第5話 エディの夢

リリーが、やって来て一年が経った——。


変わらぬ日常、


お腹を空かせ、

暴力に耐える日々、


唯一の救いは、学校へは通わせてもらっている事くらいか。

いや、救いというには虚しいか。


学校へ通わせていない事が知られると、里親の資格を剥奪されるからだ。


ジェームズは、市の定期訪問がある日は、朝から酷い苛つきようだった。

定期訪問前の2週間くらい前からは、ジャスパーに暴力を振るうのを堪える徹底振りだ。


三人とも、いつも思っていた——


(役所の人に、全て話したらいいんじゃないか?)


三人で、その事についても何度も話し合った。

リリーは、黙って聞いている。

ジャスパーとエディが必死に意見を言い合う。


最後は、


(役所に知らせてしまうと、ジェームズは資格を剥奪され、それなりの処罰は受けるだろうが、その結果、三人はそれぞれ別の里親の元へ行く事になる)


この頃には、ジャスパーとエディの絆にリリーも紡がれていた——。


三人、ばらばらになるくらいなら、今の方がマシだと。

驚く事は、リリーも本当にそう思っている事だ。


気持ち悪い、耐えられない、

恐怖の時間よりも、

ジャスパーとエディ、二人と離れる事の方が今では辛く感じている。



同じスクールに通う三人は、

ランチタイムなど、休み時間は必ず一緒に過ごした。


エディは、読書が大好きだった。

クラスでは、一人で読書をしている、

そんなエディを意地悪なクラスメイトの男子がよく揶揄ったり、

「家なしっ子!」

などと言われ、軽く叩かれたりもした。


そんな時も、エディはグッと我慢をした。

ジャスパーに言えば、ジャスパーのとる行動をわかっていたから。

結局は、ジャスパーがエディのクラスメイトに、

「なにかあったら全部俺に教えてくれ」

そう言われていた子から、伝え聞いて、

ジャスパーが帰り道に、仕返しをする——。

そして、誰もエディにはちょっかいを出さなくなる。


ジャスパーは、いつもこうだ、

これがジャスパーだ。


リリーに関してもだ。

リリーは、大人になったら凄い美人になる事は皆がわかるくらい、可愛い顔立ちだ。

リリーに、変な真似をする男子生徒がいないか、常に目を光らせていた。


リリーに恋心を抱く、生徒は沢山いたが、皆、ジャスパーが怖くて、挨拶の声すら掛けれない。

可愛いリリーを妬む女子生徒も、リリーに意地悪な事は絶対にしなかった。

ジャスパーの凶暴さは学校でも、ここら辺いったいでは有名となっていた。


いつも三人一緒の帰り道。


天気の良い日は、あの草むらで道くさするのが、楽しみだった。



ただ、三人で空を眺める時間だ。


エディが突然言った。


「僕は、将来、弁護士になりたい。」


少し間を置いて、エディは続けた。


「……大人の嘘を、全部、本当かどうか調べられる仕事だから。」


他人が聞けば笑うだろう、

孤児で、

あんな最悪な里親の元にいて——。


「ふーん。」


ジャスパーは、ただそう答えた。

リリーは黙って聞いていた。

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