捨て場を通って、校舎の中に入ったと思ってる
片桐 え、そうなの? え、でも大体そういうのて鍵かかってるんじゃ
元木 それをさっき確認したんだけど、誰かに壊されてた
片桐 じゃあ、意図的に入ったってことか
元木 そう
難波 なんか難しい話をしてるけど、要するに中に入れるってことだよ
片桐 本当はダメなんだよ
元木 片桐も来る?
片桐 …気が向いたら
難波 茅野とか戸山も誘おうと思ったけど、まぁいいか
元木 …んじゃ、行こ
難波 よし、じゃあな片桐、また
片桐 あ、ああ
元木 またねー
片桐 …
難波と元木は上手に去る。
Act 6 侵入
片桐 はぁ…知ってたのかよ…じゃあ、柿沼にもバレてたのかな…でもまだ大学のことはバレてないっぽいな
上手から、茅野と戸山が来る。
茅野 ほーらっ!(戸山の背中を押しながら)
戸山 …
片桐 …戸山、茅野
茅野 片桐に言いたいことあるんだって
片桐 え…
戸山 あのさ…
片桐 …うん
戸山 …ごめんやっぱ無理!
茅野 えええ、あれだけ練習してたのに!?
戸山 ちょっと、余計なこと言わないで!
片桐 なぁ、なんだよ
戸山 …さっきはちょっと、私もムキになりすぎた、ごめん
片桐 いやいや…こっちこそ…ごめん
戸山 …
片桐 …仲直りのハグする?
戸山 きっしょ!
茅野 だめだこりゃ
片桐 ミスったミスったごめんごめん! あのほら! 花火見に行こう!
戸山 は!?
茅野 花火は今日みんな見るでしょ
片桐 いや違くて…屋上の! 屋上で! 屋上でみんなで花火見よう!
茅野 焦って頭おかしくなってない?
片桐 いやその、なってない、全然冷静。すごい冷静。もう、花火の前の夜空ぐらい冷静
戸山 何言ってんの?
茅野 花火に打たれる覚悟を決めた、夜空の静寂ぐらいってことじゃない?
片桐 流石そこそこ大学通ってるだけはあるな!
茅野 そこそこっていうな!
片桐 茅野は絶対MARCH以上
戸山 ちょっと、待ってよ。屋上に入れないでしょ、ていうか、校舎すら
片桐 風のうわさで聞いたんだけど、裏のダストボックスってのがあるだろ
茅野 …あっ!
戸山 え、でも鍵が…
片桐 壊されてるんだよ。だから入れるって
戸山 …なにそれ、誰が入るの?
茅野 いいじゃん行ってみようよ
戸山 ちょっと、茅野
片桐 校舎、今年で取り壊しだろ。最後ぐらい、いい場所で見ようよ
戸山 …
茅野 ほら、行こ!
戸山 …バレたら片桐のせいだからね
片桐 いいよ
茅野 ひゅー、かっこいー
片桐 バカにすんなよ
茅野 レッツゴー
舞台の縁に沿ってゆっくり、二周する。戸山と茅野が横並びで先頭。後ろに片桐。
戸山 てか、その話本当なの?
片桐 え、あぁ、本当のはず
茅野 まぁ、見ればわかるっしょ
戸山 いや軽すぎ
茅野 てかさー、さっき少しだけサマーアイズからマジック教えてもらったんだよね
戸山 えー! あれ電話は?
茅野 その電話終わった後、たまたま通りかかったときにちょろっと
戸山 え! なになに教えてよ
茅野 秘密―
戸山 えーじゃあ何に生かせるのそのマジックは
茅野 仕事
戸山 いや、コンビニでしょ
茅野 コンビニで生かすもん
戸山 どうやって?
茅野 だから、その、現金ちょろまかすマジック
戸山 犯罪だよ。あと監視カメラでバレるし
茅野 じゃあそこにガムつけるわ
戸山 レオンじゃないんだから
茅野 何、レオンって?
戸山 え…あ、海外の映画
片桐 三人組で歩くとき、絶対こうなっちゃうんだよなぁ
茅野 あ、片桐知ってた?
片桐 え、あ、うん知ってた。なんならその映画、うちで戸山と一緒に見たしな
茅野 え、ほんとそれ?
戸山 余計なこと言わないでよ
片桐 ずっと前のことね
茅野 めちゃくちゃええことしてるじゃん
戸山 そんなんじゃないって
片桐 ところで俺まだサマーアイズのとこで引っかかってんだけど
茅野 (無視)てかイチゴスペシャル廃棄なるぐらい売れてないのやばいよね、私が小学生の時は毎朝食ってたってのに
戸山 いやまぁ、今の子たちってシリアルとか食ってんじゃないの?
茅野 時代だねぇ
片桐 …ねぇサマーアイズって誰
戸山 え、あー、夏目ちゃん。大道芸見に行ったんだけど、夏目ちゃんと、えーっと、兎の着ぐるみ着た斎藤さんっていうタイミーで来た人がいてさ(無視して会話を進める)
片桐 え、夏目ちゃんなの? 斎藤さん? タイミー? (つぶやく)
戸山 いやタイミーじゃなくて先生でしょ(無視して会話を進める)
片桐 先生? (つぶやく)
茅野 あ、そっか先生か、その先生が、夏目ちゃんにマジックと名前を伝授して
戸山 伝授って(笑)。まぁ、そんな感じだよね。んで、最後ポケットに三百円入れられて
片桐 三百円 (つぶやく)
茅野 私は五百円
片桐 五百円…子供の頃の親戚の集まりもこんな感じだったなぁ
戸山 え?
片桐 蚊帳の外ってこと
茅野 え?
片桐 蚊帳の外
茅野 私の外?
戸山 熟語の方だよ
片桐 熟語の方だよ
茅野 あ、ハモった
戸山 あ、着いた
立方体の奥の方に立つ。手前の照明は暗く、奥は明るくし、明暗をつける。
片桐 …ここか、なんか宝箱みたいだな
茅野 うわぁ、懐かしい
戸山 ここで、誰かさんが頭ツッコんで怪我したのは覚えてるんだけどな
茅野 ねぇちょっと
片桐 え、なに、怪我したの?
茅野 うん、頭三針縫った
片桐 大怪我じゃん、え、大丈夫なの?
茅野 まぁ、なんとか? ほら、人が来ないうちに入っちゃおうよ
片桐 え、うん
戸山 じゃあ私先行くよ
立方体の上でほふく前進したり、体をくねらせ、転がして、入る。
戸山 早く来なってー
茅野 じゃあ次、片桐ね
片桐 なんで俺なんだよ
茅野 いいから
片桐 茅野行けって
茅野 はぁ…察し悪いな
片桐 え?
茅野 今、二人っきりになるチャンスでしょうが
片桐 …え?
戸山 おーい!
茅野 ちょっと、そういう雰囲気になってもいいじゃないの? 片桐、家出るときほんのちょっとは期待してたんじゃない?
片桐 …それは
茅野 元カノが地元の花火大会にいて、会ってちょっと話して、天文学的な確率で、なんかいい感じになって、もしかしたら復縁できるかも、なんて…
片桐 …いいのかなぁ?
茅野 いいんじゃないの? 私はほら、人が来たから、もう少し経ってからってことにしていいからさ
片桐 まじ?
茅野 まじ
片桐 茅野、お前いいやつだな
茅野 …(親指を立ててる)
戸山 ねぇ!
片桐 あ、お前どうするんだよ
茅野 私は後から行くよ、大丈夫、頃合いを見て出てくるからさ
片桐 おお、わかった。行ってくる
茅野 グッドラック
戸山 ちょっと、二人で何話してんの、ほら早く!
片桐 今行く!
立方体を転がり落ちる際に、手間の照明を明るくし、奥を暗くする。
片桐は腰を打つ。
片桐 いった!
戸山 え、大丈夫?
片桐 ゔん…なんとか…いてて
戸山 ほら、茅野も!
片桐 あー、茅野は後からだって
戸山 え、なんで
片桐 俺が入る直前に人来ちゃってさ、それで、多分、ちょっとしたら来るみたいなこと言ってた
戸山 へぇ
片桐 だから先行っててだって
戸山 …ほんとに?
片桐 ほんとだよ。命かけれる
戸山 すぐ命かけないで
片桐 がちで
戸山 …わかったよ。じゃあ先屋上向かっちゃおう
片桐 うん
戸山と片桐は下手に去る。
Act 7 怒り
上手から難波と元木が来る。
難波 お、やっぱ空いてんじゃん
元木 うわぁ風気持ちいい
難波 それなぁ、最後ぐらいはここで見たって罰は当たんねぇよ
元木 そうだね…(ドアを閉める)てかさ
難波 うん?
元木 いつまで続けんの?
難波 え? 何が?
元木 …この関係
難波 え、気が済むまでじゃないの?
元木 気が済むまでって…なんだ、真面目に考えてなかったんだ
難波 いやまぁ、ひと夏の恋ってやつ?
元木 …そっか
難波 なんだ急にどうしたんだよ
元木 …てか私知ってるよ
難波 あ、なにさっきのこと?
元木 そう、茅野から聞いたんだけど、難波さ、大学行ってないんじゃん
難波 は? え、なにあいつと繋がってんの?
元木 うん、予備校で女食い散らかしてるって聞いたけど
難波 …っち、口軽いなあいつ
元木 …
難波 …はぁ、わかったって、そうだよ、浪人してる。だからなんだよ?
元木 …
難波 なんだその反応
元木 …
難波 怒ってる?
元木 いや、別に、後悔はしてる
難波 なんだそれ、楽しくなかったって言うの? あんだけ遊んどいて?
元木 …
難波 お前が好きだったのは俺の大学のステータスだったんじゃないの?
元木 …
難波 黙ってちゃわかんないよ
元木 あんたいろんな人に東京の大学に進学したって言いふらしてるらしいじゃん、いいの? 私、別にこれ広めることもできるんだよ? 本当は浪人して、予備校で女食い散らかしてますって
難波 は? …あー、ね。え、何? 俺は女遊びしちゃいけないってわけ? それはそっちのエゴでしょ
元木 え?
難波 だって俺と離れることもできたんだから。そのこと知ってて俺の傍にいたわけで、真剣じゃないってわかったら、俺の弱み握ったつもりでちょっと脅してみよっかなって? ちょっと考えが甘すぎじゃない?
元木 で、でも、あんたに何ができんの?
難波 俺、茅野の秘密知ってるよ
元木 …それが、どう関係してくんの?
難波 鈍いなぁ、だから、元木が俺のそれを暴露したら、俺が茅野の暴露話をしてやるよ
元木 …え?
難波 これは想像できるしょ。もしそうなったら、お前は茅野との関係性が悪くなって今まで通りには戻れないだろうなってこと
元木 …わかった。もうなんでもない、花火見たら帰るから、もう二度と、会わないから
難波 …あっそ、好きにすれば? 早く彼氏のとこにとんぼ返りしろよ
元木 …
上手から、柿沼が出てくる。柿沼はパイプのようなものを持って、難波と元木の頭を殴る。
暗転。
Act 8 回想ごっこ
立方体を舞台中央に運ぶ。戸山と片桐が上手からやってくる。舞台にはその二人のみ。明転。舞台の縁をグルグルと歩く。
片桐 うわー、なんか初めて入った心地しないわ
戸山 あー、中学校とほぼ形一緒だからね
片桐 え、そうなの?
戸山 うん、ほら、校長も確か兄弟で
片桐 あー、そんなん喋ってたな、マリオとルイージみたいな
戸山 なにそれ、男子だけでしょ
片桐 そうっぽい、でも、すごいね、ほんとに構造一緒じゃん
戸山 中学に無いのはダストボックスぐらいかな
片桐 そうなんだ。えっと、こっちか
戸山 いや、多分、もう一個上かも
片桐 三階だっけ
戸山 そうだね
もう一周する。
片桐 ここか、えーっと、屋上の階段って、確か中央階段からだっけ?
戸山 そうだっけ
片桐 あれ、中学校と一緒なら中央のはず
戸山 あ
片桐 え…あ、ここの
戸山 うん、水飲み場っていうか、手洗い場
片桐 ここか
戸山 …
片桐 …なぁ、ちょっと、あの日の再現してみない?
戸山 え?
片桐 いいから、今日ぐらいでしょこんなことできるの
戸山 …マジ?
上手側から、片桐が立方体の前を通るようにして、下手側の奥にある水飲み場に向かい、手を洗っているマイムをする。
戸山 本気?
片桐 …うん
戸山 …はぁ
後を追うようにして戸山が同じルートを通る
片桐 あれ、戸山じゃん
戸山 あ、うん、片桐…
片桐 ん? 次は確か元木の番だよな、急がないとパスされるって
戸山 ねぇ
片桐 …ん?
上手から茅野が来る。茅野は、立方体の前を通ろとするが、戸山の姿を見て、身を引っ込め、もう一度壁から覗き込むように二人を確認すると、壁に寄り掛かるように下手側の立方体に座り、盗み聞きをしている。
戸山 あのさ、私
片桐 うん
戸山 片桐のことが好き、付き合ってほしい
片桐 …ごめん、ちょっと、また後で言うわ
戸山 …
片桐 …
戸山 なんで、二回も振られなきゃいけないの
片桐 いいじゃん、どうせ…
戸山 どうせ、この帰り道告られるから、でしょ
茅野は驚いた表情をする。
片桐 覚えてるんだ
戸山 覚えてないわけないでしょ。なんであの時振ったの?
片桐 …なんでだろう。もしオッケーして戸山に騒がれてここの先生にバレたら困るからかな?
戸山 っは、甲斐性なし!
片桐 ごめんって
茅野が立方体の前を通って、二人をびっくりさせる。
茅野 わっ!
片桐 びっくりしたぁ
戸山 びっくりしたぁ
茅野 あ、ハモった
戸山 ちょっと、来てたんなら言ってよ
茅野 ごめんごめん、お取込み中だったみたいなんで(ニヤニヤ)
戸山 ちょっと
片桐 なんでもないって
茅野 ふーん
戸山 もう、先行くよ!
茅野 はいはい
片桐 てか、来れたんだな(耳打ち)
茅野 …(親指を立てる)
片桐 …かっけぇ
三人は雑談しながら一周して、階段にたどりつく。
片桐 やっと着いたぁ
戸山 やっとって、あんたがバカなことしてるからでしょ(片桐を軽く蹴る)
片桐 痛っ
茅野 あ、ドア空いてる…
茅野がドアを開けるマイム。
暗転。
Act 9 屋上
舞台には、難波、元木、柿沼の三人。下手側は、難波と元木が花火の火薬などでグルグル巻きにされている状態。柿沼は下手側の立方体に座っている。下手のみ明転。
難波 う…痛てて(目覚める)
柿沼 そっちもようやくお目覚めか(スマホでメッセージを送り、ポケットに入れる)
難波 …は? え、柿沼?
柿沼 うん
難波 え、なにこれ、くっそ取れねぇ、てかここどこ!?
元木 …諦めなって
柿沼 ただの小屋だよ
難波 元木、おい、どうなってんだよ…
柿沼 意味ないって
難波 は? え、なにこれ、お前何してるかわかってる?
柿沼 …うん
難波 早くほどけよ
柿沼 ほどくわけないでしょ
難波 …元木、お前ハメたな?
柿沼 いや、偶然
元木 偶然でこの仕打ちね
柿沼 当たり前だろ、浮気してたんだから
難波 え、なに、元木の彼氏って柿沼だったの?
柿沼 うん、中学から付き合ってた
難波 …まじか
柿沼 …全部お前のせいだよ
難波 んで、彼女盗られたからってこの報復? 爆発させようって? いくらなんでもやりすぎだろ
柿沼 いいや。それだけじゃない。君が六年前にしたことを覚えていて、ただ、反省してれば助かるんじゃないかな
難波 は? 覚えてるわけねぇだろ
元木 ちょっと、刺激するようなこと言わないでよ
難波 なんで
元木 なんでって…ワンチャン私たち花火になっちゃうんだって
難波 は? 花火? …え、まってこれ
柿沼 親父から借りてきた爆薬と花火。お前らを爆破させた後、俺もそれに巻き込まれて消える。一瞬だよ
難波 …っは、お前にそんな度胸ねぇだろ
柿沼 …試してみる?
元木 …柿沼
難波 …おい、まじかよ
柿沼 おおまじだよ、俺さ、もういいんだよ。浮気とかいじめとか、そんな過去の話。俺が今もう興味あるのはさ、爆破。爆破だよ爆破! 流石に俺一人じゃ無理だったよ
元木 え…誰?
柿沼 これ、なんだと思う? (兎のステッカーが付いたガスバーナーを取る)
難波 …
上手から片桐と戸山と茅野がやってくる。下手側は口パク。上手のみ明転。
片桐 すげぇ、風気持ちいい
茅野 うわぁ、めっちゃ見渡せる!
戸山 みんな小っちゃいね
片桐 おい、フェンス近づきすぎると危ないって
戸山 あれ、ここ
片桐 ん?
戸山 非常階段なんてあったんだ、え、ここから来ればよかったんじゃない?
茅野 あ、非常階段ね。いやでもほら、下の方は鍵かかってる
戸山 あれ、ほんとだ
茅野 結局ここしかなかったみたい
片桐 しかも、結構錆びてるしだいぶ危ないだろ
茅野 来年取り壊されるぐらいだしね
戸山 そっかー…あれ、あそこに小屋なんてあったっけ
茅野 え?
戸山 うん、ほら
片桐 あれは元からなかったやつなの?
茅野 …聞いたこともない
戸山 しかも、人、居そうじゃない?
茅野 あれ、なんか声聞こえる
戸山 え、怖
片桐 …行ってみようっか
戸山 ちょっと本気?
片桐 いやだって…事件性があったら怖くない? それに、もし学校の関係者なら謝ったほうがまだ罪和らぐし
戸山 まぁ、それはそうかもだけどさ…
片桐 茅野、一旦スマホで撮影の準備
茅野 え、あ、了解
戸山 ええ? 撮影ってなんで
片桐 一応ね、何かあった時のために
戸山 何かあった時って…じゃあ私は?
片桐 え、あー、喧嘩になったら止めてほしい
戸山 女の子人一人に任せる普通?
片桐 何もない限り大丈夫だから、それにほら、吹奏楽部だったし
戸山 そうだけど
片桐 ね?
戸山 ね、じゃないよ。え、ほんとに
片桐は立方体に乗って、扉をノックするマイム。全体を明転。
片桐 あの、すみません
元木 この声!
難波 片桐だ!
柿沼 おい次喋ったら、火、つけるからな
元木と難波は黙ってうなずく。柿沼はバーナーをポケットにしまい、扉を外に開けるマイム、半開きで顔が見えるほどの隙間で。
柿沼 …はいはい
片桐 え、柿沼!?
柿沼 …片桐
片桐 あ、ごめんごめん、なんだ、柿沼だったんだ
柿沼 なんだってなんだよ、てか、なんでいんの?
片桐 あー、実は…その、屋上で花火見たくて
柿沼 ここ立ち入り禁止でしょ
片桐 それはお前もだろ
柿沼 俺は、ほら、花火の監督者だから、特別にな
片桐 え、そうなの
戸山 そんなわけないでしょ
中にいる元木と難波は逃げようと、ゆっくり立ち上がる。
柿沼 …誰だ?
戸山 戸山だよ
柿沼 戸山? え、中学の?
戸山 そうだよ
茅野 茅野もいますけど
柿沼 …茅野、お前ら花火見に来たのか
茅野 そうだよ
柿沼 …そうか
元木と難波が柿沼に体当たりし、のしかかる。
難波 おらああ!
柿沼 いってぇ…くそ! お前ら!
戸山 え、えぇ!?
片桐 難波、元木!
難波 おい、片桐! 早くこいつのポケットからバーナーを取ってくれ
片桐 バーナー!? え、あ、分かった! 戸山! 俺が柿沼を抑えるから、ポケットからバーナーを奪え!
戸山 わ、わかった!
茅野 …
難波 茅野お前撮ってないで俺たちのこれほどいてくれよ!
茅野 あ、ごめん
片桐は柿沼を押さえつけながら、戸山は柿沼のポケットからバーナーを奪い、茅野は難波と元木に絡みついた爆竹やら花火をほどく。片桐はずっと柿沼を押さえつけている。
片桐 はぁはぁ…
茅野 よし、なんとかほどけたよ!
片桐 ナイス!
難波 あぁ、いってぇ(手首をさする)
元木 ごめんね、ありがとう
難波 …お前ら屋上きたんだ
茅野 私と戸山、片桐に誘われちゃって
片桐 やっぱ花火、見たくなってな
難波 やるじゃん
柿沼 …いってぇ…あぁ、くそっ!
元木 そっか、わかった
茅野 え、なにが?
元木 ダストボックスの鍵壊したの、柿沼でしょ
柿沼 …そうだよ
片桐 なんでこんなことを
難波 そうだよ、なんで俺たちが屋上に入ることがわかったんだ
柿沼 お前らの考えることなんか手に取るようにわかるよ! 単調だもんな! もし、行き止まりの道があって遠回りしなくちゃいけないとき、立ち入り禁止の裏道があったらそこに入るだろ!
難波 …
片桐 おい、図星なのかよ
柿沼 だから、その裏道を用意してやっただけだ、ちょっとの賭けだった
茅野 いや、まって…あのダストボックスの行き先知ってるのって、ここの小学校の出身の人だけでしょ。なんで知ってんの?
片桐 そうだ。俺も今日初めて知ったってのに
柿沼 うるせぇよ、関係ないだろ。もう俺は、こいつらに復讐できればそれでよかったんだ
難波 こいつ、俺らを殺すつもりで
柿沼 ほんとに殺すつもりなんてなかった! ただ、反省してほしかった、罪を自覚して、俺に、謝ってほしかった
難波 だから何をだよ!
柿沼 そういうところだよ、俺は、覚えてると思ってた、だからそれだけが一つ残りだよ
元木 ごめんねって
柿沼 …もう、元木には、純粋に花火を見てほしいなんて言えないよ
元木 …
柿沼 しかも、茅野には動画撮られてるだろ
茅野 ばっちし撮ってる
柿沼 もう俺、詰んだんだよ
片桐 そんなことないって、まだ、まだやりなおせるだろ…
柿沼 無理だよ
片桐 無理なんて言うなよ、お前にはまだ花火があるじゃん! 俺には…
柿沼 俺には?
戸山 片桐…
柿沼 俺、まだやり直せるかな?
片桐 全然できるって
難波 いや、全然納得できないってこいつ、俺らのこと殺そうとしたんだぞ!?
元木 そうだよ! こいつ私らのこと小屋に閉じ込めて脅したんだよ!?
片桐 でも、ここにいるやつら全員不法侵入だろ。しかも茅野が動画撮ってるだろ
茅野 がっつり撮ってる
柿沼 はぁ…もう無理か
茅野 …あのさちょっときになったんだけど、そのガスバーナーもしかして斎藤さんが使ってたやつ?
戸山 …あっあの!
元木 あの兎の!
難波 あっ!
茅野 え、元木たちも観てたの?
難波 ああ、なんとなく通ったら大道芸やってて、遠くから見てたけど…まさかあいつが
片桐 お前らずっと何かを遠くで見てるな
柿沼 …そうだよ
茅野 やっぱり
片桐 大道芸って…あの、夏目がやってるってやつ?
柿沼 …
戸山 そうだよ。え、隣にいた兎の着ぐるみの斎藤さんって、柿沼だったの?
柿沼 …俺さ、もう手遅れなんだよ
片桐 だから手遅れじゃ
柿沼 呼んでるんだって
片桐 呼んでるって、誰を?
SE:ドアが開く音。
Act 10 兎
全員が上手に注目する。
夏目 あれ、思ったより人いいっぱい
米倉 …
上手から夏目と米倉が出てくる。
戸山 夏目ちゃん!?
夏目 わ、さっきぶりだね
難波 兎だ! え、どうなってんの!? あの兎は柿沼だったんじゃないのかよ!
元木 どうやらちがうみたいだね
夏目 え、斎藤さんが柿沼君ってこと? なんで?… あ、それか
戸山が握ってるガスバーナーを指差す。
戸山 え?
夏目 柿沼君に貸したんだよ
戸山 貸した?
柿沼 そう、貸してもらったんだ。お前らを解放した後、ちゃんと返そうと思ってたけどな
片桐 え、てか、夏目?
夏目 おお、片桐君だ、久しぶり
片桐 久しぶり…マジシャンってマジだったんだ
夏目 うん、マジマジ
片桐 軽っ
茅野 …いや、なんで誰もこの兎にツッコまないわけ?
全員が兎に目を向ける。
夏目 まぁ、もういいんじゃない? 先生
米倉 …
米倉は兎の着ぐるみを頭から外して脱ぐ。
米倉 久しぶりだね
片桐 え、誰?
難波 …あ
茅野 …え、もしかして
元木 …米倉
戸山 …米倉先生
米倉 久しぶりだねみんな
戸山 え、夏目ちゃんの先生って
夏目 ん? だから言ったじゃん、先生だって
戸山 いや、そのマジックの師匠的な意味での、先生かと思った
茅野 私も
夏目 あはは
片桐 ごめん、俺だけピンと来てない
柿沼 …あの人だよ、学校の鯉にパンあげて、そのせいで謹慎食らってからみんなにずっといじられてる先生
片桐 え、あの人!?
米倉 そのあの人です。ずっと言われてきたからね
片桐 サマーアイズの名付け親!
米倉 えへへ照れるよ
戸山、元木、茅野、ドン引き。
夏目 …先生、そろそろ
米倉 あぁ、スイッチ貸して
夏目 はい
米倉 ありがとう
米倉は夏目からスイッチを渡される。
難波 …え、なんですか
柿沼 難波…お前を恨んでる人間は一人じゃないってことだよ
難波 いや、だから何の話…
米倉 六年前、うちの小学校に君たち不法侵入したろ
全員無言になる。
米倉 あの時な先生、鯉にパンやりすぎてたこともあって、君たちの不法侵入の件で、一発レッドカード食らってな、職を失ったんだ。先生も初めてだよ、鯉にパンのやりすぎて後悔したこと
片桐 …
米倉 妻とも離婚して、もう五年は子供と会ってない。なんで俺がこんな仕打ちを受けなくちゃいけない? だから考えたんだ。夏目と考えて、なんとか、復讐できないか
全員、夏目に目を向ける。夏目はケロッとしている。
米倉 あぁ、安心してほしい。殺すとまではいかないよ、ちょっとね、やってもらいたいことがあるんだ
片桐 …なんですか
米倉 偶然にもあの時の全員がここにいるからさ、みんなに謝罪を求めたいと思う
ボタンを押す。SE:爆発する音。照明が点滅する。
全員がたじろいだり、悲鳴をあげる。屋上のみ火事。
戸山 …爆発
夏目 …えっと、うん爆発
難波 爆発!?
元木 いや、そんなバカげたこと…どうせ夏目のマジックかなんかでしょ!
夏目 そうなんだけど…先生
米倉 いや、僕にもわかんない…えっ? 夏目ちゃん、音だけじゃないの?
茅野 てか、そこ燃えてない!?
難波 火事!?
片桐 このままだと、いずれここまでくるんじゃないのか!
戸山 救助は!
柿沼 多分もう呼ばれてるけど時間が無い!
元木 噓でしょ…
戸山 え、屋上だけ!?
夏目 …屋上だけ、のはず
戸山 はず!?
片桐 いや、この火事があの小屋に移ったらやばくない?
柿沼 多分、ここ一帯、瞬間的な爆発でいったら全員が大けがする
元木 つまりどういうこと?
柿沼 ここで今よりも大きい爆発が起きるってことだよ!
元木 やばいじゃん
柿沼 片桐、もう抑えなくていいよ、どうせ何もできないんだから
片桐 あぁ、ごめん
柿沼は起き上がる。米倉は腰を抜かす。夏目はただ茫然としている。
夏目 …あっ!
戸山 なに!
夏目 そうだ、ごめん…火薬の量ミスった
片桐 火薬の量ミスった!?
難波 はぁ!? お前何してんだよ!
夏目 いや、先生が、難波を懲らしめるためのアレだからって、マジックの演出としてどうにかなる範囲でやる…つもりだった
難波 …やりすぎだろ
茅野 つもりって
米倉 あー、やっちゃったなぁ
柿沼 …思惑が外れたらしいけど、とりあえず、さっききたドアから逃げよう
茅野が上手に近づいてドアを開けようとするマイムをするが、開かない。
茅野 えっ開かない! 開かないよ!
米倉 多分、さっきの振動で扉の枠が歪んで開かなくなってる
元木 そんな…
米倉 …非常階段だ!
難波 非常階段?
戸山 ほらこっち!
難波 あぁ!
全員が非常階段(半周して、立方体の上に乗ってみんな飛び越えていく) に向かうが、最後に片桐が乗った瞬間壊れそうになる。
元木 どうしたの!? 早く!
難波 おい、死んじまうぞ!
片桐 いや、行けない
戸山 …もしかして
片桐 俺がこれに乗ったら壊れちまう
元木 そんな
柿沼 …っち
柿沼が戻ると、全員が戻ってくる。最後に米倉。みんな座り込んだり立ってたりする。
戸山 えぇ、もうどういうことなのこれ(しゃがみ込んで、手で顔を覆う)
茅野 落ち着いて(背中をさする)
片桐 待って、一旦、まとめよう。ひとまず、この人数で、一気に乗ったらあの階段は壊れる
米倉 …老朽化のせいだな
夏目 そうですね
茅野 耐久的にあの非常階段は七人までってこと?
元木 多分ね、一気に乗ったら階段が穴だらけになっちゃう
夏目 うん、六人でもちょっと怖いかも
難波 とりあえず、全員乗っちゃダメってことだよな
片桐 それはさっき言った
難波 えっと、じゃあ最短ルートは? 七人行って次に一人?
片桐 いやだから、えーっと体重と、男女、人数も考えた方がいいから…
元木 …六人
難波 …あーもう、こんなこと考えてる時間がもったいなくね!? 全員死ぬかもしれないんだぞ、せめて、もうここに残る人間を決めた方が早くない!?
片桐 おい! それはないだろ! 全員生き残る方法があるはず!
夏目 そうだよ!
元木 …あっ! だから、一人行って、次に二人行って、その二人が半分以上行ったの見かけたら三人行って。その三人が半分行ったら、最後の二人が行けばいいんじゃないの? そうしたら、前半の三人がいなくなってるから、七人が限界だとして、六人でギリギリなはず。だから、これだと、ずっと、六人以内をキープして安全に階段降りれると思う
片桐 さすが学年一位
元木 中学の時だけね
難波 あーもう、そんな時間あると思うか!? 大体、そんなの降りるスピードで変わるだろ
元木 …いや、そこなんだよね
茅野 何か方法はないの?
片桐 先生は何かありませんか!?
米倉 えっと、みんなに任せます
片桐 くそっ! …えーっと、だから
柿沼が手を叩きながら立ち上がる。
柿沼 …まぁ、いいんじゃないか
片桐 …え?
柿沼 難波が言った、誰かひとりここに残る…そうだ夏目、トランプ持ってるよな
夏目 え、あぁ、持ってるけど
片桐 …お前
柿沼 あの時みたいに、大富豪をして決めようよ
茅野 何言ってんの?
元木 …めちゃくちゃだよ
柿沼 じゃあ他に方法があるって言うのかよ! 時間がないんでしょ、じゃあこの方法でキッチリ勝負した方がいいんじゃん、最悪全員死ぬことになるかもしれないんだからさ!
全員が黙る。
柿沼 ほら、夏目、配れよ
片桐 お前なんかキャラ変わった?
元木 あんた正気?
柿沼 …正気じゃないからやるんだよ
夏目 …
茅野 …柿沼
柿沼 みんな、集まって。ほら、戸山も
戸山 …うん
柿沼 先生も含めて、あの日みたいにさ
米倉 …まぁ、ワンチャンあるならやるか
難波 ワンチャンって…俺のことかよ
米倉 …
難波 くそっ、絶対勝ってやる
柿沼 そうだ夏目
夏目 ん?
柿沼 配る量、ミスんなよ
夏目 …気を付ける
全員集まって、大富豪を始める。夏目はシャッフルしている。
柿沼 まぁ、真剣勝負だから、恨みっこなし。誰が負けても、な
全員座って、夏目が配るトランプをずっと見ている。
Act 11 大富豪
柿沼 じゃあ、始めよっか
全員、配られた手札を見る。
柿沼 じゃあ、ハートの三から時計回りで
片桐 俺持ってるわ、じゃあ、俺からで…
真ん中でにトランプを捨てていく。
片桐 柿沼、なんで、こんなこと
柿沼 お前にはわかんねぇよ
片桐 …
難波 あーもう、くそっ
戸山 …
茅野 …だめだ、頭回んない
夏目 この状況なら普通そうだよ
米倉 …ほんとだよ、こんなことなら柿沼君に教えなければよかった
元木 …え?
夏目 先生っ!
米倉 いやもうみんな、薄々勘づいてるでしょ
夏目 …
柿沼 まぁ、今それを言ったところでって感じですけどね
片桐 もういいよ、あんたらグルだったんだろ
柿沼 あ、八切った。そうだよ、俺と米倉先生と夏目、それに茅野
茅野 っ!?
難波 茅野!?
戸山 え、どういうこと?
茅野 …いや、それは
元木 難波の抱えてた暴露ってこれ?
難波 いや違うけど…
茅野 え、あんた何話そうとしてたの?
難波 お前が…サブ垢で
茅野 …
難波 いや、あの、中学校の時片桐のことが好きだったって
片桐 …え
茅野 …はいクイーンボンバーで、二持って人は捨ててください
二を持ってる人はそれを捨てる。
茅野 いや、あの、中学のときね
難波 あ、だから、戸山と片桐がトイレ行った時同じタイミングで
元木 バカっ! ちょっと黙ってて
難波 はい
元木 まぁ薄々わかってたけどさ
片桐 え、わかってなかったの俺だけ!?
茅野 わかってなかったんだ
米倉 君は鈍感なんだね
茅野 先生入ってこないでください
米倉 はい
元木と米倉が上がる。
元木 私上がり
難波 早っ!
米倉 実は僕も
難波 早っ! くそっ!
柿沼 上がった人は後ろで待機しててくれ
戸山 …
片桐 …
夏目 あ、じゃあ、七渡しで、はい柿沼君で、はい上がり
柿沼 …っち
難波 ざまぁねぇな
柿沼 …今残ってんのが、俺と、戸山、茅野、難波、片桐か
元木 私たち、もう階段行っていい?
柿沼 責任もって最後まで見届けようよ、てか、普通に最後誰が残るか気にならないのかよ
元木 …
難波 おい夏目、これ俺のやつ枚数多いんじゃないか?
夏目 そんなわけないよ! ちゃんと数えて配ったよ
難波 ほんとかよ
片桐 あんまピリピリするなよ
難波 この状況はするだろ、くそ
茅野 …
戸山 ねぇ
茅野 …なに
戸山 …いや、なんでもない
茅野 …
柿沼 あ、上がった
難波 くそっ
戸山 …私も
茅野 …
片桐 残り三人か
難波 …片桐、協力しねぇか
片桐 は?
難波 二人で、こいつをはめるんだよ。簡単だ、こいつにターンを渡さなければいいんだからな
片桐 だからってお前、それは…
茅野 いいよ別に…
柿沼 ほんとに?
茅野 …
米倉 おいもう時間がないぞ!
元木 もう、行くよ私達
柿沼 待てよ!最後まで見届ける責任が俺達にはある
夏目 …あんた、狂ってるよ
柿沼 …知らねぇよ
少しの間。
片桐 …くそっ
難波 よっしゃっ! 上がったぁ!
難波は上がった組のところに近づく。
米倉 っち
難波 おい今舌打ちしやがったな
米倉 まぁまぁ
元木 落ち着いて、ここで喧嘩してもでしょ
難波 …くそが
後ろで上がった組は口パクで会話している。
片桐 なぁ
茅野 …うん
片桐 最期に聞いてほしくて。俺さ、本当は大学中退してんだよ
茅野 …え
片桐 うん、普通に。ちょっと、いろいろあってさ、めんどくさくなって、一か月前ぐらいかな、そこらへんで自主退学。そんで、なんか起きないかなと思って、ふと、この、地元の花火大会に寄ってみたんだよ
茅野 うん
片桐 そしたら、いろんな同級生に会えてさ、いろんな事やってて、元気そうで、俺、この後どうしようって、ずっと勘ぐってて
茅野 …
片桐 でも、なんか、あいつらに会えて、もう少しだけ生きたいと思ったんだ
茅野 …何が言いたいの?
片桐 …生きたいってこと。あとこれは、なんか、誰にも言えなかったんだけど、俺、中学生のとき茅野のこと好きだったんだよ
茅野 …え?
片桐 中学生のとき、茅野には手が届きそうにないから、ちょっと可愛くて俺に好意を向けてた戸山と付き合ったんだ
茅野 まじ?
片桐 まじ
茅野 …だから、廊下で一旦告白断ったの?
片桐 あれ、なんで知ってんの
茅野 地元って怖いからね
片桐 なんだバレてたんだ。まぁ、こんな奴だったから、高校の時で別れたんだけどさ
茅野 …知ってる、
片桐 あれ、じゃあブランコの件も…
茅野 全部聞いた。…あー、ほんとは戸山のことあんまだったんだ
片桐 …どうだろ
茅野 もしかして、重めなメンヘラぽかったのも全部…あはは、聞き分けがいいね
片桐 …再会したらなんかうまくできないかなとか思ってたけど、もういいんだよ、疲れた。こんなこと誰にも言えないだろ、でも最後ぐらい、いいよな
茅野 …サイテーだね
片桐 …上がり
片桐は立ち上がって、他の人間が茅野に近づく。
Act 12一人
柿沼 じゃあ、茅野…
茅野 …いいよ、てか全然、みんな気負いする必要ないからね
片桐 茅野、その、ごめん
茅野 …いいって
戸山 …ごめんね
難波 …悪い
元木 …ごめん
米倉 …
夏目 …ごめん
柿沼 …行くぞ
茅野以外が舞台を半周して、立方体を踏んで、上手に消えていく。
茅野 …ここらへんだっけ
茅野は立方体に立ち、下を覗く。
茅野 まぁ、最後は運だね
茅野は着ぐるみを着て、頭を被ると立方体の上に立って、飛ぶ。
飛ぶ瞬間に暗転。SE:水に落ちる音。その数秒後にSE:花火が複数爆発する音。
Act 13 あの日
舞台はキャバクラで茅野のみ。茅野はドレスのような格好で、グラスを持って立方体に座っている。米倉が黒いジャケットを着ており、客に背を見せ、舞台奥側の立方体に座っている。米倉は茅野に合わせて会話しているイメージ。茅野にピンスポ。
茅野 …あはは、そうなんです、それで、下に鯉がいる池があるって知ってたから、飛び込んで、助かったんです。作り話にしては上手いですか? あはは、…作ってないですよ、ちょっと触んないでくださいよ、背中まだ痛いんですから。そうです、去年のことですよ、だいぶ直近かも。え? あー、はい、斎藤さんってよく通ってくれてますもんね、そうそう、大学ですか? 行ってないですよ、高卒で今このキャバで働いてます。前はコンカフェだったんですけどね、はい…え? あー、みんな、死んじゃいましたよ結局。その非常階段錆びすぎてて、落下したそうです。そうだから最初に言ったじゃないですか、あの子たちは地元の花火大会から出られないって
暗転。終。
演劇脚本:試作品2026 にのまえ(旧:八木沼アイ) @ygnm
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