第4話 秘密のディナー

夜になると、いつもリリーはジェームズの部屋に連れていかれた…。


最初の頃は、子供部屋に戻ると、

シクシクと泣いていた。

そのうちには、泣かなくなったが、

恐怖と拒絶を、顔に宿していた——。


初めて、部屋へ連れていかれ、

泣きながら子供部屋に戻った、リリーに、

ジャスパーが一度だけ聞いた。


「あいつに、なにされた!」


リリーは、首を横に振るだけで、

なにも言わなかった…


この日から、ジャスパーもエディも、

リリーには、なにも聞かなかった、

リリーには、聞いてはいけない気がしたからだ。


ジャスパーは、何度もジェームズに、

食ってかかった。


「おっさん!リリーに、なんかしてんだろ!」


「…ジャスパー、お前ってヤツはさあ…」


この後は、いつも酷く殴られ蹴られる。


「ごめんなさい!

ごめんなさい!」


エディが、泣きながらジェームズに謝り、

ジャスパーへの暴力が終わる——。



「クソッ!あの野郎!絶対に許さねえ!」


リリーが、ジャスパーの顔の血を拭く。

自分のために…こんな目に遭っているのだと。


「ごめんなさい…」


リリーが、ジャスパーに謝る。


「なんで、お前が謝るんだ、

お前はなんにも悪くねえ、

悪いのは全部あのクソ野郎だ!」


「そうだよ、リリーはなにも悪くないよ…」


エディが言った。


夢も希望もない——

救いもない——


三人の子供の間に絶望だけが流れる。



「お!そうだ!そうだ!

金持ち御用達のパン屋でいただいてきたぜ!

腹減ってるだろ、食おうぜ!」


ジャスパーは、

ろくに食事を与えてもらっていない、

二人のためによくパンを盗んできた。

最初の頃は、

リリーだけにはいろいろと食事を出してきたが、

最近はリリーにも、まともな食事は与えない。


「美味しいね!」


エディが嬉しそうに言う。


「うまいか?」


ジャスパーが、リリーに聞いた。


「うん。」


二人が嬉しそうに食べてる姿を見て、

ジャスパーは心が満たされた。


「ほら!ジャスパーも食べて。」


エディがジャスパーにパンを渡した。


時々、行われる、

三人だけの秘密のディナーだった。


パンは少し硬くなっていたが、

三人で食べると、不思議と温かかった。

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