転生の女神に見放されたので、自力で転生しようと思います!!!

@UesannU

第1話 天使になった僕

 研究室の机でスマホが光る。第一希望だった山の上製薬からの内定のしらせだった。

 「うっしゃー!!」

 天山大学大学院生の修士2年目の終わりの出来事だった。

 指導教官がパーテーションから顔を出す。

 「どうしたの?いい結果でた?」

 「実験は、まだですっが、・・でも、なんと!内定もらったんです!!姫乃先生!」

 「あら、よかったわね。じゃ、あとは卒論ね。これで集中できるわね」

 「一つ目標が達成できてよかったです!面接前に緊張して腹壊して遅刻したときは終わったかと思いました」

 「佐藤くんは緊張しやすいもんね。でも本当、よかったじゃない。今日は早く帰ってご両親に報告したら?」

 「え!いいっすか!?じゃあもう終わります!!」

 「鈴木教授は会議で出ちゃってるから、わたしから伝えておくわ」

 「ありがとうございます!!」

 佐藤は白衣を椅子に掛けると、カバンをもって研究室を出た。就活と研究を同時にこなしていたから体もガチガチで目の下もひどいクマができるほど睡眠不足になっていた。

 あー!やった!!まずは家に帰って、仮眠して、母さんたちが帰ってきたら知らせよう!絶対びっくりするし、喜んでくれるはず!!

 佐藤の家は研究室のある大学から電車で30分の郊外にある。まわりは田んぼと畑で、あまり街灯もない。朝晩は市営バスも本数が多いが、昼間は30分に一本しかない。

 あー、まだ明るい。日が出てるうちに帰るなんて久しぶりだ。さて、バスも朝晩以外はあんまり通ってないし、20分くらい歩くか。

 無人駅をでて田んぼに囲まれた道路を歩いていると、軽トラがこちらに向かって走ってきた。だが、様子がおかしい。車一台ほどの幅しかない細い道を猛スピードで向かってくる。

 ま、マジかよ!?ちょっと!!

 佐藤は振り返り、走った。轢かれてはならない。そう頭が言っている。

 佐藤は軽トラを避けようと走るが、普段の運動不足のせいで足がつった。

 「痛ってー!!」

 あっ!

 気づいた時には佐藤は軽トラと衝突し、空中を舞っていた。だが、軽トラは止まることなく走り、佐藤は道路に叩き落とされた。

 あ、あ、あ。


 あたりは真っ白だ。

 ここはどこだ?

 そう思った時、声が聞こえてきた。子どもの声を真似た自動音声のようだ。

 「転生の間へようこそ。佐藤剛さとうつよしさん。」

 「どうも」

 「あなたは本日、時速105キロの軽トラックに衝突され、全身打撲と失血性ショックのため死亡しました。」

 「ま、マジ!?ま、まって!なんで、そんなことになったんですか!?」

 「なんでと、いわれても・・・、うーん。えっと、あ、なるほど。えーとですね、軽トラックを運転していた田中光一さんが、」

 「え!?田中のじーさん!?なんで!?じーさん免許返納したはずじゃ・・・なんで!?」

 「えーとですね、まだわたし、話してます。田中光一さんが免許を返納したことを忘れて運転してしまって、運悪くあなたを轢いてしまったということです。それでは、質問ですが、転生を希望しますか?」

 「は?転生!?」

 「はい。転生です。希望しますか?」

 「まって、まさか、あの転生!?」

 「希望するんですか!?」

 「そ、そんなに怒らなくても、はい。します」

 「では、ご案内します。」

 子どもの自動音声のような声がおわり、空間が移動した。突然色々な人種が集められた広場がそこに広がっていた。

 え!あれ、人魚!?あっちはエルフじゃ!まさか、あれは獣人!?あの帽子と杖はまさか魔法少女!?ここ、どこだ!?

 「皆様、ようこそ、転生の女神の間へ。」

 艶のある女性の声にまわりがどよめき、湧き立つ。

 「皆様は、転生を希望されました。私は転生の女神。私の祝福の光を手にし、希望の転生先へご案内いたします。それでは皆様に幸せな世界が訪れますように」

 すると、白い天井から光の粒がふわふわと降りてきた。

 「やった!これは俺のだ!!」

 まだ降ってきたばかりの光を羽の生えた天狗が取り去っていく。すると光を手にした天狗が姿を消した。

 「おお!あの光をつかめば、転生できるぞ!!」

 そう叫んだのはライオンのような立て髪を生やした大男だ。その声を皮切りに光の粒の取り合いが始まった。

 マジか!マジか!人間は!?俺だけ!?あの中に行くしかないのか!?痛っ。腹が、痛てて。ちょっと無理。マジかよこんな時に・・・、治れ俺の腹ー!こんなとこで漏らすなんてあっては・・・いや、俺は死んでるんだ。漏れるわけない。

 急に気持ちが冷静になると、腹の痛みもおさまってきた。

 よし!これで光を取りにいけるぞ!!

 佐藤が立ち上がった時、女神の声が響いた。

「それでは、皆様、またお会いしましょう」

 え!?

 周りを見るともう誰もいない。そして光の粒のも見当たらない。

 まって!!まだ!俺!取ってない!!

 白い天井を探すと一つだけふわふわと降りてきた光を見つけた。

 よっしゃ!!あれだーー!!

 渾身の力を膝に込める。そして人生最大の力でジャンプした。だが、指先に触れるまであと1センチというところで、パチンと光が消えてしまった。

 うそだろ・・・・。

 佐藤は何もない白い空間に落ちるだけだ。

 う?誰かの声がする。もしかして女神様が探しにきてくれたんじゃ!!

 佐藤が声のする方に向かうと、空間と同じ模様の壁にぶつかった。手が触れるとドアが現れる。

 ドアを開けるとそこは蛍光ピンクの壁にピンクのファーこソファがある。そして1人の女性が座っていた。

 「女神様ですか!?」

 「え?」

 振り返った女性は白髪に黄色い目、そして白いドレスをきていた。古びた本を手にしている。

 佐藤をみた女性はニコリと表情を作る。

 「私は転生の女神。あたなはなぜここに?」

 「よかった!女神様!俺、光を取り損ねてしまって、転生できないんです!!もう一度光をお願いします」

 「それは、不運でしたね。でも転生の間に行けるのは人生で一度だけです。」

 「え!?じゃあ俺、転生できないんですか!?」

 「私ではどうすることもできません。そういう決まりですから。」

 ピンクの壁から突然窓が現れた。

 「はい。転生の女神です」

 女神様が窓を開けると、癖っ毛で目がくりくりと可愛らしい子どもが顔を出した。

 「お!今日も美人だね〜!俺好みだ!んで、女神様、次の仕事だ。神様が呼んでるぜ!」

 見た目に反してイケオジのような低音ハスキーボイスに佐藤は驚いた。

 「天使さん、今取り込み中で、ほら、この。」

 女神の目線にハスキーボイスの天使も佐藤に気づいた。

 「お前!なんで女神様の控室にいるんだよ!!勝手に入るな!」

 「違うのよ、鍵を閉めたのに入ってきたの。」

 「なぁーに!?そいつはありえねぇな女神様!!神様に報告だ!!」

 そう叫ぶと窓をバシンと閉めて天使が消えた。窓もスーとなくなり、元のピンクの壁に戻った。

 「ここ、女神様の控室なんですね」

 「ええ、そうなの。でも安心して、すぐに忘れちゃうから」

 「え?」

 ピンクの部屋のドアが勢いよく開いた。今度は甲冑を纏った子供たちがわらわらと佐藤を取り囲んだ。1人が羊皮紙を佐藤に見せた。だが、佐藤は字が読めなかった。

 「不法侵入及び、接触禁止法違反のため拘束する!!」

 「拘束!?」

 佐藤は甲冑を着た子供たちに手足を固定され、担架のようなものに乗せられて女神の部屋を出た。

 女神様は微笑み、佐藤に手を振っていた。


 そして佐藤は、天国の一室で尋問をうけ、不運のせいでで転生を逃し、間違いで女神に接触してしまったことが証明された。だが、問題はまだ残っていた。まだ転生できないということだ。

 「あの、俺の転生は、どうなったんでしょう?」

 尋問官の天使はペンを止める。

 「わからん。そもそもこんなのは初めてだ。転生の女神の祝福は1人一つ、漏れなく舞い降りる。お前の分がないということは無いのだ。」

 「いや、でも、消えちゃったんですよ!!とろうとしたらパチンって!!」

 「・・・運が悪かったな。祝福は床につく前に取らないと消えるぞ」

 「いや、床について消えたんじゃなくて!!」

 え、どうなる?転生できないんじゃ、俺、消えるのか!?

 「まぁ、光がないと転生はできない。自殺でもないし。前例として処理が下りるときに知らせが来るだろう」

 尋問官の言葉通り、そのすぐ後に天使が書類を持って佐藤の部屋を訪ねてきた。

 「佐藤剛さん、あなたのことを調べましたが、今回が初めての転生になるはずだったようですね。話し合いの結果、あなたは自分の運の悪さをなくす必要があると決定されました。まったく、生まれながらの不運の持ち主ですねー。この不運をなくさなければ、また運悪く転生を逃すでしょう。まずは、その運の悪さを天国でなくしましょう。」

 「なるほど、俺は生まれながらにして運が悪いと?」

 「そうですね。自覚ないですか?小学生の頃・・」

 「あ!あります!体育の授業中に雨漏りした床で滑って尻もちついたら、おしっこを漏らしたって言われて」

 「ですね。あとは中学の・・・」

 「あーー!はいはい。部活の申し込み用紙をなくして誰かがいたずらで勝手に書いて出されてて、部活が決まって、嫌だと言えずに結果3年間運動部に。」

 「そうですよね。その運の悪さを天国で落としましょう」

「どうやって?」

 「運の良し悪しはタイミングです。要するにタイミングを身につければ良いと話し合いで決まりました。そこで、佐藤さんには転生した者たちの手助けをしてもらい、その幸せのタイミングを身につけてもらいます。」

 「ということは、守護霊になるってことですか?」

 「いいえ、天使たちの仕事を手伝うという意味です。言わば、期間限定の天使ですね」

 そうして佐藤は天使として先輩天使たちについてまわることになった。

 

 「はい。僕は天使のネコです。初めの仕事は、転生者たちの困りごとを把握することです。幸せな人生は生きたことに満足をあたえます。そうすれば寿命を迎えた時にすぐに転生を望むことはないでしょう。資料は読みましたね?No.1に会いに行きます。僕についてきてください。」

 黒髪の癖っ毛の可愛らしい子どもが星のステッキを持って先導する。

 「あの、・・・ネコって、名前ですよね?」

 「そうです。天使になる前はネコでした。だからネコです。無駄口が多いですね。」

 「す、すみません。」

 ネコ先輩、厳しい。

 白い煙の中を進んでいくと広い山並みの田園風景が現れた。

 「ここです。えーと、日本という国ですね。佐藤さんの生まれた国ですかね。」

 「はい!しかも、ここって、俺の地元!?」

 「あと、世界に降りたら俺って言うのはやめてください。僕と言え。いいですね。天使のイメージに関わります」

 「わ、わかりました!ネコ先輩!」

 


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