異世界&現実(?)お嬢様ですわ〜!

@Mi-kou

第1話 出会い…ですわ〜!

きーんこーんかーんこーん


辺りに下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く。


ワタクシ、九条院ライハはその音を聞き流しながら、上履きを脱いで外履きに履き替える。

下駄箱から出た後、周りから向けられるキラキラとした視線を全身に浴びながら校門の前に駐車されたリムジンの方へと向かう。


眩しい視線の光源たちに顔を向けて微笑み、そして軽く手を振る。ファンサービスって奴だ。次の瞬間、周りから黄色い声援が挙がった。思ったよりも喜んでもらえたらしくてワタクシも嬉しい限りだ。


車の中に乗り込んで、シートベルトを閉める。


ふかふかの背もたれに、体重を預けると窓の外の景色がゆっくりと流れ出した。


それからしばらく経ち、ワタクシの家の敷地内に入っていく。


駐車場へと向かう途中、車が急停車した。


「?…どうしましたの?」


運転手とその隣に座っているじいや…私の執事に何があったのか聞いてみる。その問いかけに対して、じいやは年寄り特有の少し掠れた声で返答した。


「それが…目の前に人が倒れてまして…。」


「人!?…ちょっと見てきますわ!」


ワタクシはその人物に対する心配の気持ちと、人が倒れているという事実に対する好奇心が入り混じった複雑な感情を感じながら、車内から飛び出した。じいやが何か言おうとしていたが、それを遮るように車のドアを閉めてしまったので最後まで聞こえなかった。


地面に足がついた瞬間、車の前に向けて走り出す。

そして私の視界に映ったのは一人の女性。全体的にすらっとしていて、キラキラと夕陽の光を反射し輝く黒髪を持っている。


「うぅっ……。」


「大丈夫ですの!?」


倒れている人物に駆け寄り、そう声をかける。反応がなかったのでどうやら意識を失っているようだ。ただ、口元に耳を近づけると微かだがすぅすぅと呼吸する音が聞こえているので生きてはいるらしい。


とりあえず女性をお姫様抱っこの形で抱えて、車の方へと戻る。車の中に入った後は、彼女を椅子に寝かせて、運転手さんに病院に連れていくよう頼んだ。


「とりあえず財閥の病院に!なるはやでお願いしますわ!」


「わ、わかりました!」


運転手さんがアクセルを踏み、ハンドルをきる。先程よりも急発進だった為か、若干だが車内が揺れる。それでも余り不快な感じはしなかった。さすがワタクシが認めた運転手だ。



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯


「んんっ……ここは…?」


ふかふかのベッドの上で私は目覚める。見知らぬ部屋だ。私の部屋でも無いし…雰囲気的に病室…と言ったところだろうか?


……。


そんなことより私、死んだ筈では?



遡ることおよそ3時間前。


私は宮殿を一人で抜け出し、色んな人たちが賑わう商店街に来ていた。普段儀式などと言った理由以外で宮殿の外へ出ることが無いので、凄いワクワクしていた。

食べたことない食べ物や、読んだことのない本。逆にワクワクしない理由があるのだろうか。


未知で広がった通りに目をキラキラとさせながら歩いていると、ひときわ美味しそうな匂いを放つお店を見つけた。


その匂いにつられて、私はそのお店に駆け寄る。

その事に店主さんが気づき声をかけてくる。話を聞いてみると、どうやらここは肉串とやらを売っているらしい。


一つください、と言おうとするがお金を持ってない。そんなことをしていると店主さんが「一本サービスしてやる」と言って、肉串を差し出してきた。私は断ろうとしたのだが、店主さんのニカッとした笑顔に押されて受け取ってしまった。


串を手に持ち、肉を齧る。口の中に肉汁とスパイスの風味が広がる。


…正直、余り良いとは言えない味だ。肉は硬いし、スパイスは量が多すぎる。それでも、今の私には何故だか美味しく感じた。


完食した後は、一言お礼を言ってその場を立ち去る。店主さんは「また来てくれよな!」と見送ってくれた。私もそれに返すように大きく手をふる。


その後、しばらく商店街内を見て回り空も暗くなってきた頃。そろそろ帰ろうかと思い踵を返す。


背中に鋭い痛みが走った。


刺されたのだ。


痛みが身体中に走り、傷口からどろどろと血が溢れ出す。回復魔法…!と考え自分に使おうとするが、私は攻撃魔法しか使えない事を思い出す。


何も出来ずに、血の流れと共に自身の命が消えていくのを実感しながら私は意識を失った。




「あら、起きてたのね。」



ふと我に帰ると病室の扉が開いており、目の前には私より20cmほど小柄な女の子が立っていた。彼女は、その縦に巻かれた特徴的な金髪を靡かせ近寄って来る。



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯


病室のドアを開き、部屋の電気をつける。


「あら、起きてたのね。」


数時間前は寝ていた女性が、ベッドの上で上半身を起こしている。その女性は私に藤色の瞳を向け不思議そうな顔をする。


「ここは…どこ、ですか?」


「あぁ、ここは九条院財閥が運営する病院ですわよ。」


「な、なるほど…?」


聞かれた通り、ここが何処なのかについて話す。しかしそれでも彼女の不思議そうな顔は変わらない。恐らく今の状況を理解していないのだろう。


ワタクシは彼女が財閥の敷地内で倒れていて、ワタクシ達が車で病院まで運んであげた事を説明する。


「貴女が助けてくださったのですか?

ありがとうございます…!」


彼女はワタクシに頭を下げるため、ベッドから立ちあがろうとする。ワタクシは、まだ疲れているだろうから安静にしていなさい、と伝える。納得はしていなそうだったが、渋々ベッドから立ち上がらずにお礼をしてくれた。


「そう言えば自己紹介をしていませんでしたわね…。」


彼女から向けられたお礼に、どういたしまして、と返答する。その後、そう言えば自己紹介していなかったしされてもいなかった事を思い出して、話の話題を変える。


「ワタクシ、九条院ライハと申しますの!こう見えて九条院財閥の令嬢…つまりエリートなお嬢様ですのよ!」


胸に手を当て、自信を持って自己紹介をする。モジモジしてたら相手も不安にさせてしまう為だ。


「九条院財閥…?…あぁっ、申し訳ありません…。

私はセピア・セレスティア…と、申します。」


「よろしくお願いします。ライハ様。」


相手は友好の印として、ワタクシに握手を求めてくる。ワタクシも初対面の人と良くこういった事をやる為、相手の掌を握った。


「えぇ!よろしくお願いしますわ!セピアさん!」


セピアの掌から、私の掌へと体温が伝わる。


その感覚はいつも社交辞令でやるような握手とは違い、なんだか心地よかった。




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