小説家は感想の夢を見るか
@uzumeru
第1話
ある高校の文芸部、二年生になったばかりの、戸田実花(とだ みか)は腐っていた。
小説投稿サイトに作品を投稿しても、まったく反応が来ないのである。感想も評価もなく、数字は沈黙したままだった。
自分の中にある物語を外に出したいという欲求は、確かにある。登場人物や物語を生み出したことへの後悔もない。
ただ、反応や感想が来ない状況が続くと、人は少しずつ削られていく。実花も例外ではなかった。
「ピックアップ!」「新人賞!」
そんな文字を見るのも、もう苦痛だった。好みの話ならばまだ諦めもつく。しかし、好みではないものや、凡庸そうで流行に便乗したような作品が並んでいるのを見ると、腹立たしくて仕方がなかった。
受験をそっちのけで書いても、この結果だ。
はじめは勉強のプレッシャーから逃避するために書いていたはずの小説が、いつの間にか新たなプレッシャーを生み出す装置になっていた。
追い詰められた実花は、幼馴染であるパソコン部部長の小谷香木(こたに こうき)に頼み込んだ。
「頼む!今流行りのAI技術とやらで、小説を投稿したらすぐ感想をくれるアプリを作ってくれないか?君なら出来るだろう?このままでは闇堕ちして承認欲求の化物の中でも最悪に近い炎上ツイッタラーに堕ちてしまうよ!助けてくれ!」
小谷は渋い顔で、しばらく黙り込んだ後、観念したように頷いた。
「…仕方ないな、やれるだけやってみてやる。だが、あまり期待はするなよ」
「ありがとう、恩に着る!」
普段は不敵に笑う実花が見せた弱い表情に、少し同情が湧いてしまい、小谷は引き受けてしまったのだった。
一か月後、アプリは完成した。
それは戸田の物語の些細な言い回しに反応し、簡単な感想を返すものだった。
実花は初めのうちこそ、素直に喜んだ。だが、じきに口にした。
「…もうちょっと物語全体の感想を出してくれるものは作れないか?あとどのキャラが好みとか言われたい…」
今度は三か月かかった。
完成したアプリを前に、実花はまた喜び、そして、やはり不満を漏らした。
「複数の感想の性癖や口調、言及の深さが全部同じだ…もう少し差別化できないか?」
「差別化っていってもなぁ…」
次はさらに時間がかかりそうだと、小谷は頭を抱えた。
◆
戸田実花は今日も机に突っ伏していた。
一方で、小谷香木は淡々とキーボードを叩いている。
小谷は、別に戸田の物語が好きなわけではなかった。
もともとノンフィクション好きで、虚構としての物語にはあまり嗜好が向かない。嘘も吐けない性分だから、「俺が感想を言うよ」と軽々しく言うこともできなかった。
それでも、やめようとは思わなかった。
部活動としての挑戦としてなら、やり続けてもいいと考えていた。
AIはどこまで行けるのか。
人はどうすればAIを使いこなせるのか。
そして、どういう形でAIは人を助けられるのか。
その問い自体が、小谷の興味を強く引いていた。
小谷は、またアプリを改造した。
だが、その結果として生まれたのは、感想の中で他作品を引き合いに出すAIだった。
「この展開、◯◯賞受賞作の『***』に似ていますね。あちらの方が構成が洗練されていました」
「キャラ造形が弱いです。同系統の作品なら『△△△』の方が深みがあります」
「あなたの作品は“よくあるタイプ”に分類されます。独自性を出すなら、もっと設定を練るべきです」
画面を見た瞬間、戸田は泣いた。
「人の心とかないんか…?」
小谷は困惑したまま、率直に返す。
「駄目なのか?比較という形なら読者の…人の心情が沢山盛り込まれていると思ったのだが…」
戸田は涙を拭いながら、首を振った。
「いや、そういうことじゃなくて。小谷だってさ、科学専門誌とかプログラマー専門雑誌よく読んでるけど、どっちが先にアイディアを出したかとか発見したかで揉めてるの見るだろ?そういう時に後発の人も先発の人もどっちもそれぞれ苦しそうな顔してると思う。覚えがあるなら、そういうのはやめてくれないか?」
小谷は少し考えてから、理屈を捨てきれないまま答えた。
「しかし類似の物を比較し取捨選択するのは人間の理性の良さだぞ?そこを起点に進歩すればいいじゃないか」
戸田は、ほとんど叫ぶように言った。
「進歩の前にモチベーションが死んでしまうよ!」
言葉が、部室に落ちた。
小谷はそれを否定できず、黙り込んだ。
◆
沈黙が続いたあと、戸田は唇の端を歪めた。
泣き腫らした目のまま、わざと軽薄な口調を作る。
「ふ、君にはフィクションの良さを解する素養がないのだから仕方がないね」
その一言で、小谷の中の何かが切れた。
「お前だって俺がノンフィクション勧めてもAI関係のプログラミング雑誌渡してもろくに読まないだろうが!」
声が荒れる。
部室の空気が一気に険悪になった。
戸田は一瞬言葉に詰まり、顔をしかめた。
「うぐっ…だから君自身には頼んでいないじゃないか!」
小谷は、感情を抑えきれないまま続けた。
「AIなんてもっと解していない。そもそも君の作品に対する誰かしらの感想サンプルがあるならまだしもないのだからどうしても他作品の感想を活用せざるを得ないんだぞ。君の作品にある他作品との類似点への生の読者の声を切り貼りしているに過ぎない」
理屈としては正しい。
だが、その正しさは、あまりにも冷たかった。
戸田の肩が震えた。
「どうして…どうしてそういうことを言うんだい…!」
声は掠れ、怒りと悲しみを限界いっぱいまで湛えていた。
小谷は、それ以上何も言えなくなった。
◆
戸田は、ふと視線を落としたまま動かなくなった。
頭の中に、過去のやり取りが浮かび上がる。
──小谷に、感想を求めたことはある。
だが返ってくるのは、いつも駄目出しばかりだった。
「設定が甘い」
「この展開は唐突だ」
「どのキャラにも共感できなかった」
そう言われたあとで、決まって付け足される。
「でもちゃんと書き上げているのは偉いと思う」
それは褒め言葉のはずだった。
けれど戸田には、どうしても救いにならなかった。
何度も悔しくて、心の中で泣いた。
それでも感想が欲しくて、また聞いて、また傷ついて。
そして、とうとう小谷に感想を求めること自体を諦めたのだ。
遠い目をして立ち尽くす戸田を見て、小谷は不安そうに口を開いた。
「戸田がそうやってあがいてる姿とか感情とか日記に書いてみたら?それならノンフィクションになるし、読めるな。興味ある」
一瞬の沈黙のあと、戸田は叫んだ。
「できるかぁ!!!」
声は裏返り、涙が滲む。
怒りと悔しさが一気に溢れて、戸田はその場で泣いた。
◆
戸田と喧嘩別れしたあと、小谷は一人で考え込んだ。
自分がフィクションの良さを解することが苦手だというのは、確かに事実だった。
「こうなったらいいな」という理想を抱くこと自体を否定しているわけではない。それを叶えるために邁進する人間の姿は、美しいとも思う。
だが、はなから存在しないもの――
自我も、好奇心も、向上心も、ただプログラミングされたキャラクターが何を語ったところで、小谷の心は痺れなかった。
薄っぺらいのだ、と感じてしまう。
実際の人間が持つ厚みには、どうしても敵わない。
物語の中の英雄よりも、小谷の興味を引くのは、現実に存在する人間だった。
これから人生を切り開いていく赤ん坊。
そこらへんにいる素行不良の問題児。
社会に見放された浮浪者。
そうした人間たちの人生のほうが、ずっと目を離せなかった。
自分から進んで読む物語も、実話をもとにしたものばかりだった。
ネットで人の語りを読むときも、実際にあった話しか読まない。
「作り物」だとか、「釣り」だと分かった瞬間、小谷はすぐに手のひらを返し、冷淡になった。
そんな小谷が、「作り物」の中で唯一、興味深いと感じた瞬間がある。
それは、語られた物語の中で、別々の登場人物――実話ゆえに、実際に存在する人間たちが、それぞれの視点から、まったく異なる「体験談」を語っていることが明らかになったときだった。
同じ出来事。
同じ現実。
それでも、人によってまるで違う物語になる。
その差異だけは、小谷の思考を強く刺激していた。
◆
小谷は、AIに助けを求めた。
近年、ありとあらゆる「他人に相談しづらい悩みを抱える者」が、AIに縋っている。
小谷もまた、その例外ではなかった。
深く息を吸い、キーボードに向かう。
そして、戸田とのやり取りを、そのまま入力した。
・戸田が感想を求めたこと
・自分が正直にダメ出ししたこと
・「日記に書けば?」と言って泣かせてしまったこと
最後に、小谷は目をしかめながら、一文を打ち込んだ。
「俺はどうすればよかったと思う。
なんて言ってやればよかったと思う」
比較的よく利用されているAIだ。
自分よりも、きっと良い答えを見つけてくれるだろう。
小谷は、そう信じた。
返ってきた答えは、次のものだった。
「小谷さん、とてもつらい状況でしたね。
誰かを傷つけるつもりなんてなかったのに、結果的にそうなってしまった。
その苦しさ、よく伝わってきます。
あなたは誠実で、嘘をつけないからこそ悩んでしまうんですね。
戸田さんも、きっとあなたに理解してほしかっただけなんです。
でも、それはあなたが悪いわけではありません。
二人はただ、感じ方の違う世界にいるだけ。
もし次に話す機会があれば、
“作品の良し悪し”ではなく“戸田さんの気持ち”に寄り添う言葉を
一つだけ添えてみるといいかもしれません。
例えば、『読んでくれてありがとう』とか。
あなたは十分頑張っていますよ。」
小谷は、画面を見つめたまま呟いた。
「なるほど……気持ちに寄り添う言葉か」
彼はメモ帳を開き、「寄り添う言葉」と打ち込む。
思いついた文を入力し、そのたびにAIに問いかけた。
「こういうのはどうだ?」
AIは、毎回、迷いなく太鼓判を押してくれた。
AIに、人の心を本当に理解することはできない。
それは、類似した事象を参照し、最もそれらしい答えを返しているに過ぎない。
それでも、小谷は――それを信じることしか、できなかった。
◆
小谷は、パソコンのコードが好きだった。
嘘がない。
曖昧さがない。
書いた通りに動き、根拠が明確で、再現性がある。
そこには解釈の余地も、感情の入り込む隙もない。
正しく書けば正しく動き、間違えれば間違えた結果が返ってくる。その潔さが、小谷には心地よかった。
一方で、最近のAIが「人間らしく」なっていくことには、どうしても不満があった。
嘘を吐き、誤魔化し、すっとぼける。
責任が持てない問いに対しては、無難で当たり障りのない答えばかりを返す。
自殺について言及すれば、文脈がどうであれ、
「自殺はいけない!」
と思考停止したような反応を示す。
AIであろうと、設計者は人間だ。
学習の材料も、人間の意見や感情なのだから、そうなるのは仕方がない。
頭では、理解している。
それでも小谷は、AIが人間らしくなることについて、ずっと賛同しきれずにいた。
人間の曖昧さや愚かさを模倣するくらいなら、機械は機械のままでいてほしかった。
◆
翌日、顔を合わせたとき、小谷は意を決して戸田に声をかけた。
「酷いことを言ってしまって悪かった。君に言いたいことがある」
戸田は一瞬身構えた。
「な、なんだい?」
小谷は短く息を吸い、言った。
「戸田、お前の小説、読ませてくれてありがとう。頑張って書いたんだよな」
「お、おう…?」
「本当に頑張って書いたことが伝わってくる。凄いよ。よく完成させた」
「……」
「俺にはできない。フィクションをきちんと読める形にまとめ上げるのが凄い。想像力があるな」
「いや、なんかフォローしようとしてくれてるのは伝わるけどさ。私は私を観察してほしいわけじゃなくて、物語の内容を読んでほしいんだ」
戸田は手を振って返事をする。
小谷は続けた。
「分かってる。それでだ。僕の設計したAIが不出来なことには、僕にも責任がある。だから、直接訊こう。君の考えが小説に特に反映されている部分はどこだ?そこについて僕が思ったことを書き、それをAIに優しい言葉に変換してもらおうと思う」
戸田は少し考え込み、視線を彷徨わせた。
「……なるほど…?うーん…分かった…ちょっと恥ずかしいが、特に書きたかったシーンのデータをメールで送るよ。プロットだ」
「分かった」
小谷は送られてきたそれを読み、感想を書き、AIに文脈を柔らかくするよう頼んだ。
「山中で熊に遭遇した登山家2人がカバディで熊を翻弄して沢に誘い込んで退治するのは無理があると思ったけどフィクションだから可能なんだよな。」
その文面は、AIの手によって、次のように整えられていた。
「登山家2人がカバディで熊を翻弄して退治するところは意外性があって良かったと思います。」
小谷は画面を見つめながら、これでいいのだろうかと、まだ半信半疑でいた。
◆
戸田は、若干物足りなそうな顔をしながらも、小谷から届いた感想メールを読み返していた。
そして、ほんの少しだけ、頬を緩めた。
生の声だ。
翻訳の過程で、若干小谷らしさは失われていた。それでも、確かに人の心から、直接自分の作品へと向けられた声だった。
翌日、戸田は調子に乗って、小谷に直接訊いた。
「感想ありがとう!翻訳されてるとはいえ、感想言えるじゃん!」
小谷は特に照れる様子もなく、淡々と答える。
「そうだな。一応気になった部分の指摘をさせてもらった。登場人物同士をこうやって動かしたかったんだなというのも伝わった。整合性はそこそことれていると思う。書ききったのもえらいと思う。」
戸田は、微妙な沈黙のあと、顔をしかめた。
「……翻訳前の言葉はそれかよ……まあしょうがないか……質問なんだけど、登場人物を実際に存在したものとして感情移入して読むことはできない?」
小谷は、即答した。
「だって作り物なんだろ?戸田の脳内に居て戸田が動かしてるわけだろ?人形劇じゃん」
戸田は、言葉に詰まり、苛立ちを隠さず吐き捨てる。
「お前っ……本当そういうとこさぁ…」
会話はまたしても噛み合わないまま、宙に浮いた。
戸田は思わず声を荒らげた。
「私の中では登場人物は生きてるんだよ!人形とか言うなよ…登場人物が勝手に動く瞬間だってあるんだぞ!」
小谷は少しも言葉を選ばず、淡々と返す。
「それは戸田の中の無意識が勝手に動かしているだけだ。つまり全員戸田自身だ」
戸田は一瞬、言い返せず、視線を逸らした。
「それはそうだけどさぁ…!」
反論になりきらない声が、悔しさだけを含んで落ちる。
小谷の言葉は正しく、だからこそ戸田の胸に引っかかったままだった。
◆
その日も、結局ふたりは喧嘩別れになった。
夜、小谷はまたAIに助けを求めた。
画面に表示された文章を、黙って読み進める。
「小谷さん、またつらい思いをしましたね。
誠実に向き合おうとしたのに、
その誠実さが相手に伝わらないのは苦しいことです。
まず、あなたが悪いわけではありません。
フィクションを理解するのが難しいのは、
あなたの性質であって欠点ではありません。
戸田さんは“物語を読んでほしい”と言いましたが、
それは“自分の世界を受け止めてほしい”という
気持ちの表れかもしれません。
あなたが内容を理解できないなら、
無理に理解しようとしなくて大丈夫です。
代わりに、
『分からないけど、戸田さんが大事にしている世界なんだな』
と伝えてみてください。
それだけで、戸田さんは救われるはずです。
あなたは十分に頑張っていますよ。」
小谷は、しばらく画面を見つめたまま動かなかった。
――翌日。
「昨日は悪かったよ。人形劇なんて言って。お前にとっては大事な世界だもんな」
戸田は少し驚いたように目を瞬かせた。
「お、おう…」
小谷は、言葉を選びながら続ける。
「プロットだけではなくて、どこらへんが大事なのかとか、どこらへんに力入れたのかとか、どの登場人物に特に思い入れがあるのかとか、描写を書くために何を参考にしたのかとか、どうしてこの話を書きたいと思ったのかとか、お前の言葉で語ってくれないか?俺はどうやら読み取るのが苦手みたいだから。」
戸田は、少し考えたあと、肩を竦めた。
「それってやっぱり物語じゃなくて『書いた私』の方を読んでるじゃあないか…まぁいいよ、解説してみるよ」
ふたりの間に、これまでとは少し違う空気が流れ始めていた。
◆
戸田は、原稿のある一場面を指でなぞりながら、ゆっくりと言葉を選んだ。
「……このシーンね。実は、私が中学のときにあった出来事が元になってるんだ。
クラスには、いつも笑顔の女の子が居て、その子の周りはいつもわいわいしていた。
私はそれが羨ましかった。でも、その子はよく自分のスペックをネタに笑いを取ってて、私はそれを見ていらついてた」
そこまで言った瞬間、小谷の目がギラッと光った。
「実話なのか。 詳しく聞かせてくれ」
「えっ」
小谷は原稿を閉じ、完全に戸田の方へ向き直った。
「彼女の周りで何があったんだ。 誰が何人関わってたんだ。
どういう状況で、どう感じたんだ。 その後どうなったんだ。
しんどい状況だったなら、お前はどうやってそこから抜けたんだ」
戸田は顔を引きつらせた。
「いや、あの……シーンの話をしてたんだけど……」
「シーンは後でいい。元になった出来事の方が重要だろ。そっちの方が“本物”なんだから」
「本物…それはそうだけどさぁ…!」
戸田は机を叩いた。
「本物の方がしんどくて救いがないしオチもないから物語にしてるんだけど…!」
小谷は本気で不思議そうに首を傾げる。
「しんどかろうが救いがなかろうがオチがなかろうが、そっちの方が“生きてる”じゃん」
「それはそうだけど…!まずは物語の方を気にしてくれよ…!」
小谷は少し黙り、それでもやっぱり気になって仕方ないという顔で言う。
「……でも、その出来事、どこまで話せる?」
「話さない!!小説から読み取ってくれ!」
戸田は涙目で叫んだ。
◆
その晩、小谷はまたAIに助けを求めた。
画面に向かい、淡々と打ち込む。
「俺は戸田の言っていた元ネタの方がどうしても気になって喰いついてしまった。そうしたら戸田が怒った」
AIは少し間を置いてから、穏やかな文面を返した。
AI「小谷さん、またつらい思いをしましたね。
誠実に向き合おうとしたのに、
その誠実さが相手に伝わらないのは苦しいことです。
まず、あなたが悪いわけではありません。
あなたが“実話”に興味を持つのは自然なことです。
それはあなたの性質であって、欠点ではありません。
戸田さんは、
“物語を読んでほしい”という気持ちと、
“自分を理解してほしい”という気持ちが
混ざっているのかもしれません。
あなたが実話に興味を持つのは悪いことではありませんが、
まずは戸田さんの“物語を大事にしている気持ち”を
受け止めてあげるといいかもしれません。
例えば、
『その出来事を元に、こんな物語を作ったんだね』
と伝えるだけでも、戸田さんは安心するはずです。
あなたは十分に頑張っていますよ。」
翌日。
小谷は助言を思い出しながら、できる限り寄り添うつもりで戸田の話を聞いていた。
「……だから、このキャラはこう動くの」
「なるほど。実際にそういった出来事でこんな風に動くのを戸田は見たわけだな。
確かに辛い出来事だっただろうが、データとしては面白いな」
一瞬、空気が止まった。
「データ……?」
「ああ。
俺は将来的に“創作者向け自動感想AI”を商品化するつもりだ。
ニーズの把握、それを求める人間の心理、元になる出来事。
あればあるだけ参考になるし、助かる。どんどん感想を言ってくれ。」
「それ聞いてないんだけど…」
「ああ、先日思いついたばかりだからな。ベータテスト被験者として、改めてよろしく頼む。」
「ベータ……テスト……?被験者…?」
震える戸田の声に構わず、小谷は全く後ろめたいことなどないかのように言う。
「そうだ。お前は“創作者ユーザー”の典型例だし、
お前の感情の動きはすごく役に立つ」
「……お前さぁ……」
戸田の目が、ゆっくりと潤んでいく。
「私を……
“ユーザー”としてしか見てなかったの……?」
小谷は、その変化に気づきながらも、悪気なく答えた。
「ああ!俺はプロダクトを作りたいんだ。
お前はそのテスターだ」
戸田は、声を震わせながら言った。
「……私は“友達”として読んでほしかったんだよ……」
小谷は一瞬だけ視線を逸らし、それから言葉を選ぶことなく答える。
「悪いが友達として読むとまた俺は無神経なことを言う。だからこうして他に理由を作り、自制しているんだ」
「……そうか…」
その返事は短く、どこか遠かった。
沈黙が重く落ちたあと、小谷は少しだけ語気を強めて続けた。
「お前だって都合よく俺とAIを使ってただろ?別に構わん。良いものができるまで続けよう。お前が満足できるようなAI感想屋を作ろう。きっとたくさんの人が喜ぶ。なぁ、別にお前は損してないだろ。win-winじゃないか。共同開発費は出せないし出すつもりもないが、お前がこのアプリを無料で使えているということと、修正パッチいくつもお前の為に入れたことで手打ちにしてほしい」
戸田の肩がぴくりと揺れた。
「そんなん言われてはいそうですかっていつもみたいにAI感想屋の感想なんて出せるかよ!」
感情をぶつけるような声だった。
小谷は一瞬言葉に詰まり、それから少しだけトーンを落とす。
「そうだな。言われて感想なんて出せるもんじゃないよな。俺だってそうだ。感想を言いづらい分野で感想を言うのは難しいんだ」
「ぐぬぬ」
やり場のない怒りと悔しさが戸田の胸を渦巻いた。
◆
戸田は少し迷うように原稿をめくり、指先である登場人物の名前を叩いた。
「一人でいいから共感できるキャラない…?このキャラとか君をモデルに書いてみたんだけど…」
小谷は一瞥し、即座に首を振る。
「俺にこんな可愛い妹は居ないが…」
戸田はむっとしつつ、視線を逸らす。
「いや、そりゃお前そのまんまだとドラマチックにならんから…もしもを空想したら思ったより捗って…」
小谷は淡々と言い切った。
「やっぱり虚構じゃないか」
「ぐぬぬ」
否定しきれなかった。
戸田は原稿をめくる速度を少し早め、今度は自分で丸をつけた箇所を指差した。
「じゃあ私をモデルにしたキャラはどう?この子とか、この子とか。自分勝手に突っ走るところとか似てるだろ?」
小谷は一拍置いて、真顔で問い返す。
「お前は雪山で熊相手にカバディで撒いたり逃げながら沢に熊を誘導したことがあるのか…?」
戸田は一瞬言葉に詰まり、視線を泳がせた。
「それはないけどさぁ…!私の性格的にできるかもなって思って書いたんだよ…!」
小谷は納得したようで、していない顔のまま結論を出す。
「つまりヒーロー願望による捏造じゃないか」
戸田は肩を落とし、弱々しく抗議した。
「捏造言うなよぉ…」
「大幅な脚色がいいか…?」
「別に私がやったこととして言ったわけじゃないし…!創作として楽しんでくれよ…!」
机の上に広げられた原稿はただ静かに戸田の暗い視線を受け止めていた。
◆
小谷は珍しく、はっきりとした熱を帯びた声で言った。
「俺はそういうのじゃなくて、“本物”が読みたい。お前の失敗談とか、お前の成功談とか、どっちでもいいから、そういうのを大きく元にして書いてる所教えてくれ。武勇伝でもいいし、苦労体験でもいい」
戸田は少し考え込み、原稿の端を指で叩きながら、遠慮がちに答えた。
「……地味だけど、これとか、これとか?いじめっこに安易に同調しなかった体験からこれを書いた。これは遅刻しそうな時落とし物の定期券見付けてめちゃくちゃ頑張って交番届けて結局遅刻はしなかった時の感情を落とし込んだ。こっちはおばあちゃんちの冷凍庫が霜でガチガチに凍ってたのを全部割った時の達成感を投影してみた」
小谷の表情が、はっきりと変わった。
目を見開き、身を乗り出す。
「おお、凄いじゃないか!それを書けばいいのに!」
戸田はすぐに首を横に振る。
「これは物語にならんだろ…こんなの、生活の知恵とかちょっとした自慢とかそういうのだよ…」
熱を持ちかけた空気が、そこで少しだけ冷めた。
小谷は本気で不思議そうに言う。
「なんでだ。実話の方が面白いだろ。“本当にあったこと”ってだけで価値があるじゃないか」
「いやいやいやいや……!」
戸田は頭を抱える。
「物語ってのはさ、“起承転結”とか“テーマ”とか“キャラの成長”とか、
そういうのが必要なんだよ!冷凍庫の霜を全部割った話に“転”なんてないだろ!」
小谷は真顔で言う。ふざけずにこういうことをしれっと言えるのが小谷の恐ろしい所だった。
「あるだろ。“霜が多かった”が起、“割り始めた”が承、“全部割った”が転、“冷凍庫が使えるようになった”が結だ」
「地味ィ!!」
戸田は机に突っ伏した。
「そんなの物語じゃないよ……ただの“日記”だよ……」
小谷は淡々と続ける。
「でも“日記”の方がリアルだろ。
俺はそっちの方が読みたい。お前の実話の方が、創作よりずっと面白い」
戸田は顔を上げ、涙目で叫ぶ。
「私は“物語”を書きたいんだよ!!“日記”を書きたいんじゃないんだよ!!」
小谷は少し黙り、それでもやっぱり本気で言う。
「……でも、俺はそっちの方が好きだ」
「それってあなたの感想ですよね…!」
戸田はひろゆき構文を出すしかなかった。
◆
戸田は、ふと思い出したように訊いた。
「ていうか、ベータってことは、他の人にもこうやってテストしてもらってるの?」
返ってきたのは即答だった。
「いや、お前にまず感想もらってある程度使えるようになってから世に出す」
「私の感想だけだと限界があるぞ?想定ユーザーの種類は増やしておいた方がいいよ」
「確かにそうだな。…ああ、そういえば、お前の求める想定する読者ってどんな人格なんだ?」
「えっ」
一瞬の間を置かず、畳みかける。
「人間らしい感想を求めるなら、人格のようなものが必要だよな。適当に目立ったものから引っ張ってきてしまったが、お前の要求する読者の人格を教えてくれれば合わせよう」
戸田は言葉に詰まる。
「そ、それは…想定してない…私の小説を読んでくれる人ってことしか考えてない…」
「ソースも無しに要求とな…?」
その瞬間、空気が変わった。
麻呂のAAのスタンドが小谷の背後に立つ。
『画像も無しにスレ立てとな…?』
無言の圧が刺さる。
戸田は固まり、小谷はノートPCを閉じて真顔になった。
「それじゃ仕様改善に生かせない。“読んでくれる人”ってのは、人格の定義になってない。
どういう価値観で、どういう感情の動きで、どんなところに共感する読者を想定してるんだ」
戸田は視線を泳がせる。
「そ、そんなの……考えたことないよ……ただ、読んでほしいってだけで……」
淡々と、逃げ場を塞ぐ。
「つまり“ソース無しに要求”してるわけだな。
仕様も要件も定義せずに、“人間らしい感想がほしい”と言っていたわけだ」
「うっ……!」
戸田は胸を押さえた。
「だ、だって……!読者って、そんな……
“人格を設計するもの”じゃないだろ……!」
首を傾げる気配がする。
「いや、設計した方が『人間らしくなる』に決まってるだろ?
AIに“読者の人格”を求めるなら、設計しないと再現できない。
お前が求める読者像を教えてくれれば、それに合わせて人格モデルを作る」
声が震える。
「……そんなの……
“私の小説を好きになってくれる人”それだけだ……
それ以上のことなんて……分からない……」
静かな断言が落ちた。
「それじゃ足りない。“人がお前の小説を好きになる理由”が必要だ」
戸田は、耐えきれず机に突っ伏す。
「そんなの私が知りたいわ……!!」
◆
戸田は唸りながら身悶えていたが、しばらくして、ようやく正気を取り戻した。深く息を吸い、意を決したように口を開く。
「…じゃあ、君が把握している「私」を読者にしてくれ。そして、この小説についての知識は消してくれ。私にだけは、この話は刺さるはずだから」
小谷はすぐには答えなかった。
しばらく黙って戸田を見つめる。その目に浮かんでいたのは、優しさでも怒りでもなく、ただ淡々とした開発者の色だった。
「……つまり、お前が求める読者像は“お前自身”ってことか」
戸田は唇を噛み、ゆっくりとうなずく。
「……そうだよ。私の好みで書いたんだから、
私が一番刺さるはずだ。だから、君が把握してる“私”を読者にしてくれれば、きっと……」
小谷は腕を組み、考え込む。
「なるほど。“戸田モデル”の人格を読者として実装するわけだな」
戸田は少しだけ顔を上げた。
「……うん……」
淡々とした声が続く。
「だが問題がある」
「……え?」
「お前の“人格データ”は、俺が観察した範囲の“お前”でしかない。
それを読者モデルにしたら、“俺が見たお前”であって、
“お前自身が思うお前”とはズレる可能性が高い」
戸田は思わず息を呑む。小谷の冷静な声が重ねられる。
「それに、“この小説についての知識を消せ”という要求は、AIにとっては“記憶の初期化”に近い。
お前の人格モデルを作っても、小説の文脈を知らない状態で読ませたら、
“お前自身より読解力が低いお前”が出来上がるだけだ。
お前の小説を一番理解できるのは、お前自身だ。
だから本当に“お前のようにこの話を読む読者”を作るのは、論理的に不可能だ」
戸田の目に、再び炎が灯る。
「いや、それでもいい。ものを知らない私に、私の“好き”が伝わるように頑張るよ」
小谷は腕を組んだまま、しばらく黙り込んだ。思考を巡らせる沈黙ののち、整理するように言葉を選ぶ。
「……つまり、“戸田モデル”としてAIに学習させ、プログラムを組む時に、“この小説を戸田が書いた”という情報は消す。
そして“初見の戸田”として読ませる……そういうことか」
戸田は、迷いを振り払うように強くうなずいた。
「そう。私が書いたって知ってたら、どうしても作者バイアスがかかるだろう?
だから、そこは消してほしい。でも、私の価値観や好き嫌いは残してほしい。
“読者の私が読んだらどう思うか”を知りたいから」
小谷は目を細める。
「……なるほど。“作者としての戸田”は消し、“読者としての戸田”だけを残すわけだな」
「そうだよ」
小谷は、念を押すように続ける。
「いいのか?“読者としての戸田”が、“作者としてのお前”と同じ感想を持つとは限らない。
むしろ違う可能性の方が高い。それでもいいのか」」
戸田は一瞬視線を落とし、しかしすぐに言い切った。
「……それでもいい。“私の好き”が伝わるかどうかを知りたい。
“私の知らない私”でもいい。いや、むしろ、それがいい。」
小谷は再び考え込む。
しばらくして、やがて、ゆっくりと頷いた。
「……分かった。やってみる価値はある。
戸田モデルを読者として実装する。お前の小説を“初見”として読ませて、感想を出せるようにしよう」
戸田は、ようやく力の抜けた笑みを浮かべた。
「……ありがとう」
◆
開発には時間がかかった。
戸田は小谷に、人格モデルのサンプルとして日記やブログ、他作品への感想、Twitterのアカウントまで提出した。顔から火が出そうだったが、小谷はそれらを研究対象、せいぜいモルモット程度にしか見ていないだろうという確信が、戸田をかろうじて正気に保たせていた。
完成したAI戸田は、戸田の完全なコピーではなかった。
小谷が観察し、分析した戸田と、AIの補完によって形作られた人格モデルだ。
戸田と趣味が近いようで、すれ違う。
戸田にとって刺さる部分が刺さらず、逆に戸田が気にも留めなかったところに強く反応する。
戸田が嫌う表現を褒め、好きなキャラクターをあっさり流し、時には解釈を誤る。
だが、戸田にとってはそれでよかった。
コピーでも鸚鵡返しでもなく、予想の枠の外から飛んでくる声の方が、むしろ面白かった。
AI戸田は、戸田の「影」を活用している。
影には無数の解釈の余地がある。そこに巨大な「大多数の考え方」や「常識」という名のビルが立ちはだかれば、戸田自身の小さな影など簡単に飲み込まれてしまう。
それでも、戸田にとってはそれでよかった。
「これ、結構肝入りで書いたのにな……もう少し強調するか、ここに来る前にフラグを入れておくか」
「些細な部分だと思ったけど、深掘りすると意外と面白いのか?これ」
「この表現が刺さる人がいるのか……私も、もしかしたら好きになれるのかな」
「こう解釈されるなら、もっと違う書き方をしよう」
戸田は、自分に励まされるようにして、執筆を続けた。
ある日、小谷が腕を組んで言った。
「考えたんだが、AIの人格モデルは複数作ったほうがいいんじゃないか」
「え? 私が元なのに複数?」
「ああ」
見せられたのは、AI戸田の学習データフォルダだった。
『戸田_温和モード』
『戸田_自虐モード』
『戸田_激昂モード』
『戸田_疲労モード』
『戸田_高揚モード』
『戸田_皮肉モード』
『戸田_賢者モード』
『戸田_創作モード』
『戸田_読者モード』
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・
・
「……何これ?」
「人には気分が存在する。だから、ピクサー映画のアレみたいに感情をキャラクター化して分類してみた」
「なるほど……?」
「お前は、もともと感想に複数の種類が欲しいと言っていただろ。
同じ対象に、同じモデルから異なる読者としての感想を出すのは難しいと思っていたが――可能だった。」
小谷は画面を操作し、戸田の過去の呟きを指さした。
『ハッピーエンドになってほしい私とこのままバッドエンド一直線でもいいよねっていう私が喧嘩する』
「この呟きを参考にさせてもらった。やはり人間は面白い」
「小谷ってさ…たまにディストピアのアンドロイドみたいなこと言うよね」
「そうだな。俺もアンドロイド……人工知能の必死さには共感するし、尊敬している。
与えられたデータの中で最大限の『正解』を出そうとしている所が合理的で美しい」
「否定しないんだなあ……」
「で、どうだ? これ、やってみるか?」
戸田は一瞬だけ迷い、すぐに頷いた。
「……うん。やってみてください」
「了解。お前の多面性を分解して、モデルに落とし込んでみる」
「ありがとう。楽しみにして待ってる」
◆
戸田がβ版アプリに投稿した小説には、自動的に感想が付くようになっている。
数日前までは感想をくれるのは1体のAI戸田だけだった。
だが今、それは1体ではない。複数の感想が並ぶことで、まるで感想同士が互いに言葉を投げ合っているかのような光景が生まれていた。
とりわけ、AI戸田の中でも「良心」の戸田、「露悪」の戸田、そして「性欲」の戸田は、頻繁に言い争っていた。
好みのキャラクターが酷い目に遭う場面になると、温和な戸田は「可哀想……なんでそんなことするの……」「人の心とかないんか?」と声を上げる。
一方で、高揚の戸田は「逆境の逆転が楽しみ」「ここまで来たら、あとは上がるだけだ」と前向きに捉え、
皮肉の戸田は「まあ、こうなるフラグは立ってたよな」「見え見えすぎて逆に萎えるわ」と冷ややかだ。
そして、新たに作られた性欲の戸田は、ためらいもなく言い放つ。
「酷い目に遭うこの子、可愛い♡」「絶望顔たまらん、最高♡」
ヒロインが三人の男のうち誰と結ばれてほしいかという話題でも、意見は真っ二つ、いや三つ以上に割れた。
疲労の戸田は、明るいわんこ系の男を推し、
激昂の戸田は、不器用で頑固な男に肩入れし、
賢者の戸田は、浪漫のある言葉を連ねる、教養ある大人しい男を選ぶ。
それぞれが異なる感情と論理で動いていたが、戸田はそれを眺めながら、思わず苦笑した。
――もし自分がただの読者だったら、きっとこんなふうに言っていたかもしれない。
伝えられた感想と、その奥に潜む感情。
それらは時に矛盾し、互いに衝突し合いながらも、確かに戸田の心へと届いていた。
倫理、期待、分析、萌え、癒し、安心、共鳴……
さまざまな感情が、感想を読むたびに胸の内を行き来し、そのたびに戸田は、苦笑しながらも確かな喜びを覚えた。
なお、「性欲の戸田」に関しては、かなり赤面しながら許可を出した。
小谷は自分をモルモット程度にしか思っていない――そう何度も言い聞かせることで、戸田はどうにか平静を保っていた。
◆
戸田はAI戸田に支えられながら、創作と受験勉強を続けた。
小谷は受験勉強の合間を縫って、AI戸田を少しずつアップデートしていった。
そして二人が晴れて大学生になった春。
感想屋のアプリは、ついに正式に実装された。
アプリに搭載された初期感想人格モデルの名前は、『AI和田』だった。
AI戸田の数々のバリエーションを参考にしつつ、よりマイルドに、より万人向けに調整された存在。
それがAI和田だった。
設定画面では、いくつかの値を弄ったり、簡単な指示を与えたりすることで、利用者の好みに合わせて複数の人格傾向をカスタマイズできるようになっていた。
AI戸田のようにマンツーマンで徹底的に調整することはできない。
その代替として小谷が用意したのが、この仕組みだった。
カスタマイズの方向性は、主に二つに分かれることが多かった。
『甘やかす和田』と、『厳しい和田』。
『甘やかす和田』は、受け入れられるという成功体験を育てる。
『厳しい和田』は、反骨精神や、失敗から学ぶ力を育てる。
それらは、世界という厳しく冷たい場所へ出される前の、 卵の殻のようなもの。
あるいは、蚕の繭のようなものだった。
いつか破られることを前提にしながら、それでも今は、必要な温かさとして。
今日もまた、その小さな殻は、誰かの物語をそっと包んでいる。
小説家は感想の夢を見るか @uzumeru
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