運命の質屋~「あなたの不幸は他人の贅沢の利子です」と宣告された男の強制決済(ロスカット)~
Tom Eny
【鑑定】全人生の絶望、価値は七十五億円。
📜 運命の質屋:幸運の鑑定書、不幸の領収書
1. 傲慢と虚無のカウンター
その質屋には、二つの扉がある。 左の扉、【鑑定窓口:ノモス】。右の扉、【融資窓口:アイ】。
左のカウンターでは、成金・東郷が不敵に笑っていた。 「俺の『未来三十年分の幸運』を鑑定しろ。現金で五十億。それで釣り合うはずだ」 ノモスがモノクルを光らせる。 「……判定。妥当です。ただし返済が滞れば、あなたの幸福な結末は永久に没収されます」 「構わねえよ。担保だろうが何だろうが、さっさと金をよこせ」
右のカウンターでは、瞳の死んだ男・佐伯が札束を受け取っていた。 「アイさん。これで私の『不幸』は全部ですか」 「ええ。あなたの『永遠の孤独』は買い取りました。代償として、付随する『愛の記憶』も全て。これであなたは苦しまない代わりに、二度と何も感じられない空っぽの器です」
東郷が佐伯を指さして笑う。 「不幸を売って金をもらうとは惨めな野郎だ。俺のような勝ち組は、幸運を金に変えてさらに膨らませるのさ」 案内人のアイは、去りゆく佐伯と、増長する東郷を交互に見て微笑んだ。 「ええ、東郷様。ちなみに、佐伯様から回収した『新鮮な不幸』ですが。ちょうど、あなたの借金の一回目の利子として、ある若者に割り当てておきました。名前は、山田。彼がどう壊れるか、楽しみですね」
2. 利子という名の地獄
数週間後、山田は雨の歩道橋にいた。 会社は倒産、婚約者は失踪、身に覚えのない巨額の連帯保証。 そこへアイが現れ、一枚の紙を差し出す。『利子受領書』。 「あなたの不幸は、東郷様の融資の利子として適正に処理されました」 「ふざけるな! なぜ俺が、見知らぬ誰かの贅沢のために人生を壊されなきゃいけない!」 叫ぶ山田の前に、影のような男、佐伯が現れる。 「……無駄だ。システムに怒りは通じない。だが、小僧。……その『怒り』なら、ノモスの窓口で金になるぞ」
3. ハイパー・インフレの逆襲
再び、質屋の扉が開く。 山田はノモスの前に立ち、アイから渡された「利子受領書」を叩きつけた。 「ノモス、俺を鑑定しろ。俺が売るのは、今この瞬間の『絶望』だ」 ノモスが困惑する。「あなたに担保にできる幸運など残っていないはずですが?」 「『幸運』じゃない。アイのせいで全てを失い、佐伯さんのように『一生何も感じられない機械』になることを決意した、俺の全人生の絶望だ。……これは、五十億と釣り合うか?」
静寂。ノモスの天秤が火花を散らして激しく揺れる。 「判定……。山田太郎の絶望、価値は七十五億円。……東郷様の借金残高を大幅に上回ります」 「なっ……!?」アイの表情が初めて凍りつく。 山田は冷酷に言い放った。「規約通り**『強制決済(ロスカット)』**を実行しろ。東郷の資産を全て没収し、俺への支払いに充てろ」
4. エグみと救いの結末
質屋の奥で、東郷の悲鳴が上がる。 「金が消える! 待て、担保にした幸運を返せ!」 「残念ですが、東郷様」アイが冷たく領収書を突きつける。「あなたの幸運は没収。これからはあなたが山田様の代わりに、最愛の人に裏切られ、病に侵される番です。……死ぬことは許されません。利子が完済されるまで、あなたは**『不幸であり続ける幸運』**を与えられましたから」
東郷が闇に引きずり込まれ、山田の手には七十五億円の小切手が残された。 しかし、代償として「絶望」を売った山田の心には、もう一欠片の喜びも残っていない。
「……佐伯さん。これで、良かったんですか」 佐伯は答えず、ただ一輪の萎れた花を見つめていた。
山田は感情のない瞳で、小切手をポケットにねじ込んだ。 彼はその後、東郷からむしり取った金で、理不尽に虐げられた人々を救い始める。 そこに善意はない。ただ、システムのバグを修正するような、冷徹な再分配。
空の青さを美しいと思う心は、もうない。 だが、肺の奥に一つだけ、鑑定しきれなかった「バグ」が残っている。 それは、このシステムそのものをいつか壊してやるという、氷のような殺意。
『毎度あり。……運命は、今日も美しく均衡(ゼロ)になりました』
#AI補助利用
運命の質屋~「あなたの不幸は他人の贅沢の利子です」と宣告された男の強制決済(ロスカット)~ Tom Eny @tom_eny
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます