夜に咲く花
@Sora004
夜に咲く花
おとぎばなしにこんな話があった
別れを告げる日には黒い花が咲くと言う
どこに咲くだなんて誰も知らないそんなお話
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長い間付き合っていた彼女が帰らぬ人となった。彼女のコロコロとした笑い声も桜のように美しく笑う彼女はもういなくなってしまった
生きる希望を失った男性は帰路についていた
その時視界の端に映った小さな花の芽に不意に目が止まった
おかしい今は12月花が咲く時期じゃないと思いながらも花に引き寄せられるように近寄った
その花はどこか逝ってしまった彼女にひどく似ていた。
受け止めきれない現実に嗚咽が漏れる、男性の涙が一粒根元に落ちていった
彼の涙を吸った花は男性の悲しみを糧にしているかの如く蕾が膨らみどんどん花開いていった
咲いたのは怖いぐらいに美しい花だった。
それは例えるならば煮詰めた血のように赤黒く
黄昏に飛ぶ鴉のように艶やかそんな花だ
でも男性は不思議と気味悪くは感じなかった
“美味しそう”
そんな気持ちがふつふつと湧いてきた
食べたいと言う欲望に勝てず男は食べた
身体が震える、これは拒絶なのか身体が求めていたのか一瞬の思考を掻き消すほどに美味であり何も考えられないほどの優越感に溺れてしまった
一輪後一輪と体が求めるそれはもう口に
運ぶたびに甘く芳醇な香りを放ち咀嚼する
ほどにその花の匂いによって身体の境目が分からなくなるほどに
解けて
溶けて
とけて
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翌朝こんなニュースが飛び込んできた
道に大量の血、あるはずの遺体も何もない
残されているのは気味が悪くなるほどに赤く染まった花が一輪だけ咲いていた
夜に咲くと言うのは本来ありえない
皆さま帰り道にはどうぞお気をつけて
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※本作は日本神話「黄泉竈食」をモチーフにしています。
夜に咲く花 @Sora004
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