第2話


 ■



 私の家には、畑がある。

 畑と言っても、庭に家庭菜園のスペースを作ったものだ。父の趣味だから、私はどんな物が植えられているのか、どう手入れされているのかよく知らない 。

 畑は、何時もより黒くてふかふかした土が掛けられていた。父がホームセンターから新しく買ってきたんだろう。

 そこに、何かが生えていた。

 かつてチヅルと図鑑で一緒に見た、カエンダケに似ている。触るだけで火傷になるそのキノコを見て、『怖いね 』と言い合った。

 そんな物騒なキノコが畑に生えるとか、怖すぎる。

 そう思って近づいてよく見た私は――悲鳴をあげた。


 それはカエンダケじゃなくて、人間の手だった。

 生えていたんじゃない。埋めていたはずなのに、手だけが地面から出てきてしまったのだ。


 腰を抜かして、その場に座り込む。

 心臓がバクバクと言い始める。

 近くにシャベルがあった。私はそれを取って、黒い土を手に振りかけて埋める。

 ああ、なんで私は忘れてたんだろう。



 私は、人を殺し、ここに埋めたのだ。








 ■





 覚醒した私は、胸を抑えながら息を切らす。

 私がいたのは、自分のベッドの上だった。

 私は人を殺した? なんで私はそんなおぞましい事を? そもそも誰を殺したの?


「…………夢?」


 まだほんのりあたたかい湯たんぽに、思いっきり足をぶつけていた。どうやら痛みで目を覚ましたようだ。

 冬なのに汗をびっしょりかいていて、パジャマが肌にはりついて気持ち悪い。

 あまりに場所の風景がリアルだったから、夢である気がしない。どこまでが夢? どこまでが現実?

 どれだけ記憶を探っても、自分が誰かを殺した覚えなんてない。

 私はちらり、と部屋の窓から畑を見下ろす。私が死体を埋めた場所は、部屋から見える所にあった。

 そこには、すっかり色あせた土に、わんさか生えたハーブがあるだけだった。

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