〇呪い

 終わった。いや、ここから始めるのかもしれない。行為が終わった後、私はトイレに行く振りをして男の精液をしみこませたヒトガタとライターを持ち出した。そして、それをトイレ内で燃やした。紙の焼ける匂いがやけに印象に残った。

 達成感はなかった。むしろ、虚無感の方が勝っていた。自分はいったい何をしているのか。トイレから戻ると男が身支度を整えていた。

「今日はありがとう」

「いえ、こちらこそ」

「そう言えば、前に会った子、年齢は違うけどあなたに似ている子が居ましたよ」

 一瞬心臓が跳ねた。

「まあ、だからなんだって話ですよね、すみません」

 気づかれなかったことへの安堵と、娘はこの男にとって「前に会った女のうちの一人でしかない」という事実で心はかき乱された。

「……じゃあ、私は先に出ますね」

「そうですか、僕は一服してからにします。じゃあ、今日はありがとう、気を付けて」

 紳士的であった。表面だけかもしれないが、男は終始「優しかった」のだ。

 本当にこの男は、娘を壊したのだろうか?表面上の優しさに溺れ、娘が一方的な好意を寄せていただけなのではないか。


 私のした事に、意味はあったのか。


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