第17話 疑問

———三年の月日が過ぎた。


エディは、名門大学を目指す生徒ばかりが通うハイスクールに在籍していた。

私立で、学費が高いことで有名な学校だが、

エディは無償の奨学金で通っている。


「エディ、お前、いつまでそれ持ち歩くんだよ。」


友達のマイクが言った。


「ああ、これ?」


エディは、腕に抱えた法学書を見下ろす。

まだ新品のそれらの中に、いつも同じ一冊があった。


「これはさ、僕のお守りなんだよ。」


穏やかで、どこか寂しげな笑み。


「ふーん……」


それだけの会話だった。

だがエディは、無意識に本を抱く腕に力を込める。


(ジャスパー……元気でやっているよね。

どこかで、酷い目になんか遭ってないよね……)


エディは、法哲学の項目を読むのが好きだった。

法律そのものの知識よりも、

「法とは何か」

「社会が追求すべき正義とは何か」

そうした問いに、強く惹かれていた。


(正義……

そんなもの、本当にあるのかな。

だって、あの頃、あの時、誰も僕たちを救ってくれなかった)


正義という言葉と、法という概念に、

小さな、しかし確かな疑問が芽生え始めていた。


(僕たちは、知っている。

この世界が、綺麗なだけじゃないって)


エディはこの頃から、

自分の中に生じた矛盾と、静かに向き合うようになる——。


———


リリーは、窓の外を見ていた。


夜の街は、静かで、遠い。

心臓の音だけが、やけに大きく聞こえる。


今日は、薬を飲んだ。

きっと、眠れるはずだった。


——それでも、

目を閉じるのが、少し怖かった。

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