正義への正義執行アカウント@ Hand of Glory

とるてたたん

第1話

俺の推しが殺された。

いや、正確には自殺した。原因はインターネットでの誹謗中傷だった。

アイドルグループ「からふる♡わんだふる」その黄色担当のまのろん。それが俺の推しだった。

今でも信じられない。こうも簡単に人が死んで良いものなのか。まのろんは自殺する数週間前に男性俳優との結婚発表をしていた。確かにショックは受けたが、推しならばその人の幸せを願うのが当たり前のはずだ。それなのにネットの奴らは

『結婚したアイドルに存在価値ない』だの

『もう夫とは「わんだふる」したんですかww」

だの好き勝手言いやがって。

どうしてこれを殺人と言わずにいれるのだろうか。俺はまのろんを殺した奴らを許さない。こいつらは己を多数派で正義だと思い込んで、それに酔いしれて簡単に人を傷つけるクズなのだ。

まっててね、まのろん俺が絶対にあいつらを裁いてみせるから

そうと決めたら話は早い。急いでまのろんで検索をし、投稿を消される前に批判の証拠写真を撮る。幸いにもニュースが流れたばかりなおかげでまだ多くは残っていた。探している途中に批判していた奴が

『まのろん死んじゃったのかわいそう。批判してた奴ら全員地獄に堕ちれば良いのに』

なんでほざいているのを見つけた。面白いのでこれも写真を撮っておく。

時間は長くかかったがようやく証拠集めが終わった。まのろんを殺した奴らは想像よりも多くいた。こいつにこれから復讐していくのが今から楽しみだ。

ふと気になってもう一度見てみると、案の定批判していた奴らがどんどん投稿を消していっている。笑わずにはいられない。今更焦ったところでお前らの汚れた手はしっかりと残っているというのに。

さてと、材料は揃ったしこれから晒していく準備をしなければいけない。まずはそのためのアカウント作りだ。

アカウント名はわかりやすく、インパクトが強いものが良い。ふとどこかで見た呪具の名前を思い出した。

栄光の手

これほどピッタリなものはないだろう。そうと決まればアカウントを早く作ってしまおう。 

さて、この先どうしようか。最初は先ほど撮った証拠のスクリーンショットを一気に投稿しようかとも思ったがそれよりももっと良い方法を思いついた。1時間おきくらいに投稿していくのだ。

ひとまず最初の一枚を投稿する。想定通りというべきかあまり反応はない。

しかし2枚目、3枚目と時間をあけて投稿していくうちにどんどん反応が増えていく。そしてそこそこ有名な人が俺の投稿に触れたところで一気に爆発した。俺の投稿が1時間刻みになっているのに気づき、待機している人たちがたくさんできる。ここで焦らずしっかりと1時間おきに燃料を投下する。このエサを待ち侘びていた人たちによってさらに激しく燃えていく。もうすでに批判をしていた人はアカウントを消している人も何人かいるようだ。想像以上にうまくいった。面白いくらいによく燃える。復讐は何も生まないというが少なくとも今の俺はすごく楽しい。まのろんを殺した奴らが逆に社会的に死んでいっているのだ。これほど愉快なことがあるだろうか。俺が投稿をしていくたびにどんどんはは強く、大きくなる。今や批判をしていた悪人達は俺の掌の上で踊らされているも同然だ。

ここで今までよりも格段に火を強くさせるガソリンを投入する。それは男性芸人がしていたある投稿だ。

『まのろんだけに惚気話ばっかり聞かせないでくださいよ』

普段見れば芸人のウケを狙ったただの投稿だろうし本人もそのつもりで投稿したのだろう。ただ、この状況だと話は変わる。この程よく火がついたタイミングで明らかに批判的な意見ばかり投稿していた俺のアカウントから投稿すれば、、

考えているだけでも面白い。1時間経ったのを確認して投稿をする。どんどんと反応が増えていき。コメントもすごい数ついている。その芸人の過去の他愛もない言動も取り上げられて叩かれていく。俺の投稿ひとつで俺よりも全然有名な芸能人1人をここまで攻撃できるとはなんという愉悦だろうか。

しかし、ここで止まるわけにはいかない。あの芸能人はガソリンとなってもらっただけで本来の目的はまのろんの復讐だ。先程の投稿でさらに増えた俺のフォロワー数を見ると笑みが止まらなくなる。これだけの人が俺の1時間を楽しみにしているのだ。楽しみにしながら1時間を待ち、投稿する。増えたフォロワーのおかげで比べ物にならない速度で広がっていく。晒された人たちの個人情報を特定する人まで現れ始めた。言いながれだ。まのろんの苦しみに比べたらこいつらの個人情報なんて大したものじゃないだろう。暴かれて罰を受けるが良い。あの芸人は俺の正しい行いのための尊い犠牲だったのだ。

1時間おきに投稿するのを続けて3日間ほど経った。もう以前ほどの盛り上がりは無く、世間の関心は薄れているようだった。もっと関心を集めないと罰を受けさせられない。どうするべきか悩んでいると一件のDMが届いた。

『ハンドオブグローリー様へ、今私の嫌いな男性アイドルがコンプラ違反の報道で話題となっています。どうか取り上げてはくれませんでしょうか。』

こんなDMはすでに何件も見た。いつものように削除しようかと思ったがそこに書かれている男性アイドルが世間的にとても有名な人であることに気がついた。

この人を晒して有名になればもっとまのろんの復讐に加担する人が増えるかもしれない

そう考え、その男性アイドルの過去の問題発言とも取れる写真を拾って投稿する。やはり有名なだけあって今までにないほどの勢いで爆発的に拡散されていく。しかし、想像ほどではない。

それならばどうするべきかと考えていると、ある考えに辿り着いた。それはAIに偽の画像を生成させることである。どうせこいつはコンプラ違反した悪人なのだ。これくらいの脚色はしても許されるだろ。簡単に作れることに驚きつつ早速投稿してみた。瞬間凄まじい勢いで拡散される。ああ、求めていたのはこれだったのだ。どんどん反応がついていく。中にはフェイクを疑う声もあったが俺の投稿を信じている人の方が圧倒的に多い。

今回は3日たってもまだ火は続いた。そしてこの影響であのアイドルは活動休止するらしい。あまりにも楽しすぎる。俺1人の手であんな大手のアイドルを潰したのだ。

さらに1週間後やや弱火になってはきたがそれでもまだ根強く話題になっている。しかし、ここでそんな状態を一変させるようなニュースが流れてくる。

あの男性アイドルが自殺したらしい

嘘だろ。そんなことになるなんて。いや、そんなはずはない何かの間違いであるはずだ。落ち着いてもう一度記事を見てみると信頼のあるニュースサイトからの情報でどうやら間違いというわけではないようだ。いや、冷静になれ俺はただコンプラ違反をした悪人を攻撃していただけだ。それになんの罪があるのだろう。そう思ってはいるが俺のアカウントに疑問を持つ人が多く出てきた。ただ、バレることはなく2週間が経過した。

もうすでにどちらの事件も風化して忘れ去られようとしていたころ、あの男性アイドルがコンプラ違反をしていたのは報道ミスであることが流れた。どうやら自殺したことで周囲の環境の調査が行われ、発覚したらしい。それと同時に俺の投稿がフェイクであることも流れていた。

まずい、投稿を消さなければそう思った時にはもう遅かった。俺がそう投稿してた証拠の写真はすでに何枚も上がっていた。

今までで1番多く反応がつく。1番多くの人に見られている。もう俺についた火は消すことなんてできない。



ある日こんなニュースが流れた。栄光の手となのる晒し系アカウントが捏造によって大炎上したという内容だった。それから社会全体の晒し系アカウントやフェイク画像の作成が一時的に減少したらしい。

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