猛き矜持をモノにして〜曇らせながらも歩みを止めない不屈の意志、知らぬ間に人々を惹きつける

ともだち(星の物質量)

第1話 マジでイカれた奴

 ――とある日、特に取り柄もなくごく平凡に暮らしていたはずの俺はなぜかヤベー少年ライネ・テル・バルトに転生した。

 記憶を取り戻した時から一瞬でこの体の持ち主はヤバいと気が付いた。

 何がヤバいって、魔法のある世界で誰も理解出来ないような黒魔法を行ったってところ。どうしてか、そんなタイミングで転生して、…………マジで苦労した。


 その場で気分を害して吐いていたら、使用人や父様に見つかってガチ説教(罰も含めて)を喰らった。

 まぁ、マシなところはこの黒魔法を使ったとしても大丈夫という証明をさせてもらえて証拠隠滅もしてもらえたところだ。


 ちゃんとライネの記憶は残ってて助かったぁ!


 喜んだのもつかの間、ライネは黒魔法以外でもあまり良い奴ではなかった。何をされても腑抜けた抜け殻かと思いきや、発狂して傷害事件を起こしたり、ブツブツと独り言を呟いては自傷行為も行う。


 ――俺はこれからどうなっていくのだろうか。


 ◆■◆■◆■


 入れ替わってから二ヶ月が経って、家族からの評価もかなり変わってきた。

 最近では、父様と時折会話するようになった。


「ライネ、お前は最近素行が良くなっていて、私は驚いているよ」

「お父様、今までご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

「お前が黒魔法を使った時、恥を捨てて精神病院へ連れて行こうかと考えていたが、杞憂に終わったことは我が家門の誇りにとっても良かったな」

「あはは」


 良かったぁ〜。精神病院に入ってから入れ替わらなくて。だって、この時代の精神病院とか絶対にヤバいもん!

 父様との会話の最中にペットであるシャンジが飛び込んできた。


「どわっ。こらっ、ジャンジぃ〜。……申し訳ありません。お父様、しっかり躾けておきます」

「いや、いいさ。昔から私達の近くにいて慣れてしまっているのだろう。他の者達の前では大人しくしているしな。庭で遊んできなさい」

「はい!」


 「お母様、外で遊びに参ります」とお母様にも報告してから、庭へ出た。

 やはり、外にいた方が落ち着くな。お父様もお母様もいい人ではあるが、その分自分が息子であるという嘘をつくというのは忍びない。


 シャンジははっきり言って不思議なペットだ。お母様が俺を妊娠した時に現れ、調べてもどういった生物なのか分からない。少しタコのような見た目をしている。

 何故、追い払わなかったのかというと、お母様がこのシャンジを一目見た時に気に入ってしまったらしい。


 最近、お仕事の魔法研究が忙しいのかシャンジを見ても反応しないが。


 プフプフ言っているし、本当にこいつのことは分からないなぁ……。

 シャンジと追いかけっこをしていると、急にシャンジは塀を飛び越えていった。


「またかよ〜」


 俺も二メートル近くある塀をひらりと飛び越えていく。使用人にバレないか心配だが、今までもバレなかったし大丈夫だろ。

 俺の服はしっかりと仕立て上げられていて、町では目立つので裏路地からシャンジを追いかける。


「このままじゃ、スラム直行じゃ〜ん」


 俺の気分はげんなりだ。大抵、この後の出来事は予想がついているから……

 スラムに突入し、スラムとは思えない平凡そうなレンガ造りの家に入る。それから、シャンジはここだと言わんばかりに床に触る。


「俺がやるしか、ねぇなー……」


 床をぶち壊し、地下の部屋へと降り立った。

 黒フードを身に纏った彼等は突然現れた俺達に対して動揺している。


「まぁ、当然だよな」


 う〜ん、人間の生贄発見。邪教徒だな。やっぱり、シャンジの予想はよく当たる。邪教徒――彼等は混沌之神メテイトという神を信奉していて、儀式の中には人族の生贄が含まれており、信仰すること自体アウトなのにわざわざ集団作っている奴らだ。


「【邪法・■■■■の槍】」


 俺は魔法を使って、邪教徒の半分を抵抗不可の状態半殺しにした。


「き、貴様、なんの魔法を使った!? それに邪法だとォ!? 何故、その奇妙な暗黒の力を支配出来る!」

「知らないよ。俺にはさ」


 バキンッと剣の折れる音がした。横を向けば、真っ黒な髑髏ドクロの魂達が凶刃から俺を守ってくれている。

 ――この力もこの世界にはない力。当然、彼等は大混乱に陥っている。


「【邪法・フォースコネクト】」


 黒い魂の内、一つと繋がる魔法だ。この魔法は発動途中生前の彼等の強さを再現させてくれる。

 俺は推定剣士の魂を借りて、刃を向いた男を蹴りで鎮めた。


「ふぅ、やっぱ、この剣士の魂が一番有り難いなぁ。魔法使いだとこの世界にない魔法使うし。……まぁ、力を使えるってだけ凄いけど」


 そこから先は蹂躙だった。この世界の人々は謎の言語で詠唱を始めることが多いから、さして気にする必要はない。

 詠唱破棄自体はライネの知識にあるけど、詠唱破棄とか出来てたら、働き口とかあったろうし


 転生した影響なのか人を傷つけるということに抵抗はない。鎮圧し終えると魂達はいつも俺の側にいてくれる。俺のことを好いているのだろうか……

 そして、次に満腹なシャンジが現れる。


「お前、生贄とか邪教徒食ったりしてねぇだろうなぁ」

「プフプゥー」


 魂達はシャンジが現れると去っていく。たまに残っててくれるが、その場合もシャンジに近づくことは決してない。

 一仕事をやりきれば、大きめの魔力反応を残していくと、すぐに調査班が来てくれる。


 生贄にされかけた人達を置いていくのも辛いが、証言されてはたまったもんじゃない。今、普通の町ではあまり見ないようなタキシードを着ているしな。


 俺は魔法を扱うため、絶対に見つからないよう家に帰った。俺がこの世界に来て、謹慎が解かれてからは一週間に一回こうしている。

 初めて邪教徒に会った時は、魂が守ってくれることも知らずに怯えっぱなしだったな。


 それにしても――邪教徒、多すぎィ!


 ◆■◆■◆■


 あぁ、私は今、信じられぬ光景を見ている。タキシードを来た若き男性が黒き力を以て、邪教徒等を懲らしめている。


「おぉ、神よ……」


 救いの手を差し伸べていただいたことに感謝します。

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