第8話 誰が撃ったのか
「リリー!リリー!」
草むらで「約束」を交わした、その日の夜も、
ジェームズの、悪魔のような声がリリーを呼んだ。
その声がすると、直ぐに行かないと、
「お前が、行くなとか言ったんだろお!
このクソガキがあ!!」
必ず、ジャスパーが酷い目に遭う姿を、
一年間、散々目にした…。
リリーは、無表情で子供部屋を出ようとした。
「リリー!
もうちょっとだ!もうちょっとだからな!」
妹のように思う、リリーを悪魔の元へ、行かせなければいけない、自分の無力さと苛立ちで、
ジャスパーは、強い口調で言った。
エディは、ジャスパーの事がなんでもよくわかった。
(ジャスパーの怒りと憎しみが限界に達してきてる。…僕も同じ気持ちだけど…)
「リリー、ジャスパーがついてるからね!
弱いけど…僕もいるからね!」
エディが、珍しく、ヘラヘラっとおどけた笑みを見せた。
そんな二人を見て、リリーは思った。
(ジャスパーとエディがいる、
二人が私を救ってくれる、あとちょっと…
あとちょっと…)
「いってくるね…。」
一生懸命に作り笑いをし、リリーは部屋を出た。
ジェームズの部屋へ向かう時に、
リリーが二人に声を掛けたのは初めてだった。
(なんかいつもと違う、いつもより長い)
ジャスパーとエディはベッドに横になりながら、同じ事を思っていた。
——いつもと違う時間はまだ続く。
堪えきれず、ジャスパーが言った。
「エディ!」
「うん…」
その時だった、
ジェームズの部屋からリリーの泣き叫ぶ悲鳴が聞こえた——
ジャスパーもエディも全身から汗が吹き出た。
リリーが、なにを言っているのか、
はっきりと聞き取れなかった、
「やめてー!!!
痛い!痛い!やめて!」
今度は聞き取れた。
ジャスパーは迷う事なくジェームズの部屋へと走り、ドアを開けた。
「ジャスパー…」
直ぐに追いかけて来た、エディはハアハアと息を切らしている。
ドアに立つ、二人が目にした光景は——
ブヨブヨに太ってるジェームズが、
リリーに覆い被さっている…
寝巻きのワンピースを腰まで捲られ、
見える範囲からも、太ももの辺りまで、
血まみれだ。
「クソガキがあ!あっち行ってろお!
ぶっ殺すぞお!」
ジャスパーの怒りが爆発した——
リリーに覆い被さっている、
ジェームズを床に引きづり倒した、
そして何発か殴り続けた。
「この変態野郎!
死ね!てめえなんか死ね!死ね!」
そう言いながら殴り続けたが、
やっぱり大人の男には敵わない、
今度はジェームズがジャスパーに馬乗りになり、殴り続けた。
ジェームズは怒り狂い、
ジャスパーへの暴力は止まらなかった。
(——ジャスパーが殺される!)
エディはパニックと涙で滲む目で、
リビングに走った、
ジェームズがキッチンの棚の上に銃を置いている事を知っていた。
震える手で銃をとり、ジェームズの寝室に戻った。
ドアから少し入ったところで、
ジャスパーが瀕死に陥っている事がわかった、
殴られても、もう抵抗しなくなっていたからだ。
(この!この!クソ野郎!!死ね!死ね!)
パーンッ!!
渇いた銃声音と同時に、
ジェームズはジャスパーの上で倒れた。
エディは、銃の使い方なんか知らなかった、
ただ無我夢中だった。
「ジャスパー!ジャスパー!ジャスパー!」
ジェームズの下からジャスパーを出すのは、
大変だった、それでも痩せっぽっちのエディは、全力で頑張った。
ジャスパーを、なんとか引きずり出し、
息をしている事を確認し、ホッとした。
ベッドへ駆け寄ると、
リリーは生きているようだが、下半身は、
血だらけだ。
(このままじゃ、出血多量で死んでしまう!)
エディは、ジェームズのスマートフォンに手を伸ばした——
「…エディ…まて…」
ジャスパーが言った。
スマートフォンを持つ手が震える。
「エディ…こっちに…」
エディはジャスパーの傍にいき慌てて言う。
「ジャスパー、早く、早く、救急車を呼ばないと、リリーが、リリーが、」
「わかってる…、
そのまえに、お前に約束してほしいことがある…」
肋骨も折れているのだろう、
喋るのも苦しそうだ、顔は…ジャスパーの原型をとどめていない程、酷かった…。
泣きながらエディは次にジャスパーが話すのを待っていた。
「いいか、」
「このブタ野郎は…」
「俺が、撃った、おまえはなにも、していない…」
「いいな、ぜってえに、約束をまもれよ、わかったな…」
「なに言ってるんだ!アイツは僕が殺した!」
「エディ…エディ!シーシー、
黙って聞け、アイツを撃ったのは俺だ、お前は、勉強して、弁護士、に、ならなきゃ、いけねえ」
エディは、警察や救急の隊員に本当の事を話しても、ジャスパーはジャスパーで自分がやったで押し通す事をわかっている。
「銃をもってこい…」
ドアの近くに落ちてる銃を持っていく。
ジャスパーは、自分の服で一生懸命にエディの指紋を拭いた。
そして最後に、ジャスパーは銃を握りしめた。
エディは泣きじゃくった——
「エディ…お前は、りっぱな弁護士に、
ぜってえ、なるんだ…
さあ、電話しろ!はやく、リリーがやばいぞ…」
エディは、
惨めで悲しかった、いつもジャスパーに守られている。酷い目に遭うのは、いつもジャスパーだ。
ジャスパーがこうと決めたら、
変えない事は、エディが一番知っている。
エディは、救急に電話をした——。
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