初愛《はつこい》

saori☆k

  二枚の写真1

 明日から4月という、3月末の昼過ぎ。

 昼食の片づけの手伝いも終わって、部屋に戻ったはいいがやることがなく。勉強でもしようと教科書やノートなどを机に出していると、

「コンコン。」とドアが叩かれる音が聞こえ開けられていき、

「美緒ちゃん。園長先生が、お呼びよ。」と朝子先生が顔を見せてきた。

 園長先生が呼んでいるって、何の用だろう。そういえば昼食の片づけを手伝っていたとき。

「お客さんがきたみたいだよ。」と小学生の弟・慎吾が言っていたけど、何か関係があるのだろうか。

 ともかく。園長先生からの呼び出しを拒否するわけにもいかず。机に出したものは、そのままにして部屋を出ると朝子先生と園長室のほうへむかっていった。

 園長室のほうに近づいていくと、ドアから少し離れた場所で弟・妹たちが群がっているのが見えてきた。一歳の妹・光まで理恵先生に抱かれている。

 弟・妹たちと言っても、私と彼らのあいだに血の繋がりはない。

 ここはO崎市内にある児童養護施設。色々な事情で、親や家族と暮らせない子供たちが暮らしている家だ。私は三歳ぐらいの頃から、この施設のお世話になっていた。

 私と朝子先生が近づいていくと群がっていた皆が一斉に、こちらを見てきて恥ずかしさを感じてきた私は、少しだけ顔を俯かせていった。

 朝子先生が園長室の前で足をとめると、私も足をとめていき。朝子先生が、

「コンコン。」とドアを叩きながら、

中尾美緒なかおみおちゃんを連れてきました。」と中にむかって言っていくと、すぐに園長先生の声で、

「きたか、美緒ちゃん。お入り。」と返ってきて。

 それを聞いた朝子先生が間をおくことなくドア開け、

「さぁ、美緒ちゃん。」と言ってきたので、私は顔をあげ。

「失礼します。」と言ってから園長室に入っていった。

 私が園長室に入っていくと、すぐに朝子先生がドアを閉めていき。同時に左手にある応接セットに座っていた園長先生と、六十代前半ぐらいのスーツ姿の男性。子供たちの最年長者。西島航にしじまわたる君がそろって私のほうを見てきた。

 航君は、私より二歳年上の高校生。来月の4月から二年生になる。

 何で航君が座っているのか知らないけど、来客の男性が航君や園長先生とともに私を見てきた際。一瞬だけ驚いたような顔をしていたけど、何処かで私と会ったことがあるのだろうか。私は全然、会った記憶がないけど。

 それに、気のせいだろうか。何処となく航君に似ているような気もする。

 来客の男性に、そんなことを思いながら体を応接セットのほうにむけ、園長先生のほうにいこうとしたら、先に園長先生のほうが立ちあがり。

「美緒ちゃん。こちらは、N古屋市のほうからいらした金城茂夫かねしろしげおさんだ。」と男性を紹介しながら、私のほうに寄ってきて立ちどまり。

「金城さん。この子が航君が言っていた、中尾美緒ちゃんです。来月から中学三年生になります。」と男性に私を紹介していった。

 それを聞きながら、

「航君が言ってたって、何を言っていたんだろう。」と心の中を傾けていると園長先生が躊躇いがちに、

「航君のお祖母ばあさん。金城琴美かねしろことみさんの従兄さんで、お祖母さんの代理で航君を引きとりにみえたんだけど。突然のことで驚いているのか。航君が『美緒ちゃんと一緒でなければいかない』と言ってね。

 それで一度。N古屋市のほうに帰って、ご家族と相談してくるので美緒ちゃんと航君の写真を一枚ずつ。ご自分の携帯で撮らせてほしいと言われるんだけど。」と、自分の耳を疑いたくなるほど驚くようなことを言ってきた。

 驚きのあまり私は、

「はぁぁぁ!-」と大声で叫びながら体を、応接セットのほうから園長先生のほうにむけていき。かな~り驚いた表情をさせながら、その顔を見つめていった・・


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初愛《はつこい》 saori☆k @saorik6725

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ