安らぎか、苦痛か

岸亜里沙

安らぎか、苦痛か

「やあ、ジェシカ。気分はどうですか?」


「なんか、頭が痛いわ」


「そうだね。でもそれは仕方がない。じきに良くなります」


「ここは、どこなの?」


「ここはワシントン国際病院です。あなたの病気は、完治しました。もう心配ありません」


「私の、病気?」


「覚えていませんか?あなたは末期癌だったんです」


「ああ、思い出しました。私は確かに癌でした。ですが私の記憶だと、ニューヨークの病院にいたはずですが、知らない間にこの病院に移送されたみたいですね。でもこちらでは、末期癌の治療が出来るなんて、きっと凄い名医の方がいらっしゃるんでしょうね」


「いえ、今では癌は普通に治る病気になりました。ではまだ無理でしたが」


「私の時代?」


「今は、西暦2557年です。あなたの身体が凍結保存されてから、500年以上が経過してます。それであなたの治療が可能になったわけです」


「2557年ですって?」


「そうです。記録によると、あなたの息子さんが依頼をされたそうです。あなたの病気を治す事が出来る未来まで、あなたの肉体を冷凍保存し、そして蘇生をさせてほしいと」


「ちょっと待って…。じゃあ、主人や、息子は今どこに…?」


「お気の毒ですが、ご主人も息子さんも、既に亡くなっておられます。ですが、あなたの血縁の方はいらっしゃいます。息子さんの曾孫ひまごにあたる方が、今テキサスでお住まいです」


「そんな…」


「血縁の方には、既にご連絡をしております。退院されましたら、是非そちらに」


むごいわ。いくら私の血縁の者がいるからって、大好きだった主人も息子も、友達もいない世界で暮らせだなんて。…なんで生き返らせたの?」


「息子さんのご依頼でしたので」


「そうだったとしても、私はこんな世界で生きたくないわ」


「お気持ちはお察しします。ですが一度、血縁の方とお話しされてみては?それでも気が変わらないようでしたら、今は、安楽死制度もございますので、仰ってください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

安らぎか、苦痛か 岸亜里沙 @kishiarisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画