天命を巡る異術師の怪奇譚 〜空峰和平編〜
紅薔薇棘丸(旧名:詩星銀河)
第1話「公安部からの勧誘」
俺の名前は空峰和平。今年から高校として日常が予定される十五歳。
実際に三月九日を迎えた時点で十六歳となる誕生日がある。受験勉強を乗り越えた辺りから実質の年齢と向き合えた時に年を重ねたんだと言う自覚を持ち始める。内心はズキズキと言う針が刺さるよりも自覚した時のショックが起こす痛みだと言える。
そもそも年齢なんて大して気にもしなかったはずが最近は唸ってしまっていた。それだけ年齢が与える衝撃は強かったのである。
それよりも何となく昨晩に起きた現象を思い出す。それは最近から頻度が高くなって来た。けれど、医者は至って健康だと何度も診断結果を聞かされて疑問は晴れなかった。それ以上に違和感と共に発生する現象が疑問で支配した。
太陽がサンサンと照り付ける日中でも引越しは行われた。荷物は自分で全て運び出して行く作業を余儀なくする。それが俺から体力を奪って汗が大量に流れる。季節は春だったはずだと改めて思っても気温は変わらない。
とにかく引越し作業が行われる中で大きく疲れた時に一人のスーツを纏う男性が訪れる。最初は単純に通り掛かったのだと思っていたが、徐々に休憩中の俺まで接近する様子から目標が自分に向けられていると分かった。
「君が空峰和平くんだね? 少しだけお話があるんだけど良いかな?」
「は? 俺と話したいの? うーん。今は忙しいからなぁ……」
「申し訳ないが途中でも取り合ってもらう。こちらは政府から義務として扱うように言われている。とにかく君の自宅まで案内してくれないか?」
いきなり意味不明な申し出を言い渡される。彼は真剣な表情を浮かべながら言い付けて来たが故に断れなくなって自宅に上げるしかないと判断した。
声を掛けられたから自宅を上らせた俺はリビングでテーブル席に座ってもらう。
スッと静かに着席した男は整った動作を目立たせながら座る。彼が座った正面に着いた後で話を進めて来る。
「少し出遅れたみたいで悪いね? 君を見付けた時には進学が決まっていたんだよ。ん、分からないよな? それじゃあ本題に入らせてもらう」
「は、はぁ……」
知らないスーツを着こなした男性が本題と称する話を始める。真剣を思わせる表情が少し険しくなる。まるで事情聴取を受けている容疑者の立場になったみたいである。
眼光は真っ先に俺をしっかりと向けられながら話し始める。男はどこから見ても抜け目がないようなタイプの完璧主義者。それを強く認識される姿勢と雰囲気を持たせた状態で口が開いた。
「手始めに自己紹介しよう。俺は南雲快次郎と言う者だ。今は目的を明かせないが、話を聞いてもらってから触れて行こう考えている。怪しいと思ってもらうことは構わない」
(怪しまれる前提なら身元ぐらい明かせよ。そこが分からないと怪しく思われるのだってしょうがないだろ……)
内心に留めた独り言は彼が切り出した話から自然と出た疑問だった。踏み込まないが故に内心で留めて置くことしか出来ないところが大きくストレスになった。
取り敢えず男が提示する話を聞いて判断きて行く必要性がある。荷物を運ぶ作業で生じた疲労が休める時間として活用する目的を持つ意味でも良い機会だと言える。
「……けど、話はちゃんと聞いて頂く方針で行きたい。それじゃあ始めよう」
何だか色々と面倒に思える話を持ち掛けられて逆に疲れるかも知らないと改める。けど、面倒だからと言う理由で話が打ち切れるはずはない。なら、聞く他に終止符は打てないと判断した。
しばらく動かなかった分だけひんやりとした空間に慣れた身体が熱を忘れる。スーッと汗が乾いて来たことを感じる中で話は本格化する。
「君は何か特別な力を持っていると自身で思ったことはあるか?」
「は? 特別な力……? それって何ですか?」
一瞬、疑問を抱いた。けど、自然と内心に思い当たる節が浮かんで来る。それを彼に打ち明けてみた。
「ほう? 周辺の空気が動いて見える? それと意識するだけで空気を動かしているような感覚がある。なるほど。やはり、思った通りだったよ」
「え? まさか何かあるんですか?」
「もちろん。君は以前に俺が見掛けた時から可能性を感じていた。それは本部に報告した上で君と接触させてもらった。良く聞いてくれよ?」
そんな感じで俺は彼から窺える話に耳を傾ける。彼は話す前に何だか不思議な力が発揮されている感覚を起こさせる。
ぱぁん! と妙な力を拡散させた後で話は再開する。
「君を今度から【秘匿公安術師協会】の一員として迎える。これは我が国が特別に用意した契約書を書かせて成立する。悪いけど、少し失礼するよ」
すると、目前が歪み始める。グルグルと目が回って視界は正常に映らなくなった。
脳内が錯乱してどうにもならなくなった後から衝撃的な事実を突き付けられるなんて思うはずもなく迎えてしまう。
「……んぅ?」
俺は不思議と身体が動かない感覚を味わって違和感が生じっぱなしになる。頭を上げようとする意識が向いて普段だと意識していなかった重量を感じる。
「うっ……うぅ……」
クラクラする脳内を強制的に無視しながら目前を見ると視界は殺風景とも言えるコンクリートで出来た壁を映す。
「な、何でなんだ……? 誰もいないじゃねぇか。それも縛られているだとぉ⁉︎」
手足が拘束された状態を窺った時から状況が深刻かも知れない恐怖心を抱いた、すると、手足の自由が効かない点を不自然だと思って脱出しようと抵抗する。
しかし、一向に手足を縛った鎖は解ける気配がない。それを踏まえて俺は事前に接触していた人物を思い出した。
「あ、あいつがやったのか……? こんなの理不尽すぎるだろぉ⁉︎ どうやって逃げれば良いんだよぉ……」
全く解けない鎖を身体の後ろで縛られた状態は凄く辛かった。さらに寝ていて気が付かなかった感覚が後から生じて来る。これだと態勢に限界が来てしまうため、例え解けなくても鎖を外そうと頑張った。けれど、鎖が外れる気配を感じさせないところは牢獄みたいに思える場所で過ごして行くかも知れないと考える。
身体がビリビリと痺れて来た。すでに態勢は限界を迎えた状態だった。
「くそっ⁉︎ まう無理だよぉ⁉︎」
そんな時だった。
ガタンッ! と部屋の扉が鍵を開く音が立つ。
「ふふふっ! どうやら限界が来たみたいね? 貴方は何でこんな場所に連れて来られたのかも分からないと不安でしょうがないだろ? あぁ?」
「ぐぅ⁉︎ ふざけんな! 良い加減にしろよ! お前たちは何が目的なんだよぉ!」
「ははっ! 目的から聞いてどうすんだよ。貴方って面白いね? けど、自力で脱出してもらう予定で入れたから少しだけヒントをあげるわ」
「はぁ? ヒント……?」
最初は酷く意味が伝わらない一言を告げられて謎に思った。もう身体はムズムズして動きたい気持ちが強くなる。変に落ち着かない状態が続いて我慢ならない中でヒントが早く欲しいと思ってしまう。
「頼むよぉ! ヒントでも良いからくれぇ!」
「はいはい。分かりましたよ。けど、最初だと疑わしくて信じれないと思う。それでもやって見せられるかな?」
「分かったぁ‼︎ だから、早くお願いだよぉ‼︎」
「了解!」
何とかヒントを教えてくれるように懇願したら叶った。ヒントが分かった時は即座に徹して抜け出したいと考えていた。
「それは一般人だと投げ出さないのよ。けど、貴方が持つ力を引き出せれば破壊できるわ。それを私たちは【異術】と呼んでいる。確か意識してみた時に起きた覚えないかな? それが発揮された時に脱出を可能とするから自力でどうにかしなさい。それだけだわ」
「くっ⁉︎ 畜生ぉ⁉︎」
目前の女性から教えてもらったヒントは心当たりがある。
確か意識すると空気の流れが読めた。彼女がくれたヒントだと【異術】と呼ばれる力を働かせて鎖は解く必要がある。それらが【異術】なんて呼ばれ方をしている時点で異能力と似たように捉えて良いはずだ。
つまり、空気が流れる方向が読めてしまうことは何か繋がっていると見た。それと照らし合わせて予測を加えた回答は【空気操作】の実現が可能であるかも知れない話を導き出した。
(空気を意識的に操ることが出来るなら使ってやれば良いんだろ? だったら、今から試してみよう……!)
俺は意識を集中させる。集中した意識が空気を動かしている感覚が起こった。
「ぐぬぅ……!」
そして最終的に出た結果は空気操作と認識するだけの現象が生じる。
空気が集結してどんどん高密度になる。高密度を誇る空気は限界を迎えた時に自然と分散して残らなかった。
「くっ、駄目……じゃん……」
急に視界が暗くなる。意識を保てなくなった俺は後でどうなったか分からない。
天命を巡る異術師の怪奇譚 〜空峰和平編〜 紅薔薇棘丸(旧名:詩星銀河) @mukuromukuromukuro
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